第31話 絶対に許さない……何があっても根絶やしにしてくれる!!

「今日から私、ここに住んでもよろしいでしょうか?」


 温泉から上がったばかりのアリサは執務室の椅子でくつろいでいた。

 アリサは非常にリラックスしているご様子。俺はルナを足に座らせて業務をしている。


 今日は決裁業務が基本で印鑑を押すだけ。書類に目を通す簡単な仕事だからこそ、俺はルナと可能な限り夫婦の営み《いちゃいちゃタイム》に勤しんでいた訳なのだが……


 そんなアリサ《お客様》に対して、


「良いわけないでしょう。というか、どうしてここに?」

 

 俺は笑顔で悪態を吐いた。

 お客様は神様であるが、限度を知らない神様はただのクソなのだ。


 まったく世が世ならき上げてやりたいぐらいだ。


「あらあら、つれないですね。こんな肌がすべすべになるお湯があったなんて……最初は慣れない匂いだと思っていたのですが……あぁ、のぼせることがなければずっと入っていたいです」


「それなら、ここにいないでずっと入っていればいいのに」


 ルナがボソッと言う。まったくルナの言う通りだ。俺もそう思う。


 そんなことより、今日もルナは可愛いな。眼鏡を含めて、あらゆるパーツが完成されている。もちろん眼鏡を取ったルナも可愛いが、フォーチュンラバーの原作で見た眼鏡をかけたビジュの可憐さが安定しているんだよなぁ。


「ルナさんも酷いことを仰るのですね。よよよ……です。あ、そろそろ報告があがる頃だと思うので、折角ならアイク様達もご一緒にいかがです?」


 アリサは泣き真似をしつつ、あっけらかんと言う。なんか俺達の扱いを分かっているかのような言い方は少しだけ腹が立つな。


「報告? あぁ、魔王崇拝者か」


 まぁ、聞くだけならいいか。だって夜は長い。こいつらがいなくなったら、ルナを堪能するんだ。今は膝の上で我慢してやる。


 とはいえ、添い寝から先は進めていないんだが……。


「失礼する。あぁ……聖女様。ここにいらっしゃいましたか」


 軽く2回ノックをした後、見知った顔が執務室に入ってくる。


「あぁ、ランスロット。お待ちしておりましたよ」


 ランスロットか。


 コメット村のブラックドラゴン騒動以来だな。教会の組織に関して、俺はあんまり詳しくはないが、ランスロットは討伐隊にいなかったか? ブラックドラゴンの騒動の後に部署移動でもしたのだろうか。


 まぁ、ランスロットがどこにいようがどうでもいいことではあるけれど……。


「それで、何か進展はありしたでしょうか?」


「そうですね……郊外の方を調査したのですが、闇の魔法陣が展開していました。まだ何が起こるか分からないため、一度そのままにしておいたのですが……」


「闇の魔法陣……やはり、このあたりに魔王崇拝者が潜伏している可能性は高いですね。場合によってはこの街も狙われる可能性もあるでしょう……」


「そうか……だとしたら、さっさと駆除した方が良さそうですね」


 アリサはさっきまでの湯上りで気の抜けた空気から一転。軽蔑にも似たピリッとした冷たい空気を出す。


 そうか……この空気感どこか覚えがあると思ったら、ギルガ王と似ているのか。


 そう考えると、お似合いだったんだな……。


 まぁ、敵になったら敵になったで戦うしかないんだが。


 そんなことを思っていると、


「そうだ……アイク殿。此度は白聖の称号おめでとう……俺もあれから、アイク殿に近づけるように頑張っているんだ。いつかお手を合わせて貰えると有難い」


 ランスロットは俺に話かける。いや、正直別に強くなってくれなくていいんだが……。まぁ、ブラックドラゴン騒動の時は世話になったし、ランスロット本人が望んでいるのだから、少しくらいは胸を貸してもいいか。


「……考えておこう」


「恩に着る」


 ランスロットは俺に頭を下げる。


 こいつはいつ見ても馬鹿みたいに真面目だな。


 そうだ。せっかくならば、ランスロットの真面目な性格も利用させてもらうとするか。


「あぁ、後でランスロットにも我が新名物の温泉に入っていくがいい。長旅の疲れが取れるだろう」


「そうか? アイク殿がそこまで言うのなら、期待して入らせて頂こう」


「あぁ、是非ともそうしてくれ」


 くくく……しっかりと俺のことを信頼してやがるな。


 いいぞ!! 俺の温泉の良さを広めてくれ!! くくくっ……! 口コミこそ最強の広告だからな!! 


 というか、自分で言うのも今更感はあるのだが、誰もルナが俺の膝に座っていることに何も言わないんだな。


 俺としてはツッコまれなければ一向に構わない。今後とも有難くこのスタイルで行かせて頂こう。


 まぁ、それはそれとして、


「まぁ、細かいことは明日にでも話をしよう。今は是非とも長旅の疲れを癒してほしい。あぁ、もちろん領主としての願いだ」


 こいつらを一刻も早く追い返して、さっさとルナと二人きりイチャイチャしようではないか!! あぁ、今日も寝れそうにないなぁ!! 残念だなぁ!! ルナの可愛い寝顔はいつ見ても癒されるからなぁ!!


「りょ、領主様大変です! オーガの大群が出現したとのご報告を受けました!」


 カムラが慌てた様子で執務室に入る。


 この瞬間、ルナとのイチャイチャタイムが消滅したことを察した。


 絶対に許さない……何があっても根絶やしにしてくれる!!

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