第35話 シオン、魔物の討伐に出発する

シオンは渋る村長達を根気強く説得していく。


「村長さん達が私のことを心配してくださっているのは良くわかります」


「それなら……」


「ですが私は皆さんが思っている以上に強いのです。ゴブリンやオークの群れなら千体が集結している群れでも問題なく蹴散らせますよ?」


「……え?」


「ですから皆さんは私のことを心配するよりも、蹴散らされる魔物達の方を心配してあげてください」


シオンは村長達にそう告げると、軽く頭を下げていった。

そんな話をしたシオンを、まるで化け物を見るかのような目で眺める村長達。

一方のシオンはちょうど頭を下げていたためにその目に気付くことはなく、さらにシオンが頭を上げるタイミングでたまたま村長達も化け物を見るような目を止めたために最後までシオンが村長達の目に気付くことはなかったのである。

そんなやり取りをした村長達がついにというか、シオンの提案を受け入れて今の時間からの魔物退治を認めていった。


「……わかりました。シオン様がそこまで言われるのでしたら、魔物退治をお願いします」


「聞き入れていただけましたか、ありがとうございます」


「ですが本当によろしいのですね? 私達は止めましたからね?」


「ええ、わかっています。魔物退治を今から始めると言ったのはこの私、シオン・エルコンティです」


「……はい、その通りです……」


シオンに押し切られる形になった村長達がシオンの発言を項垂れながら聞いていく。

そんな村長達に、村長達をこの空気にしたシオンが優しく話し掛ける。


「まあそんなに落ち込まないでください。もし私になにかがあっても、おそらく王国騎士団の方々が見回りに来るはずですから、どちらにしてもなんとかなると思います」


「……それなら尚更、騎士団の方々が来るのを待たれた方が良いのではないですか?」


「それでも良いのですけれど、魔物達がいつ襲撃してくるかがわかりませんからね」


「ああ、そういえば先ほどもそう言われていましたね……」


「はい。ですからできる限り早期に退治に行かなくてはいけないのです」


「……わかりました。それなら我々はもうなにも言いません。ただシオン様が無事に戻られることを祈るのみです」


シオンの決意と覚悟を改めて確認した村長達が半分諦めたような表情でそう話す。

これにシオンが笑顔で返事をしていく。


「ありがとうございます、皆さん。それではラオ君のことをよろしく頼みます。ラオ君、皆さんの言うことを良く聞いて、大人しく待っていてくださいね?」


「……わかりました、シオンさん。どうかお気を付けて……」


「ありがとう。それじゃあ行ってきます!」


村長達とラオレットにそう話したシオンは箒に乗り、いつでも飛び立てる準備をしていった。

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