第29話 シオン、まだまだ治療を行う
シオンに選択を迫られた怪我人はそれほど考えることなく返答していった。
「……再生させるほうにしてくれるか?」
「そちらにしますか。本当にしばらく時間が掛かりますけど良いんですね?」
「ああ、俺には家族が多いからな、完治するまでだったらどうにかなる……はずだ……はずだよな?」
最後の質問に困惑しながらシオンはもう一度腕と足の再生治療で良いのかを、最終確認していく。
「それを私に聞かれても困るのですが……それよりも本当に再生治療でいいのですね? 義手と義足にはしないでいいのですね?」
「ああ、そうしてくれ。だって義手と義足にするとメンテナンスをしないといけなくなるんだろ?」
「ええ、そうですね」
「それならやっぱり再生治療でお願いします。治ったあとも時々メンテナンスをしないといけないのは面倒ですし、お金も必要なんでしょう?」
「そうですね、いつも私がメンテナンスを担当できればお金はいらないのですが、私以外の方は必ずお金を要求してくるはずです」
シオンがこのように答えると怪我人は黙って頷くとシオンに再生治療を行ってほしいと頼んできた。
「そこまで教えてもらえたならもう迷うことはありません。再生治療を始めてください、魔術師さん」
「わかりました。それではいきますね?」
怪我人の頼みを聞いたシオンが怪我人の腕と足に手をかざし、意識を集中させる。
すると怪我人の腕と足がぼんやりと光っていき、切断されている腕と足がほんの数ミリ再生していった。
「……よし、これで大丈夫です。あとはゆっくりと腕と足が治っていくので気長に待っていてくださいね?」
「わかりました、ありがとうございます魔術師さん」
シオンにお礼を言った怪我人が付き添いの人と共に帰っていくと、シオンが次の怪我人に取り掛かる前にラオレットがシオンに質問していく。
「帰っていきましたね。それでは次の怪我人を……」
「あ、ちょっと待ってください、シオンさん」
「うん? どうしたの、ラオ君?」
「あの人の腕と足、どうして一度に完全再生しなかったんですか? すぐに完全再生させてあげた方が良いような気がするんですけど?」
ラオレットの質問を聞いたシオンは良くある質問だといった感じでこの質問に答えていく。
「ああ、そのことね。一度にすべて再生させると本人の体に掛かる負担が大きすぎるの。なかにはその負担に耐えられずに気絶する人もいるんです」
「そんなに負担が掛かるんですか!?」
「掛かるのよ。だから再生治療魔法を使える魔術師はみんなゆっくりと、少しずつ再生させるようにしているの」
シオンはラオレットの質問にこのように答えていった。
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