ざまぁ確定の悪役貴族に転生した俺が、最推しのラスボスヒロインと結婚することになったので原作知識をフル活用して幸せになります~なお、嫁を馬鹿にした勇者は俺の敵じゃありません~
第11話 もう教えられることがないだなんて……
第11話 もう教えられることがないだなんて……
「アイク……残念だけど貴方に教えられることはもうないわ」
マーシャ姉に訓練を付けてもらって一か月後。俺はマーシャ姉にそう宣告された。
「マーシャ姉……どうしてっ……!?」
肉体強化を始め、様々な属性の初級や中級魔法を覚えた。
アイクにあった魔法の才能と、俺自身がフォーチュンラバーの周回で培った効率の良い訓練方法でさらに魔法を極めていった。常に完璧な仕上がりだと自負していた。
そして今日はマーシャ姉に試験を与えられた。俺とルナの二人でA級モンスターである、ウィークドラゴンを倒した後だった。とりあえず、マーシャ姉に教えてもらった魔法を一通り使いこなすことができて自信がついた直後だった。
ついでに魔法の訓練のおかげで、ぽっちゃりな見た目が少しスマートになってきたところでもあった。
「頼む!! マーシャ姉!! 俺はもっと強くならなきゃいけないんだ……!」
俺はルナとの幸せの生活を守るため、もっと強くならないといけない。
それなのに、今、師事をしているマーシャ姉に投げ出されたら困る。いずれ訪れる原作主人公の脅威だけではない。今後想定していないことでルナが傷ついたら嫌なのだ。
「教えてくれ!! 俺の何が悪いんだ!! 俺は強くならないといけないんだ……頼むよ!」
マーシャは深いため息と共に、俺の両肩をガッと掴んで、
「だって、アイク……貴方、私ですらソロで倒すことが困難なA級モンスターをいともアーティファクトなんて代物すら使わずに一撃で倒しちゃうじゃない!! 本来はパーティ推奨の敵よ? だから、私の後ろに魔法使いが何人もいるのよ!? 分かってる!?」
「え……?」
「え? じゃない。アイクは全く苦戦してなかったわ。あのね?? たしかにアイクとルナちゃんの成長は見張るものがあったわ。だから少し危なくても、ルナちゃんと連携をしないと倒すことができないレベルのモンスターを想定してたのよ?」
マーシャ姉は拳をワナワナと握りしめる。
「それをアイクは『ルナを怪我させたくないんだ。だから少し離れてくれ』って言ってさ!? もしも何かあった時の判断力とか、ルナのフォローのレベルを見るつもりだったの!! それをソロで倒すって? もうね。水晶を使うまでもないわ! アイクの魔力はS級になってんのよ! しかも全属性に適正があるって!? 私より強い人に何を教えればいいのよ!?」
「そんな俺はまだまだだって! 魔法だってまだ全然覚えられてない!」
「そうね。たしかにまだ上級魔法とかは教えてないわね……。じゃあ、実戦はともかくとして使える魔法を増えていくことを重点に起きましょうか? はぁ、私の弟はどんだけ強くなるのかしら。私が本当に教えていいか不安になるわ」
マーシャ姉は頭を抱えていた。
でも良かった……。ひとまずは教えてくれるらしい。
「だけど問題はルナちゃんね」
ルナはビクッと身体を震わす。
「たしかに魔法の習得スピードはアイクほどではないけれど、間違いなく人並み以上。それなのに、魔法を使うのを躊躇してる。やっぱり、呪いの力が怖いの?」
「そう……ですね。もしもこの力が暴走して、アイク様やマーシャお姉様を傷つけるかと思うと……」
「ルナ、それは違うよ。俺達は夫婦だ。だから仮にルナが暴走して俺を傷つけたとしても、それはルナのせいじゃない。僕の幸せは君が傷つかないことなんだ」
俺は悪いと思いつつも、マーシャとルナの会話に割って入る。これだけはすぐに伝えたかったから。
「それは……私だって一緒ですアイク様……! 私だってアイク様に傷ついてほしくありません! お慕いしている旦那様が私を嫌いになってしまったら……そう思うだけで心の底から嫌なのです……!」
「ルナ……俺がルナの事を嫌いになるはずがないだろう」
まさかルナがそう思っているとは思っていなかった。
「アイク様……でもその可能性が少しでもあるだけで怖いのです」
というか、今ルナは俺のことをお慕いしてるって言った? お慕いって……つまり俺の事が好きってことだよな? もうその一言で幸せだわ。
「だとしたら、頑張らないといけないわよね」
マーシャ姉はルナに微笑みかける。
「正直、私はルナちゃんの呪いの力がどういうものか知らないわ。暴走したら、どんな被害になるのかも知らない。でも唯一分かることがあるわ。それは本当の意味でアイクの横に立ちたいなら、その呪いの力もいつかは克服しないということだけ。ルナちゃんはアイクの横に立ちたいんだよね?」
「あ、当たり前です! 私はアイク様の妻なのですから!」
「だとしたら、やるしかないわよね? これからはより厳しく鍛えるから覚悟しなさいよね!」
「……!! よ、よろしくお願いします!」
ルナは深々と頭を下げる。
「あとマーシャお姉様じゃなくて『マーシャ姉』と呼んで」
「いや、さすがにそれは……」
「ほら、早く……」
「マ、マーシャ姉……様」
「ぐはっ……! ふっ……最初はそれで許してあげるわ……!」
悶絶するマーシャ姉。分かる、分かるよ。その気持ち。
誰が見ても、ルナはめちゃくちゃ可愛い。
だから俺はルナのことを推せる。
けれど、俺が思っている以上にルナが俺に対して真剣に横に立ちたいと思ってくるのがすごく愛おしいと感じた。ただでさえ好きなのに、もっと惚れてしまう。
惚れない方がどうかしている。
「お取込み中のところ、申し訳ございません」
突然、背後から声をかけられる。振り向くと、そこには一人のメイドがいた。
たしか……お父様にお付きのメルコットだっけか。
「アイク様。当主様がお呼びです」
「お父様が? 分かった。すぐに向かおう」
「ありがとうございます……それとルナ様も当主様によばれておりますので、ご一緒にご案内致します。」
ちょっと待て。ルナも呼ばれているとはどういうことだ? なんだか嫌な予感がする。
「構いません。案内してください」
「……ルナ」
「アイク様が私の身を案じていることは存じてます。ですが私もアイク様の隣に立つために、一緒に行かせてください」
「……分かった」
ここまで言われて、ダメとは言えない。
「二人とも私も行こうか?」
マーシャ姉が俺達を心配してくれている。だけど、
「大丈夫だよ、マーシャ姉。きっと大したことじゃないと思うから」
「そう……アイクなら大丈夫だと思うけど、もしも困ったことになったら私にも相談しなさいよ? 私も力になるから」
マーシャ姉は心配そうに俺とルナに声をかけてくれた。本来見下される存在であるアイクにここまで優しい姉がいたなんて……。
「ありがとうマーシャ姉。行ってくるよ」
こうしてマーシャ姉に見送られながら、俺はお父様の執務室に向かうのであった。
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