第31話 シオン、金銭以外のお礼を受ける
シオンが治療を終わらせ、代金の受け取りを拒否したことで村長はそれならばと、シオン達にこの村に泊まっていかれてはどうかと尋ねてきた。
この申し出にシオンはラオレットと相談をして返答することにする。
「治療費を受け取ってもらえないのなら仕方がありません。それでは別のやり方で恩返しをしようと思います」
「……え? 別の方法での恩返し、ですか?」
「はい」
「……その方法がどのようなものなのか、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「構いません。それに簡単なことです。魔術師殿、助手殿、是非ともこの村で一泊していってください。できる限りのおもてなしをしたいと思います」
「ああ、そういうことですか。ふむ……」
「……これも駄目でしょうか?」
「いえ、駄目ではないのですが、このまま旅路を急ぐか、それとも一泊していくか、少しラオ君と相談して決めようかな、と思いまして」
「そういうことですか。わかりました、よく考えて決めてください。我々としましては、是非とも宿泊していってほしいと思っている、これは覚えておいてください」
「わかりました、その点も考慮して話し合いを進めていこうと思います」
「はい。それでは我々は一度家に帰ろうと思いますから、お決まりになりましたら誰でも良いので声を掛けてください」
「はい、わかりました。それではまたあとで」
「はい、またあとで」
村長達が去っていったところで、シオンとラオレットの話し合いが始まった。
「ラオ君どうする?」
「うーん……僕は正直どちらでも良いと言うか……」
「なるほど、そうなのね」
「シオンさんはどうなんですか?」
「私は……そうだなぁ……ここで一泊していっても良いかな、とは思っているよ」
「そうなんですか。ちなみにそれはどういう理由からですか?」
「ラオ君が空を飛んだのが、今日が始めてだからだよ。多分ラオ君が今考えている以上に負担が掛かっているはずだから」
「それで休んでいこうということですか……あれ? それはつまり僕のためということですか?」
「うん、そうなるね」
「……ありがとうございます、シオンさん」
「ふふ、どういたしまして。それじゃあこのまま村長さんか誰かに報告をしに行く?」
「……そうですね、そうしましょう」
シオンとラオレットは相談の結果を村長か村人の誰かに伝えに行くことにする。
「さて、村長さんの家は、と……」
「あれ? シオンさん、なにをしているんですか?」
「うん、ちょっと村長さんの足跡を辿っているの」
「……そんな魔法もあるんですね……」
「ええ。よし、あっちだね。行こう、ラオ君」
「はい」
こうして二人が向かった先では村長が複数人の村人達となんらかの口論をしている場面があった。
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