第13話 勇者との邂逅
「アイク殿、ルナ殿。遠路遥々すまないな」
「とんでもありません。王国の太陽。ギルガ王に謹んでご誕生日のお祝い申し上げます」
俺とルナは王宮の間で王様に謁見していた。
フォーチュンラバーの本編だと、民を思う心優しき王様と記載していたが、俺とルナに送る目線はどこか軽蔑に近い眼差しがあった。
「気にするでない。今回は我が無理を言って来てもらっている訳だからな」
ギルガ王のあまりにもあからさまな視線に少し苛立ちを覚えた。
「二人は婚約を結んだばかりなのだったか?」
「はい。先日に婚約を結びました」
「そうか。二人の未来に幸せが導く事を祈っているぞ」
間違いないのは、ギルガ王が俺達のことを全く祝福するつもりがないということだけ。
「ありがとうございます。必ずルナを幸せにするので、ギルガ王の祈りを頂けたなら、なおのこと私達の未来にも幸があることでしょう」
「此度の席は我の誕生日での式典ではあるが、後日祝いの席を設けてしんぜよう」
「ありがたき幸せ。心待ちにしております」
正直、王宮になんて行きたくないから、是非とも社交辞令で済んでほしい。
「時にハンバルク家のセガレよ。勇者伝説をご存知かな?」
「……噂程度はありますが、それがなにか?」
正直に言えば、噂どころかよく知っている。なにせ、その勇者がフォーチュンラバーの主人公であり、将来に渡りアイク・ハンバルクが処刑に至るきっかけの人物だから。
ゲームのプレイした時には嫌でもお世話になるから、知らない訳がない。
「近々、魔王が復活する兆しがあるらしいのだ。そこでだ。アイクよ、少し勇者と模擬戦をしてくれないか。何……軽い余興を演じると思えば良い。我にとって一番のプレゼントじゃ」
「模擬戦ですか……」
今更気付いたけれど、誕生祭だというのにパーティのような机が置いていない。つまり最初から模擬戦をさせるつもりで俺達を呼んだのだろう。
「とはいえ、勇者も勇者となって日が浅いからな。多少揉んでやると思ってくれればよい」
そうは言いながらも、王様から俺に送られた視線は侮蔑が含まれている。
「それでは、紹介しよう勇者ユリウスだ」
「どうも~勇者のユリウスで~す」
そういうと、明らかにチャラい風貌の男が入ってきた。茶髪で男にしては長い髪型。フォーチュンラバーでは全CGで男である主人公は移っていない。
我ながら、こんな姿のキャラクターでヒロイン達を後略していたのかと思うと、少し幻滅してしまう。
「あっ!! 聞いているぞ! お前が女狂いのアイク・ハンバルクってやつだな! お前みたいな性根が腐った男は俺様が正してやるよぉ!」
「失礼ですね。あの男……」
ルナが静かにキレていた。俺が見下されているからなのかもしれないが……なんというか、俺のために怒ってくれているのはやっぱり嬉しい。
「お初にお目にかかります。アイク・ハンバルクと申します」
だが、俺はあえて最低限の礼を尽くすつもりでいた。初対面であることは変わらないから。仮に相手が失礼な振る舞いをしていたとしても。
「それで王様。俺はこいつと戦えばいいの? いいよ? 俺、やっちゃうよ?」
だけど、そんな俺の意図を知る由もなく、勇者は話を進めようとする。
「あぁ、そうだ見てみろよ。これが勇者として証。聖痕だわ。こんなもん見れる機会ないだろ? よく記憶に刻んどけよ」
そう言って勇者は右手を掲げる。右手には白に光る聖痕が刻まれていた。
『おぉ……あれが聖痕』『なんて神々しい』『片や神の寵愛を受けた者、片やクズ。此度は酒が進みますな』『我が王も乙なことをしますわね』『えぇ、まったく』
と、辺りが騒然となる。主に勇者への賛美と俺への悪口だけど。わざと聞こえるように言っているのだろうか?
ちなみに聖痕とは勇者である主人公だけが持っている証である。
フォーチュンラバーではこの証を持っているものが魔王を倒すことができるという伝説がある。それに加えて、預言者が近々魔王の復活を予言していたこともあって、王国内では対魔王に備えての動きが活発化していた。
結果としては、闇堕ちをしたルナがその魔王になってしまった訳だが。
「勇者よ。一応は王国の民だ。手加減してやれ」
「まぁ、王様がいうなら? 仕方ないっすね」
王様と勇者ユリウスは明らか様に俺を見下しているのが分かる。
「仕方ないから半殺しですませてやるよ」
たしかに今までの
「それでいて……呪いの力を持ちし魔女――ルナ・オルハインもこの世界には必要ないよなぁ?」
その後、勇者ユリウスの口から出た言葉に俺の怒りの沸点が一瞬で越えた。
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