第20話 シオンとラオレット、空を飛ぶ
「掴まりました! お願いします、シオン様!」
シオンの声掛けに力強く答えたラオレットを確認したシオンが箒を浮かばせていく。
「……おお、浮いていく……」
「浮いていくだけじゃないよ、すぐに飛ぶからね? さっきも言ったけど、しっかり掴まっていてね?」
「……わかりました!」
ラオレットの返事を聞いたシオンが本格的に飛んでいった。
「これも何回も言ったけど、出発するよ!」
「……お願いします!」
「よし、行きます! 皆さんさようなら!」
「さようなら!」
「ああ、さようなら!」
商人達や団長達に最後の挨拶をしたシオンがついに箒を発進させる。
そうして発進した箒は始めこそ時速30キロ程度だったが、すぐに速度を上昇させていき、時速約70キロになったところでシオンがラオレットに問い掛けた。
「ラオレット君、どうかな? このぐらいならまだ大丈夫かな?」
「……はい、なんとか大丈夫です、シオン様」
「そう、それじゃあもう少し速度を上げても大丈夫かな?」
「……え? ……それは……」
「……うん、わかった。それじゃしばらくはこの速度で移動するわね」
「……ありがとうございます」
「それでラオレット君が慣れてきたら、その時に速度を上げていくからね?」
「……はい、わかりました……」
シオンのスピードアップ確認に少しだけ嫌そうな表情を見せたラオレットに、シオンはラオレットが今の速度に慣れるまではスピードアップはしない、ただしラオレットが速度に慣れたらスピードを上げると宣告した。
こうして時速約七十キロで三十分程度飛び続けたシオンは、適当な平原を見つけたところでラオレットを休憩させるために降りていった。
「さて、どうだったかな、ラオレット君? 空を飛ぶっていうのは?」
「……気持ち良かったのは確かです。でもそれと同じぐらい怖かったですね……」
「ふむ、なるほどね。やっぱりラオレット君自身の力で飛んでいないからそう感じるのかもしれないね」
「そういうものなんでしょうか?」
「多分だけどね」
ラオレットの返答にそう返したシオンが、とある相談を行うためにラオレットに話し掛ける。
「ところでラオレット君、ひとつ決めたいことがあるのだけど、その相談を始めても良いかな?」
「え? あ、はい、大丈夫ですけど、なにを決めるんですか?」
「うん、それはね」
「はい、それは?」
「お互いの名前の呼び方よ」
「はぁはぁ、なるほど……え?」
シオンの発言を聞いたラオレットが納得しかけたところで我に返る。
そんなラオレットにシオンはもう一度同じことを話していった。
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