第18話 シオン、ラオレットに説明する

箒に乗ったシオンは穏やかに微笑みながらラオレットに手を伸ばす。


「はい、ラオレット君」


「え、あ……は、はい!」


「うん。それじゃあ先に選ばせてあげるわね」


「……選ばせてあげる? それはどういうことですか?」


「箒に乗る位置よ。私の前に乗るのが良いか、私の背後に乗るのが良いか。さあどっち?」


「え、えーと……」


シオンに尋ねられたラオレットはその一言を発したあと、どちらを選ぶかで悩み始めた。

その様子を見たシオンは、さすがに判断材料がなさすぎたかと反省してそれぞれのメリット、デメリットについて話し始める。


「……悩んでいるわねぇ」


「あ、ごめんなさい!!」


「良いのよ、詳しい説明しないまま尋ねた私がいけないんだから」


「す、すみません……」


「だから、謝らなくても大丈夫。それよりもそれぞれのメリット、デメリットについて話していくわね」


「あ、ありがとうございます!」


「ふふ。まずは私の前に乗る方のメリットだけど、ラオレット君の目線を遮るものがないから空を飛んでいるっていう感覚を存分に味わえるわ」


「……おお~」


シオンの言葉に、空を飛ぶ感覚を想像して思わず感嘆の声をあげたラオレットに、シオンは続けてデメリットともうひとつのメリットについて話していく。


「それで次にデメリットなんだけど、遮るものがないから飛んでいる時の風のすべてを直接受けることになるわ」


「……え? ……ああ、考えてみればそうなるんですね……」


「そうなるのよ。だから私もできる限り速度を落として飛びつもりではいるんだけどね」


「あ、そうなんですね。それなら少しは安心……なのかな?」


「ええ。それからもうひとつメリットがあるわ」


「……うん? もうひとつのメリット?」


「ええ。そのもうひとつのメリットは、ラオレット君がもし万が一箒から落ちるということになった時、私がすぐに気付けることね」


「え!? 僕が落ちる!?」


シオンの説明を聞いたラオレットが絶叫に近い大声をあげたが、シオンは特に心を乱されることなく説明を続ける。


「万が一の話よ? まず起きない事態だからそんなに心配しなくても大丈夫よ?」


「……そ、そうなんですね……」


「ええ。それじゃあ続けて私の背後に乗った時のメリット、デメリットを話すわね」


「お願いします。あと、それと……」


「うん? なにかしら?」


「……まだ説明が続くのなら、手を離してほしいかな、なんて……」


「え? ああ、ごめんなさいね?」


顔を真っ赤にしてお願いしてくるラオレットに、シオンは謝りながら手を離していった。

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