第36話 ふっ……ウチの嫁の方が美人だな
「まぁ、冷静に考えて、これは俺の判断じゃないと難しいよな」
気がついたら辺りは暗くなっていた。
ここは我が屋敷の三階にあるスイートルームの一部屋。
俺とルナとメルコットの三人は急ぎ、エルフの王女がいるこの部屋に足を運んでいる。
行きがけの間、メルコットから簡単に報告を受けた。
本来であれば、ここはお客様にゆったりと過ごしてもらうための部屋であるが、今は臨時として、エルフ王国の王女の治療のために使われている。曰く、治療に関しては聖女であるアリサが処置をしたらしい。
正直、王女だかなんだか知らないと思っていたけれど、上手く立ち回れれば、俺とルナの幸せな未来がより安泰になる。今の内に恩を売っておいてもいいだろう。
エルフ王国といえば、カルディ地方を含めた複数の敵国に囲まれている国ではあるが、誰にも有効的同盟を結ばず、目立った戦争もせず中立を維持している。
言い換えるならば、どの国も手を出せない王国。
そういえば、我がお父様やマーシャ姉もエルフとの関わり方は結構面倒くさいから気をつけろって言ってたっけ?? その時はルナが可愛すぎて適当に聞き流しちゃったけれど。
そんな不干渉を貫いている王国の王女がどうしてサルファの街にいるのだろう。
「アイク様。こちらが例のエルフ王国の第三王女様でございます」
「そうか――」
短い金髪に整った顔立ち。エメラルドのような翠の瞳。そして特徴的な長い耳。
たしかにゲームや漫画で描かれているエルフは美形ではあるが……
「こちら、サルファの街、及び、カルディ地方の領主であられますアイク・ハンバルク様でございます」
「お初にお目にかかります。アイク様。私はエルフ王国の第三王女――リコリスと申します。この度は救って頂きありがとうございます」
(ふっ……ウチの嫁の方が美人だな)
俺はドヤ顔をした。
人の感性は人それぞれ。
俺にとってこの世界、いや、この宇宙……違うな、どんな存在よりも美しい。筆舌に尽くし難いなんて表現があるが、もしもルナの尊さを語れなんて言われてしまえば、余裕で一週間は過ぎる自信がある。
「お初にお目にかかります。アイク様。私はエルフ王国の第三王女――リコリスと申します。この度は救って頂きありがとうございます」
「……お初にお目にかかります。リコリス第三王女。此度はどうして、このサルファの街に?」
怪我をしていると聞いていたが、思ったよりも傷跡がない。恐らく聖女辺りが回復魔法をかけたのだろう。
「実は、秘密裏にギルガ王との密談がございまして」
「ギルガ王と密談でございますか……それは道中大変でしたね」
ギルガ王と聞いて、面倒くさい空気を察した。
外交の問題に一々首を突っ込むなんて馬鹿のやることだ。
さっき上手く立ち回れれば、俺とルナの幸せな未来がより安泰になるなんて思っていたが前言撤回だ。場合によるだろうが、今回の件でルナと一緒に居れる時間が限りなく減るのであれば、それは俺の精神的敗北を意味する。
今日はただでさえ、ルナと一緒にイチャイチャできる時間が無くなっているのだ。これからの日々、ルナとイチャイチャできる時間は減っていきますね~。なんて言われてみろ。はっきり言って絶望しかない。
だけど残念ながらリコリス第三王女は俺の社交辞令に大きく頷いた。
「そうなんです。実は最近活発化をしている魔王崇拝者の対策をと思いまして、限定的ではありますが秘密裏に同盟を結ぼうかと。腹が立つことに我が国民も被害に遭っておりまして」
「また魔王崇拝者か……」
俺は苛立ちをなんとか隠そうとするが……うん。無理だ。
なんだ? 魔王崇拝者ってやつらは俺とルナのラブラブ生活を一々邪魔しないと気が済まないのか??
「お怪我の調子はいいがでしょうか? リコリス第三王女」
「アリサか」
アリサは杖を持って現れた。曰く、リコリス第三王女以外にも護衛数人が怪我をしているとのことで、治療に当たっているという。
「えぇ、聖女様の回復魔法のおかげもありまして。ひとまずはなんとかなりました。ですが他の者は……」
「安心してください。今、生きている者に関ましては私が聖女の名の元に必ず治療致します。なので……まずは御身のことを最大限に思ってあげて下さい。心中お察しいたしますが、何卒ご自愛なさって下さい」
アリサが聖女らしい献身的な表情を浮かべる。
忘れていたが、アリサが原作のフォーチュンラバーでちゃんと
「あぁ、そうだな。死んでしまった者はもう戻らない。我らがエルフの神、ユグドラシル様の元で安らかに過ごしていることだろうから……」
言葉を選びながら元気づけるアリサにリコリス第三王女は悲痛な笑みを浮かべて、言葉を返す。
話は簡単にしか聞いていないが、今回リコリス第三王女が襲撃されたことで、護衛の騎士が数人亡くなったらしい。
つくづく魔王崇拝者は気に食わない。
「なぁ、アリサ。魔王崇拝者ってどんなやつなんだ?? 改めて教えてくれてもいいか?」
原作で得ている知識と実際にこの世界での実害は多少なりとも誤差がある。
それを補完するためにも俺はアリサに尋ねた。
「そうですね。それでは簡単に説明させて頂きますが」
アリサは真っすぐの俺の目を見る。その瞳はどこか怒りのような感情が灯っているようだった。
「奴らは魔王を復活させるためなら、どんな汚いことでもやる集団です。簡単なところでいえば、先ほどオークの大群を召喚させた闇の魔法陣の使用――あれは王都では禁術指定ですし、人身売買や違法薬物の作成。違法な拷問。果ては悪魔復活のための生贄行為など。数えればキリがありません」
「下種が」
原作のフォーチュンラバーではルナがラスボスとしてこの世界から忌み嫌われた。その背景には間違いなく魔王崇拝者が存在している。
この世界で俺のようなルナを守る存在がいれば、結果として闇落ちはせず、面倒なことに関わらければそれでいいと甘い考えを抱いていたが、どうやらそれは間違った考えだったようだ。
「そうなんです。下種なんです」
アリサは俺の言葉に同調して頷く。
きっとこれからこいつらがいる限り、ルナとのイチャイチャタイムを邪魔される可能性もある。
なんなら、ルナは原作ではラスボスだった訳で、こいつらに攫われるリスクは当然のごとく存在している。
実際、呪われた力を持っているなんて言われていたものだから、魔王崇拝者に狙われても不思議ではない。
万が一、仮に、絶対にあり得ないが、仮定の話としてルナが魔王崇拝者の手で攫われていまったら?
前提として塵も残さないことは当たり前として、
奪還するまでの間、当然、ルナとは離れ離れになる訳で……。
……は? 無理なんだが。
「誰にちょっかいを出したのか教えてやらないとな」
ルナと俺のイチャイチャ生活のため、悪いが消えてもらおう。
俺はこめかみをピクピクとさせ、
「絶対に根絶やしにしてやるから、せいぜい覚悟の準備をするんだなぁ!」
俺は怒りの矛先を
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