疑惑
僕たちは、付き合って一ヶ月半くらいたっただろうか。
ふと、あのことを思い返すのは何度目だろう。
「えっと、手を繋ぐんだっけ? 今後の楠木さんのために期待はさせすぎないようにしたいけど……」
これは五日前くらいの山川さんが思っていたことだ。
その時、僕と山川さんは二人で出かけていた。
「そういえばさ。今日の私の服、どう思う?」
家を出て、すぐにそう聞かれた。聞いてくるってことは相当の自信があるのかな。
「うん。すごく似合ってる。」
深く頷きながらそう言った。
だが、それ以降の彼女との会話はなかった。
それどころか、ずっとよそよそしい。そして、なぜか苦笑いになっている気がする。
軽い気持ちでなぜなのかと考えていると、ある場合が頭をよぎる。
本当はまだ高村と付き合っていて、僕とは遊びなのかも。
よくよく考えれば、告白の時にわざわざとっかえひっかえしてるつもりはない意志を示す意味はない。違和感がある。
疑ってはいけないし、能力は長い人生で一度しか使えない。そう思いつつも、ズボンのポケットに忍ばせていた能力を使用するための細長いボタンを押してしまった。
それ以来、学校での山川さんの言動や行動が気になってしまう。
いや。手を繋ぐより恥ずかしいことができないから、期待させすぎないようにしたいだけだ。そうだ、そうに決まっている。だって、告白してきたのはあっち。からかいだとしたら、なんでそんなことするのか説明がつかない。
心はざわめくくせして、納得した演技をした。
「……今日はもう寝よう。」
時計の短針は十一を指している。いつも寝る時間の一時間後だ。
椅子から重い体を離すと、吸われているかのようにベッドに足を運んだ。
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