第30話 シオン、治療を終える

ラオレットの質問に答えたシオンの前に次の怪我人が現れる。


「次は僕になります……」


「はい。それであなたはどこを怪我されたのですか?」


「脇腹を抉られてしまって……なかなか血が止まらないんです……なんとかなりますか?」


「とりあえず患部を見てみましょうか」


シオンにこう言われた三人目の怪我人が抉られたという脇腹をシオンとラオレットに見せていく。

これにシオンは平然としていたのだが、ラオレットはこのレベルの怪我を見慣れていないらしく口を押さえ、目を背ける。

そんなラオレットにシオンは軽く苦言を呈して治療を始めていく。


「……なるほど、これは少し酷いですね……」


「……う、うえ……」


「……ラオ君? どうしたの?」


「……ご、ごめんなさい、ちょっと……」


「……慣れていないのね?」


「ごめんなさい……」


「多分だけれど、これからの旅では同じような状況になることも多々あると思うの。だから今のうちから少しずつで良い、慣れておいてもらいたい。それは大丈夫かな?」


「……わかりました……努力します……」


「よし。すみません、待たせましたね」


「いえ、大丈夫です……」


「ありがとうございます。それでは始めます」


シオンは二人目の怪我人に行った時と同じように、患部に手をかざす。

そうして意識を集中させると脇腹の怪我が跡も残らず綺麗に治っていった。


「お、おお! もう痛くもなんともない! それに血も止まっている! ありがとうございます、魔術師さん!!」


「どういたしまして。それではお気をつけて」


「はい!」


怪我が治ったことを確認した三人目の怪我人を笑顔で見送ったシオンは続けて四人目の怪我人を治療していく。


「はい、次の方、どうぞ」


「はい」


「あなたは……失礼を承知でお尋ねしますが、どこを怪我されているのでしょうか?」


「背中です。見てください」


そう話して背中を見せた四人目の怪我人。

その背中には爪のようななにかで付けられた深く大きな傷があった。


「なるほど、これは確かに早急な治療が必要な怪我ですね」


「そうでしょう? ですから魔術師さん、早いとこお願いします」


「わかりました」


急かす怪我人の言葉に答えて治療魔法を使って怪我を治していくシオン。

こうして四人目の治療も無事に終わらせたシオンに次々と怪我人が押し寄せる。

この怪我人達をすべて治療したシオンに村長がお礼の言葉を伝えると共に、改めて治療費を請求しないのかと尋ねてきた。


「ふう、これで終わりかな」


「そうみたいですね。お疲れ様です、シオンさん」


「ラオ君も、ありがとうね」


「ありがとうございました、魔術師殿」


「ああ、村長さん。別にお礼はいりませんよ。困っている人達を助けるのは当然のことなのですから」


「ありがとうございます……それでお金の方は本当によろしいのですね?」


「はい。私に支払うようなお金があるのなら、すべてを村の復興に使ってください」


シオンは穏やかに微笑んだ。

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