第35話 2度あることは3度ある
「お帰りなさいませ。アイク様……それでは、お部屋にご案内致します」
「あぁ、よろしく頼む」
屋敷に戻るとメルコットが迎えてくれる。
何故かメルコットだけは屋敷にいた。
理由を聞いたら『私の主人ができないものをできると言うはずがないので』とのこと。
ある意味、信頼してくれているようで……。
『まぁ、オーガなら逃げるくらいならできるのですが』
とボソッと言っていたが、メルコットは原作でもキャラクターとしての追求があまりなかったから、どれくらいの実力があるか分からないんだよな。
公爵家の当主であるお父様が傍に置いているくらいだから、実力はあるのだろうけれど。
まぁ、今はメルコットの実力なんて考えていたって仕方がないか。
今は握ったルナの右手の温もりを感じよう……うむ、今日も柔らかい。
「こちらでございます」
ルナの手を感じていると、気がついたら最上階の角部屋。
俺の――いや、俺とルナのための巣に辿り着いた。ひょっとしたらルナの手はタイムスリップの特殊能力があるのかもしれない。
「おぉ……これが俺達の部屋か! 素晴らしい……!!」
俺がそういうと、ルナも小刻みに震えて、
「そうですね……! これが私達の愛の巣なのですね……!とても素晴らしいです! これからは何の気兼ねもなく、アイク様と過ごせる場所……! ちなみに、これからは私達は一緒に寝ることを許されるということでしょうか……? ダブルベッドということは……」
「あぁ、そういうことだ」
「あぁ!! なんと!! これからは夜這いを仕掛けなくていいってことですね!? もう、堂々と あぁ、これが夢に見た結婚生活!!」
なんか朝起きたらいつも隣にいるなぁとは思っていたが、夜這いをされていたのか。
朝起きたら推しな顔があるのが眼福すぎて、特に今まで触れてこなかったけど、そうことだったとは……。
「ごほん。ところで、ルナよ。折角のお風呂だ。よければ一緒に入らないだろうか?」
「もちろんでございます! 入りましょう!! 今すぐに!!」
ルナは俺の腕を抱く。
まずい。このままでは俺が狼になってしまう。
「そ、そうだ、安心してくれ。もちろん、お風呂用の服も用意している。折角のお風呂を夫婦水入らずでーー」
「お楽しみのところ申し訳ありません」
「どうしたメルコット」
びっくりしたぁ……。こいつ何の気配もなく背後にいるもんだから、さすがに驚くわ。
しかし、そんなメルコットは困った顔をしている。
「実は、至急アイク様の判断を仰ぎたい案件がございまして……」
「構わん。メルコット。お前の判断に任せる」
「申し訳ございません。この案件はアイク様のご判断でないと……街に怪我をしたエルフ族――それも王女が助けを求めておりまして……このままでは外交問題に発展するかと……」
「ふざけんじゃねぇぇえ!!!」
そう言いながら俺は泣く泣く支度をするのであった。
あぁ、どうして2度あることは3度あるのだろう。
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