第12話 国王からの招待状

「お待たせして申し訳ありません。お父様」


「おぉ……アイクよ。待ちわびたぞ!」


 俺とルナはお父様≪ガノン≫の待つ、執務室に辿り着く。俺とルナはお父様に席に座るよう促される。


「調子はどうかね?」


「えぇ、順調ですよ」


 恐らくアーティファクトの件を言っているのだろう。大丈夫。まだ時間はある。お父様に渡すようにアーティファクトは後々発掘すれば問題ない。


「そうか。最近マーシャから魔法を教えてもらっていると聞いてアイクの成長が気にはなっていたからな。これでも我がハンバルク公爵家は魔法の名門。ゆくゆくは当主である私が直々に魔法を教えてやろう」


「え? お父様が?」


「不服かね?」


「いえ、そんなことはありません。ありがとうございます」


 そっちだったのか。てっきりアーティファクトのことを聞いているのかと思った。


 まさかガノンがアイクに期待なんてしているとは思っていなかった。


 ガノンの実力はフォーチュンラバーですら触れていないので分からないが、マーシャの実力を見るに期待していいのかもしれない。


「失礼致します。お茶をお淹れ致します」


 メルコットは机に三人分のお茶を淡々と淹れる。


 メルコットの良くも悪くも平等な姿勢は、ある意味安心する。


 何故なら、呪いを持っているルナを軽蔑することはないからだ。


「アイクよ……早速だが国王陛下の誕生パーティに私と共に行ってもらう」


 お父様は決定事項だと言わんばかりに告げる。


「お言葉ですがお父様。国王陛下の誕生パーティですか……今は避けた方が良いのではないでしょうか? まだ私は下に見られた方が得な状況ですし……なにより」


「なにより、なんだね?」


「演技とはいえ、ルナがいる前で他の女にちょっかいを出したくありません」


「アイク様……私、アイク様の野望のためなら、いくらでも我慢しますよ」


「気持ちは嬉しいけど、俺はルナさえいれば他のやつなんてどうでもいいから」


「嬉しいです。やっぱり私は幸せものですね」


 最終的に俺とルナに幸せな未来が訪れるならば、なんでもいいのだ。

 そしてルナは俺の発言に目をトロンとさせて俺を見つめている。

 ほんと、まじ、かわいい。

 気障な言葉でも言ってみるものだなぁ。


「あぁ……ルナ、本当に可愛いよ」


「ご、ごほんっ! 一旦は私の話を聞くのだ。まぁ、二人の仲が良いのは素晴らしいことだが……まずはこれをみてくれ」


 ガノンはそういうと、赤い封筒を封筒を取り出す。封筒には金の蝋で封をされていた。


「これは……」


 フォーチュンラバーのCGで見たことがある。


「国王陛下が……? 俺達に向けて招待状を……?」


「あぁ、そうだ。すまない、アイクよ。国王陛下が直々に、アイクとルナ嬢に会いたい言って、招待状まで寄越してきたのだ」


 ハンバルク家は公爵家が故に国王陛下とお話する機会もあるのだろう。

 だが、宛先を俺とルナに向けたのが、


「どうにも嫌な予感がするんですが……」


 フォーチュンラバーでの王様は民に対して心優しい王様として書かれていた。特に味方である勇者に対してはとても親身だったが、同時に敵である魔王に対してはとっても冷酷に立ち振る舞いをしていた。


 そう、今回の場合は俺とルナは味方なのか、敵としての対応なのか会ってみないと分からないのだ。あぁ、不安だ。


「まぁ、ともかく決定事項だからな! 国王陛下のやつが送ってきた手紙を無視することは、不敬罪になってしまうからな! よろしく頼むぞ! これもハンバルク家のためなのだ!」


「……かしこまりました」


 お父様の発言の方がよっぽど不敬罪にあたると思うんだが……今はそれどころではないな。


 仕方ない。こうなっては何があってもルナを守ろう。最悪の最悪、王様をぶん殴ってルナと共に国外に逃げることだって手だ。


「アイク様。改めて言わせて下さい。私はアイク様がどんな選択を取ろうと受け入れます。だから、私に気を使って頂かなくてもいいのです。アイク様はお優しすぎます」


「別に俺は優しくなんかないよ。ルナが傷つくところを見たくないって俺のワガママなんだ……でも、ありがとう。ルナの気持ち、受け取っておくよ」


 ますますルナは良い子だ。それなのに、原作のキャラクター達はルナにここまで酷い仕打ちを……いや、今はその考えは良そう。


「それではアイク、ルナ殿。早速であるが共に王宮に向かうぞ。『まだ』面倒ごとは起こすのではないぞ」


「かしこまりました」


 何故か、用意することのないお父様が自慢げな顔をする。楽しそうでなにより。


 とはいえ、ルナは呪いの力のせいで周囲から歓迎されない可能性もある。そのせいでルナ嫌な思いをしてもおかしくはない……。今後に踏まえて何かしらの手を打っておいた方がいいだろう。


「それでは明日の明朝に出発するからな! 寝坊するんじゃないぞ!」


 そうして俺とルナは王宮に向かうことになった。

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