第12話 シオン、盗賊団と別れる
自身の書いた書状をなんとも言えない表情で眺める盗賊団一同にシオンは続けて声を掛け、あるものを手渡した。
「多分書状だけで大丈夫だとは思うのですが、万が一駄目だった時のことを考えてこれを渡しておきます」
「……ん? なんだこれは?」
「それは私への緊急連絡手段です」
「……どう使うんだこれ?」
「そこのスイッチを押すだけです。そうすればすぐ私のところに連絡がきますから」
「ふーん……わかった、これももらっておくよ」
「そうしてください。そして書状で駄目だった時はその緊急連絡手段を使ってください。できる限り急いで帰り、国王陛下に説明しますから」
「……わかった、その言葉を信じたぜ」
「ありがとうございます」
ひとまずシオンの説明を受け入れ、シオンを信じると話した盗賊団メンバーにシオンは感謝の言葉を伝えて深く頭を下げていった。
そうしてシオンは盗賊団に別れを告げていく。
「それではそろそろお別れにしましょうか?」
「うん? もうか?」
「ええ。皆さんも早くに兵士になって、これからの生活を安定させた方が良いと思ったからこう言ったのですが……」
「そうか……それもそうだな……」
「そうでしょう? ですから……」
「ああ、ここでお別れだな」
「はい」
「……ちょっと残念だな、もう少し一緒にいたかった気もするし……」
「これから兵士になる予定でしょう? そうなったらまた話す機会もありますよ」
「……そうか?」
「そうですよ」
「そうか……それならここでお別れだな」
「ええ。皆さんお元気で」
「そっちもな。それじゃあな!」
シオンにそう挨拶した盗賊団は、すぐに城に向けて歩きだした。
その様子を黙って見つめるシオンに、離れた場所から状況を見守っていた商隊の人間達がやってきて話し掛けてきた。
「……あの、少しよろしいでしょうか?」
「……え? ああ、さっきの商隊の皆さんですね。はい、大丈夫ですよ」
「そうですか。それではまずお礼を言わせてください。ありがとうございました」
商隊のまとめ役らしい男がそう言って頭を下げると、商隊の一同も揃ってシオンに頭を下げてくる。
これにシオンは照れ笑いをしながら商隊のまとめ役と話していく。
「いえ、そんなに感謝されるようなことはしていませんよ?」
「そんなことはありません。あなた様がいなければ我々は今頃どうなっていたか……最悪の場合、皆殺しにされていたかもしれませんし……」
「……ああ、その可能性もなくはなかったのか……」
まとめ役の発言を聞いたシオンはそう言って少し考える表情を見せる。
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