ざまぁ確定の悪役貴族に転生した俺が、最推しのラスボスヒロインと結婚することになったので原作知識をフル活用して幸せになります~なお、嫁を馬鹿にした勇者は俺の敵じゃありません~
第28話 旅立ちの前――なんかマーシャ姉には逆らえないんだよなぁ
2章
第28話 旅立ちの前――なんかマーシャ姉には逆らえないんだよなぁ
「さすが我が自慢の息子アイクよ!! まさか、あのギルガ王から領地の減税だけではなく、アーティファクト所持まで認めさせるとは!! 私は父として鼻が高い!! アイクがいれば公爵家も安泰だな!!」
父であるガノンは太鼓腹をポンポコ叩きながら高笑いする。
俺がブラックドラゴンを討伐した褒章を貰って三か月が過ぎた。
目の前には豪華な食事。ルナも俺に笑みを浮かべて釘付け。あぁ、ルナは今日も可愛い。
「しかもその上、教会から白聖と認められ……我がハンバルク家の次期当主は聖人と言われるようになったしまった訳だ!! おかげで媚びを売るために贈り物がたくさん届いて仕方がない!! あぁ! さすがは我が息子だ!!」
ガノンはずいぶんと興奮しきった様子。
俺はゆっくりとナイフとフォーク置いて、ナプキンで口を拭きながらガノンに言う。
「お父様。この話、もう5回目です」
「ん?? そうだったか?」
ガノンはとぼけたフリをする。定期的にこのやり取りをするからさすがに飽きる。
「ところで、カルディ地方には明日向かうのだったか? 今後は領地を運営するのだろう??」
「はい。一週間前にお伝えした通り、明日にはカルディ地方に向かおうと思います」
「ほほう……そうか。ルナ殿も準備はできているのかな??」
ガノンのそう尋ねられるとルナは眼鏡を可憐な笑みを浮かべて答える。
「はい。いつでもアイク様と一緒にいけるように準備は整えております。妻としてアイク様の足を引っ張りたくありませんから」
妻 と し て ! !
あぁ、なんて素晴らしい響きなのだろう。俺の最推しヒロインがここまで俺を慕ってくれているなんて、最初はアイクに転生して終わったと思っていたけれど、今はこんなにも幸せだ。この幸せを守り抜こう。
「そうか……ところで、最近良くない噂を聞く。なんでも魔王崇拝者とかいう物騒な連中が夜な夜な人をさらっては怪しげな儀式をしているらしい」
「魔王崇拝者……ですか」
魔王崇拝者とは原作のフォーチュンラバーにおいて主人公である勇者の敵として登場した集団である。魔王の復活のためなら何でもする非道な集団だった。
だからといって、ルナの味方では決してない。
ルナがラスボスとして覚醒したのはこいつらの原因もあった。路頭に迷ったルナを攫っては、本来人体に毒である闇の魔力を与え続け、苦しませていた。ある意味では原作の勇者以上に許せない存在でもある。
「まぁ、アイクなら大丈夫だと思うがな!!」
「そうですよね。もしも魔王崇拝者なるものが相手でもアイク様の敵ではありませんよね」
ルナは信頼し切った笑顔をしている。
当然、ルナもガノンは魔王崇拝者たちの本来の目的なぞ知らない。
「安心しろ。ルナを傷つけようとするやつは生かすつもりはない」
「アイク様……♡ 素敵です♡」
ルナは美しい銀の前髪を耳に掛けて、少し上目遣いで甘い声で言う。
おうふっ……! その顔は可愛すぎるだろ!
原作通りなら、ルナはラスボスとして最悪の道を進んでしまうかもしれない。
だけど今の俺には――フォーチュンラバー最強のチート武器『龍星の杖』とアイク自身の魔法の才能がある。
俺がそんなことを思っていると、
横から大きなため息と共に、紫色のローブが揺れる。
「まったく……いい? アイク。たしかに貴方はすごいけれど、楽観しちゃダメよ? これはお姉ちゃんとの約束だから」
マーシャ姉『ビシッ!!』と人差し指を俺に向ける。ローブに隠れている胸元が揺れた。
「わ、分かったよ……マーシャ姉……」
「分かればよろしい」
マーシャ姉はうんうんと頷く。
なんかマーシャ姉には逆らえないんだよなぁ。
俺自身の性格なのか、アイクが本来持っている特性なのか原因が全く見えてこないのが難点ではあるけれど。
「あ、そうだ。マーシャ姉。近い内に俺が貰った領地に来てくれないか?」
「構わないけれど、なんで?」
「実は少し面白いことを考えているんだ。きっとマーシャ姉も気に入ってくれると
思ってな」
俺がそう言うと、マーシャ姉は口元を抑えて、
「あら? アイクがお姉ちゃんのために?? だとしたら姉として行かない訳にはいかないわね!! いいわ!! 近い内に必ず行くわ!!」
マーシャ姉は大きい胸を張って言うが、めちゃくちゃ上機嫌だ。なんの歌か知らないが鼻歌まで奏でている。
いやぁ……そんな反応されると嬉しいなぁ。
そんなことをやり取りをしていると、
『ごほんっ!!』とお父様はわざとらしく咳をする。
なんだろう。輪に入れなくて寂しかったのかな??
「そうだ、アイクよ。よく考えたのだがメイドのメルコットもついて行かせよう。新環境に慣れるまで色々と使うといい」
「ありがとうございます。それではお返しに早々に良い土産を持って帰りましょう」
「ほう! 期待しているぞ! ガハハハハ!!」
そう笑いながらガノンは立派な腹太鼓をポンポコ叩いた。
後は徹底的に俺とルナの幸せな結婚生活のため、利用できるものはなんでも利用してやろう。新境地でもそのスタンスを変えるつもりはない。
俺は『ククク……』と悪役らしい笑みを浮かべるのであった。
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