ざまぁ確定の悪役貴族に転生した俺が、最推しのラスボスヒロインと結婚することになったので原作知識をフル活用して幸せになります~なお、嫁を馬鹿にした勇者は俺の敵じゃありません~
第5話 原作最強の武器を使えるの俺だけって……本当に?
第5話 原作最強の武器を使えるの俺だけって……本当に?
「アイク様とご一緒にお出掛けできるなんて、私嬉しいです……!」
ここはとある隠しエリアの入口。
本来ならばフォーチュンラバーの本編が始まって、序盤に存在している隠しエリアである。本来なら本編と関係ないフィールドであるため、単純にゲームを楽しむのならば来る必要もない場所である。
だけど、周回前提でゲームをクリアするなら必須な場所がある。それがこの序盤の隠しエリアである。
ここにチート級のアイテム《アーティファクト》が存在している。
「あぁ、できる限りルナと離れたくないからな」
「うふふ……私も同じ気持ちですよ♡」
ルナはそう言いながら、嬉しそうに頬を肩に寄せてくる。
くぅ~!! このまま、めちゃくちゃイチャイチャしたい!! 今日もルナが最高に可愛い!!
まぁ、本当はハンバルク家の屋敷にルナを置いておきなくないからってのが本音だけど。ユークリッドみたいなのがいないとも言い切れない。
ルナとのイチャイチャ生活を守るための障壁として一番大きいのは、兄であるライザの存在だ。この前の一件でライザのメイドであるユークリッドは屋敷を追い出されることになった。正直、ライザはユークリッドとデキていた。
とどのつまり、いけない関係ということ。
自分が囲っている女が出来損ないの弟が追い出したと知ったら? 報復にくるのは間違いない。俺だけが被害を被るならば別にいいが、婚約者のルナに矛先が向くことは許しがたい。
ライザはアイクと違って、中ボス的な立ち位置にいた。対するアイクの実力はフォーチュンラバー内だとクソ雑魚の中のクソ雑魚。
悪役のアイクが主人公である勇者のレベルが高くなってから戦ったというのもあるだろうが、はっきり言って相手にもならない。初見ですら手応えがない。その後に戦うライザと比べたら雲泥の差だ。
そんなライザのメイドであるユークリッドを俺は屋敷から追放した。この事実を聞いたライザは怒りのまま、ハンバルク家に戻って俺に対して何かしらのアクションを仕掛けてくるだろう。
それは現実問題として、今の俺が策がない状態で挑んだら、簡単に負けてしまうだろう。
その負けない策を作るためのアーティファクトだ。
「くっ……じゃあ行こうか」
「はい。どこまでもお供致します♡」
語尾の♡がゾクゾクする。やはりこれが恋。
くっ……! 原作のアイクは本当に馬鹿なことをしたな……!
閑話休題。
俺とルナの二人は隠しエリアに挑む。
そう、このゲームをやり込んだ俺にとっては敵に遭遇しないルートを選択した上で隠しエリアの中にある隠し部屋に辿り着くことができる。この世界で俺しか知らない攻略法。
アイク自身は最低限の魔法は使えるみたいだからクリア自体はできるけれど、万が一ルナに怪我をさせたら困るから安全策を取った。
「よしここだな」
「あ、アイク様……? このフィールドは何回か来たことがあるのでしょうか? しかもここって隠し部屋ですよね? さすがの私でも噂くらいしか聞いたことがありませんが…」
「まぁ、俺も実際に来るのは初めてなんだけどね」
「だとしたら、アイク様は女神に寵愛を受けた人……? 私はすごい人を捕まえたってこと……? あぁ、これは女神様が授けてくれた運命に違いないですわね……!」
俺はルナが何かを言っている間に宝箱を開ける。
「とりあえず、お目当てのアイテムは……よし、あるな」
そこには、杖があった。俺と同じくらいの背丈の木材でできた杖。
杖の柄は幾何学模様で覆われている。
「これは!! アーティファクト……!? どうしてこんなところに!? 見つけただけで王家から爵位と土地を下賜される代物……! 使用するのはそのアーティファクトの構造を理解しないといけないみたいですが……」
