第27話 シオン、村人の治療をしようとする

ラオレットの表情見たシオンはやり過ぎたかもしれないと思ったが、すぐに気を取り直しておしてラオレットに話し掛ける。


「ラオ君になにもなかったならちょうど良い、少し頼まれてほしいことがあるんだけど、頼んでも大丈夫かな?」


「あ、はい、大丈夫です。ただ、あまり難しい頼みごとはこなせないかもしれないので、そのことだけはわかっておいてほしいんですが……」


「それなら大丈夫。頼みたいことは怪我人をさがして、怪我人がいたらどこか広い場所に集めてほしい、こういう簡単なお願いですから」


不安そうに頼みたいことを尋ねたラオレットに、怪我人を探してどこかに集めてほしいと頼んだシオン。

するとラオレットは元気に返事をしてこの場を離れていった。


「ああ、それぐらいなら僕にもできます」


「じゃあお願いしても大丈夫だね?」


「はい、任せてください! 行ってきます!」


「……おお、元気に走っていった。体力が有り余ってるみたいだなぁ……」


ラオレットが走り去る様子をこのように評したシオンに村人達が少しだけ不安そうな表情で話し掛けてきた。


「……あ、あの、少しよろしいでしょうか、旅人さん」


「え? あっ、はい、なんでしょうか?」


「どうしてお連れ様にあのようなお願いごとをしたのでしょうか?」


「あれですか、あれはこの村の人達に怪我人が出ているようなら私が治療しようと思って、あの子、ラオレット君に怪我人を一ヶ所に集めてもらうことにしたんです」


このシオンの考えを聞いた村人達は顔を見合わせて驚き、そのままシオンに治療する人ひとりにつきどれだけのお金を払えば良いのかを、恐る恐る尋ねてくる。

これにシオンは笑顔で答えていく。


「……怪我人の治療を……?」


「はい」


「……そうですか……」


「……あれ? どうかしましたか?」


「あ、いえ、思わず治療費はいくら払えば良いのかを考えてしまいまして……」


「ああ、そういうことですか。それなら心配されなくても大丈夫ですよ」


「え? それはどういうことで……?」


「治療費はいりません。全員無料で治療してあげますよ」


「ぜ、全員無料で!? よろしいのですか!?」


シオンの返答に村人達が驚愕するなか、シオンはさらに言葉を続けていく。


「ええ。お金なら必要ないぐらい持っていますし、この村はゴブリン達の襲撃を受けたばかりでしょう? そんな村に負担を掛けるようなことをしたくはないですから」


「そ、それは確かにそうなのですが……しかし……」


「そこまで。ラオレット君が怪我人を連れて戻ってきましたから」


シオンはそう話して村人達の言葉を止めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る