第10話 ルナのお願い

「お話のところ申し訳ありません」


「ルナ? どうしてここに?」


 ルナが来ているとは思っていなかった。俺は驚きを隠すことができなかった。仮にもルナは公爵家の令嬢だ。本来訓練なんてする必要がないから。


 俺的にはルナを拝めることができて得しかないから良いんだけど。


 うん。今日も推しが可愛い。


「アイク様が訓練所に向かわれているのを目に入ったもので……いえ、今はそんなことはいいのです」


「マーシャ様。お初にお目にかかります。私はアイク様と婚約関係を結ばせて頂きましたルナと申します。ご挨拶を遅れた上での重ねてのお願い。大変失礼だと存じておりますがマーシャ様にお願いをしてもよろしいでしょうか?」


「何かしら?」


 マーシャ姉は冷たく言い放つ。残念なのは口元のニヤニヤが止まり切れてないところだけど。


「わ、私も一緒に鍛えて頂けないでしょうか!?」


「どうしてかしら?」


「存じているかと私には呪いの力があります」


「ル、ルナ……!?」


「……続けなさい」


 俺の動揺を他所にマーシャ姉はルナに話を促す。


「今までは私も呪いの力が暴発するのを恐れて、何もしてきませんでした……ですが、私だっていつかアイク様の力になる時が来るはずなのです! その時に何もできませんってなるのは……とても嫌なのです!」


「いいわ!! それなら魔法を覚えつつ、呪いの力をコントロールする訓練もしましょう! それとそんなに気を負わないで。アイクの家族になったってことは私の家族と同じよ! お姉ちゃんだと思って気軽に頼ってきなさい!」


 まさかの二つ返事でOKを出すマーシャ姉。


 いや、もはやマーシャの姉御まである。


「……っ! ありがとうございます!!」


「冷たい態度を取ってしまってごめんなさい。一度やってみたかったのよ。弟との恋路を邪魔する敵役みたいなこと……でも、もう満足だわ……!」


 あまりフォーチュンラバーの本編で語られることはなかったが、恋愛小説のファンだとは知らなかった。こんなキャラだと思わなかったなぁ……。


「良かった。これでアイク様と一緒にいられる……」


 ルナが最後にボソッと言った。なんだろう……全モーション可愛いがすぎる。


「じゃあまずは……ルナちゃんの魔力も見てみましょうか」


「は、はい……!」


 そう言ってマーシャ姉は水晶を取り出し、ルナは俺と同じように手をかざした。


「どれどれ……?」


 マーシャ姉がそう言うと、水晶が青い光を放つ。


「Bランクね! その年なら上々よ! アイクほどじゃないけれど、相当な魔力量ね」


 なるほど、青い光だとBランクなのか。


「あ、ありがとうございます……!」


 潜在力で考えたらルナは相当な魔力を持つことになるのだろう。なにせフォーチュンラバーでは主人公の勇者を苦しめたラスボスだったのだから。


 だとしたら、俺は負けないようにもっと努力しなければ。


 ルナが力を使わなくても、幸せな結婚生活を掴むために。


「二人とも定期的に魔力がどれだけ上がったか見るから、来月になったらまた魔力見るからね!」


「分かりました」「お、お願いします」


「じゃあこれから、三人で魔法を頑張るわよ!!」


 当面はSランク目指そう。痩せるし、強くなるし一石二鳥だ……あぁ、来月が楽しみだ。


 そうして俺達三人は魔法の特訓を始めるのであった。

 


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