『アーティファクト――『龍星の杖』を覚醒させますか?』
『はい・いいえ』
俺の目の前に見慣れたフォーチュンラバーの選択画面が表示される。
俺は迷わず『はい』を選択した。
アーティファクトが起動する。ただの棒切れだったアイテムは幾何学模様に沿って緑に発光した。発光したアーティファクト≪龍星の杖≫は俺の身体に瞬時に馴染む。全身の魔力が流れ、その在り方を瞬時に理解できた。
『おめでとうございます! 貴方はこの世界で初めてアーティファクト――『龍星の杖』を所有しました!!』
と、フォーチュンラバーの画面が出てきた。
そうか。フォーチュンラバーの世界だと『龍星の杖』は俺が初めて持つことになるのか。
『使用者登録を致しますか? 使用者登録をすると『龍星の杖』を独占して使うことができます』
「答えはもちろん『はい』だ」
それは良い情報だ。こんなチート武器を扱えるのは俺だけということなのだから。
「アイク様……! とても凛々しいです! で、ではなくて!! どうしてアーティファクトを使えるのですか!?」
「たまたまだよ」
「たまたまで使える代物ではありませんが!?」
そうか、この世界では簡単にアーティファクトを使えないんだっけか。
「とりあえず、こいつの性能を見てみるか」
アーティファクトはチート級のアイテムである。特に龍星の杖は壊れ中の壊れアイテム。これ一つでラスボスまで攻略できる。
そして俺はゲーム知識フル活用して、フィールドの奥に向かう。
「アイク様……もしかして、私のためにモンスターと出会わないルートを選んで下さっているのでしょうか?」
「そりゃあ、ルナに万が一、何かあっても嫌だからな」
まぁ、ルナに全部説明しても変な人だと思われるから説明はしないけれど。
仮にエンカウントしてもこの装備を付けている限りは簡単に倒せるんだけど、念には念を、というやつだ。
「本当にアイク様はお優しいんですね」
「俺は……別に優しくないよ」
「ふふふっ……その優しさが全部、私だけに向いたら……いえ、それは贅沢な願いですね」
「…………」
いや、向けてるんだけど?? むしろ下心しかないから優しさかどうかと言われれば怪しいかもしれないけれど。
俺とルナはボスがいるエリアに辿り着く。
「会いたかったぜ。エンシェントゴーレムさんよ」
『GUOOOOOOO!』
目の前には隠しボスである全長5メートルを超える巨大なゴーレムがそびえ立っていた。
この隠しボスは高い耐久値のせいで倒すのに時間がかかる。その上、少しでもミスをすると致命になりうる難敵。普通に攻略しようとするならばだ。
この隠しエリアのボス――エンシェントゴーレムは侵入者の俺を認識すると攻撃を仕掛けて来た。
俺は杖を構える。龍星の杖の能力を使って俺の周りに赤、青、黄、黒……と様々な色の魔法陣が展開される。
「くたばりやがれ」
目に留まらない集中砲火がエンシェントゴーレムにズドドドド!! という轟音と共に一点に降り注ぎ、エンシェントゴーレムは一瞬で跡形もなく灰塵と化した。
「これが、アーティファクトの力? いえ、アイク様はモンスターを最初から知っておられたような冷静な立ち回りを……まさか!! 女癖が悪いなどの噂は自身の能力を表に出さないためのフェイクだったんですか……!?」
ルナが羨望の目で見てくるせいか、少し気持ち良くなっている自分がいる。
「ま、まぁ……今はルナに一途だからな」
「アイク様……!!」
ルナは俺の腕を抱きしめる。あぁ、これがルナの感触。めちゃくちゃ柔らかいし、すごく良い匂いもする……バニラのような甘い匂い。この匂いも好きすぎる。あぁ、アイクに転生して良かった。
「そうそう……これも忘れちゃいけないよな」
そして俺はエンシェントゴーレムのドロップアイテムであるもう一つのアーティファクトを手に入れるのであった。
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