第32話 シオン、村長から相談される
「なにぃ!? それは本当なのか!?」
「うわぁ!?」
シオンの探索魔法を使って村長の家に辿り着いたシオンとラオレットの二人は、家の近くから響いてきた村長の怒声に驚いて大声を出す。
するとこの大声を聞くことになってしまった村長達も反射的に大声を出し、結果としてこの場所にいる全員が事件性のある悲鳴をあげたことで周辺一帯がしばらく騒然となってしまう。
シオン達や村長達はそれぞれの報告を始める前にこの事態を収拾するために動き、周辺住民が落ち着いたところで改めて報告を始めることにした。
「……ふぅ、ようやく落ち着きましたね」
「魔術師殿、本当に申し訳ないことをしてしまいました……」
「いえ、最初に驚いて悲鳴をあげたのは私達ですからね。先に謝るのは私達の方でしょう」
「いえ、ですが……」
「それに私達がここに来るのだって事前に連絡をしておけば良かったわけですから。ですから村長さん達はなにも謝らなくて良いのですよ」
「……ありがとうございます」
「それで村長さん、なにがあったのでしょうか?」
「それですか……実は魔術師殿が怪我人を治療している間に、まだ近くに魔物がいないかを調べに行かせたのです」
「……なるほど、それでまだ魔物がいるとわかったのですね?」
「話が早くて助かります、魔術師殿……それで、あの、大変申し上げにくいのですが……」
「その魔物も蹴散らせば良いんですね? 任せてください」
「えっ!? よろしいのですか!?」
村長は自分が言おうとしていたことの返答をシオンに先回りして言われたことに驚くと同時に、軽く引き受けると発言したことにも驚くという二重の驚きに襲われる。
そんな村長にシオンが落ち着いた口調で語っていく。
「はい、先ほども言いましたが、任せてください」
「……それは大変にありがたいことなのですが、どうしてここまでしてくださるのですか? 失礼ですが魔術師殿はこの村になんの関係もない方のはずなのに……」
「この村ひとつだけで考えれば、確かになにも関係がないかもしれません」
「それなら……」
「ですがこの国全体として考えた時には話が変わってきます」
「……え? この国全体?」
「はい、この国全体です。そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたね。私はサンドルシア王国の魔女、シオン・エルコンティと申します。よろしくお願いします」
シオンはこのように自己紹介を行うと村長達に頭を下げていった。
この自己紹介を聞いた村長達は一瞬静まり返り、その直後にさっき以上の大絶叫を響かせたのである。
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