第19話 シオンとラオレット、出発する

ラオレットから手を離したシオンは、ラオレットが落ち着くのを待って説明の続きを始める。


「どうかな、少しは落ち着いたかな?」


「……はい、ありがとうございます」


「うん、それじゃあ続きを話していくわね」


「はい、お願いします」


「うん。それでさっきは前に乗った時の話をしたから、今度は背後に乗った時のメリットとデメリットを話しましょう」


「はい!」


「背後に乗った時のメリットは私がすぐ前にいるから強風をまともに受けなくてよくなることだね」


「ああ、そうなるんですね。それならそんなに危なくないということですかね? もしそうなら背後に……」


シオンの説明を聞いたラオレットがそう判断して言葉を発した次の瞬間、シオンがデメリットについて話し始めた。


「まだデメリットを話してないからすぐには決めない方が良いと思うよ。それでデメリットなんだけど、私が前にいるからもし万が一ラオレット君が落っこちた時に私が気付かない可能性があるということだね」


「……え!?」


「だから最悪の場合、落っこちたラオレット君が空を飛ぶ私のあとを全速力で走って追いかけてくる、そんな状況になる可能性があるってことになるんですよね」


「……」


「……あれ? ラオレット君、大丈夫ですか?」


自身の説明を聞いて無言になったラオレットの顔を覗き込みながら問い掛けるシオンに、ラオレットがハッと息を飲んでシオンの問いに答える。


「……あ、はい、大丈夫です……ちょっと落ちた時の想像をしていただけですから……」


「そうなんですね、それなら大丈夫ですね」


「ええ、はい……あははは……」


乾いた笑い声をあげたラオレットに、シオンがどちら側に乗るかを尋ねていった。


「それじゃあラオレット君」


「あ、はい、なんでしょうか?」


「そろそろ決めてもらおうと思います。前に乗るか背後に乗るか、ラオレット君はどっちが良い?」


「……そうですねぇ……もし万が一落ちた時のことを考えると、風が強かったとしても前に乗った方が良い気がしますね……」


「それじゃあ前にする?」


「……はい、前にします」


「わかったわ。それじゃあラオレット君、前にどうぞ」


ラオレットの選択を聞いたシオンがラオレットに手を差し出す。

ラオレットはその手を掴み、シオンの前に座っていった。


「それじゃ出発するわね、ラオレット君」


「はい、お願いします、シオン様」


「一応普段よりもスピードは落とします。それでも風が強いようなら遠慮なく言ってくださいね?」


「わかりました」


「ではそろそろ出発します。皆さんお元気で」


「はい、シオン様もお元気で」


シオンが団長や商人達に挨拶をしたあと、ラオレットも団長に挨拶をしていく。


「団長さん達もお元気で」


「ああ、お前もな、ラオレット」


「それで挨拶は大丈夫? ラオレット君」


「はい、大丈夫です」


「それじゃあ行きます! ラオレット君、しっかり掴まっていてくださいね!」


挨拶をしたラオレットに確認を行ったシオンが出発すると皆に告げた。

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