第28話 シオン、村人達の治療を始める

ラオレットが連れてきた怪我人を見たシオンは、すぐに治療を始めなければいけないもの達と多少なら後回しにしても大丈夫そうなもの達に分けていく。

その作業をラオレットと手分けして行ったシオンが怪我人達の治療を始める。


「……う、うぅ……」


「大丈夫ですよ、すぐに治りますからね~」


「……う、うぐぅ……」


「……ここの怪我が一番深いか……それならここに集中させて……さらにここ以外の箇所も忘れずに……」


「……うん? おう?」


「どうでしょうか? 傷跡はすべて塞がったはずですが?」


「お? お? 痛くねえぞ!? 怪我が全部治ってる!?」


「……その様子なら大丈夫そうですね。それでは次の方の治療を始めます」


「はい、シオンさん」


「次の方は……片腕と片足を失っていますねぇ……」


「……こんな状態なら死んじまった方がマシだ……魔術師さん、どうか一思いに楽にしてくだせえ……」


「……」


「シ、シオンさん……」


怪我人の容態にラオレットが激しく動揺するなか、シオンは怪我人の状態をよく観察していき、なにかをぶつぶつと呟き始めた。


「……シオンさん?」


「うーん、どうするか……もしも腕や足が残っていたら繋げれば良いだけなのだけど……腕や足がなかった場合は再生させるか、それとも義手と義足にするか……」


「……あの、シオンさん? もしも~し?」


「どれを選ぶにしても本人の意見を聞くのが先、か……すみません、少しよろしいでしょうか?」


「……ん? どうしたんだ?」


「あなたの腕と足を治すのに三つ方法があるのですが、どれが良いかを相談したいのです。協力していただけませんか?」


シオンの発言を聞いた怪我人が目を丸くしてシオンに聞き返す。


「……え? 治すのに三つ条件がある? 条件って、どんな条件ですか?」


「落ち着いてください、聞き間違えています。条件が三つあるのではなく、治す方法が三つあると話したのです」


「ああ、申し訳ありませんでした、魔術師さん。話が理解できなくてとんでもないことを言ってしまいましたよ。それで三つの方法というのは?」


シオンの話を正確に理解した怪我人に方法について尋ねられるシオンは、その三つの方法について優しく説明していく。


「一つ目の方法なのですが、あなたが失った腕や足はまだどこかにありますか? あるようなら元通りに繋げますが?」


「……腕や足は……もうわかんねえっすよ……」


「そうですか。それでは二つ目の方法ですが、あなたの腕と足をもう一度生やそうと思っています。ただしこれは完治するまでに時間が掛かります」


「……そうですか」


「最後の三つ目になりますが、義手と義足という機械の腕と足を取り付けようと思います。ただしこちらは定期的に義手と義足のメンテナンスが必要になりますが。どれを選びますか?」


シオンはこう言って怪我人に選択を迫った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る