ざまぁ確定の悪役貴族に転生した俺が、最推しのラスボスヒロインと結婚することになったので原作知識をフル活用して幸せになります~なお、嫁を馬鹿にした勇者は俺の敵じゃありません~
第16話 復讐の種火は激しく燃える SIDE.勇者
第16話 復讐の種火は激しく燃える SIDE.勇者
「アイク・ハンバルクの情報を出せ!! どんな細かい情報でもだ!!」
俺、ユリウス・ギルフォード、改め、高村翼は勇者だ。正しく言えば、この世界に勇者として招かれ、ユリウスに転生した日本の元高校生である。
高校生活では頭の悪い馬鹿共が、俺を下に見ていた。
仕方なくつるんでいたやつも俺と違ってぱっとしない。誰もが俺のことを正当に評価しない。俺を尊敬するどころか、軽蔑する奴らしかいない。当然、俺よりも知能の低い、馬鹿っぽい女ですら俺を馬鹿にする始末。
そんなクソみたいな人生をこれから何十年も歩まないといけないのか、そう人生に絶望して、色々なゲームに没頭していた、そんな時に俺はこの世界に勇者として召喚されたのだ。
つまり、これからは俺の時代が来る。だから高村という名前もユリウスに転生したと理解した瞬間に捨てた。あのクソみたいな世界の名残を、誰も理解してくれることがなかった高村翼という名前も捨てることで、俺はこの世界でやり直せる。
勇者ユリウスとして俺の能力を誰もが認め、羨ましがり、媚びていく。
そんな未来を想像していたのに。
「アイク・ハンバルク。あいつだけは絶対に許さねぇ……」
俺は顔面に火傷を負った。
ヒールで回復したからといって、火傷の跡がうずく。痛む。
ただのデブでモブ以下のサンドバックみたいなやつに俺の尊厳を踏みにじられたのだ。しかも俺が転生前に過ごしていた高校で、頭の悪い馬鹿共が俺を見下していた目を彷彿とさせた。アイクは俺を馬鹿にしていたやつらと同じ目で俺を見ていた。
アイク・ハンバルクの全てを踏みにじり返さないと気が済まない。もちろん婚約者のルナという女も俺のものにしてやる。
正直、眼鏡なんてかけててヒロイン感を微塵も感じないがどうでもいい。
アイクの目の前で、アイクの大切なものを全て奪って絶望させてやりたい。それくらい憤りを感じている。ただ、胸だけは合格点だ。俺の女にした暁には眼鏡を外させて、胸が強調する服だけを着させてやろう。
しかしながら教会の役立たずなやつらにも腹が立つ。俺が未だに疼く顔面と言っても、教会の人たちは完治したとしか言わない。
「まぁ、教会のやつらは別に構わない。なんていったって、あの聖女がいるからな」
顔良し、スタイル良し。誰が見てもS級美少女。なんなら権威も持ち合わせている。これほど勇者である俺と釣り合う人間もいない。
しかも聖女は間違いなく俺に惚れている。あの笑顔は俺のことが気になって仕方がないと言っているようなものだ。数々の恋愛ゲームをクリアしている俺だから分かることだ。
ただなんとなく、どこか既視感がある。聖女というだけ色々ありそうな設定だけど、どこかゲームに出てきた美少女キャラクターに見えなくもない。
そう考えたら、この世界は俺のために作られたゲームの世界。そして俺はこの世界の主人公と言っても過言ではない。やはり俺は正しい。
ということはだ。俺が気に食わない人間を消したって文句は言われないよなぁ? その対価に俺は魔王を倒して世界を平和にしてやろう。
あぁ、そういえば俺が世界を救った後のことを考えていなかったな。そうだ。王様に頼んで、聖女と結婚でもしよう。
きっと聖女も泣いて喜ぶに違いない。なにせ、聖女は勇者である俺に惚れているのだから。
「勇者、ユリウス様。こちらがご所望されていたアイク・ハンバルクの情報でございます」
「ちっ……遅ぇんだよ」
俺は王城で俺に仕えているメイドの女から冊子を受け取る。
俺は冊子を目に通す。本来はこの世界の文字なのだが、俺が勇者に転移した特典なのか、冊子の文字はスラスラと読むことができた。
「ふーん。兄のライザはアイク・ハンバルクとの決闘に負けて、アイネス山脈の麓にある北の修道院にぶち込まれてんのか。北の修道院は特に環境、及び、戒律が厳しいと――こいつは使えるな」
教会にいる人間が一人くらいいなくなっても分からないだろ。
それに、北の教会に追いやられたライザが、追いやられた原因であるアイクのことを恨んでいても不思議ではない。俺にとって都合人間を使わない理由はない。
「待っていろよ。アイク・ハンバルク……俺をコケにした代償は必ず払ってもらうからな」
俺はアイク・ハンバルクに対して復讐を誓うのだった。
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