第5話 シオン、旅に出る

国王に尋ねられたシオンはしばらく考えると、頭を横に振りながら答えていった。


「……今はありません。そのうち聞きたいことが出てくるかもしれませんが、その時はまたポストマンに頼もうと思います」


「そうか、わかった。それでは下がると良い。旅の準備で忙しくなるだろうしな」


シオンの返答を聞いた国王がシオンにそう話し掛けたのだが、直後のシオンの行動に国王や側近達はまたしても頭を抱えることになる。


「いえ、もう出発しようと思います。その方が早く情報収集ができるようになりますし」


「え? いや、待て、シオンよ、旅に出るには様々な準備が必要で……」


「それでは出発します! またお会いしましょう、陛下! 皆さん!」


シオンはこのように話して謁見の間にいる全員に別れの言葉を告げると、たまたま開いていた窓のひとつに向けて走りだし、そこから外に飛び出していった。


「……ここは五階なんだが……」


「……飛び出していったのがシオン殿ですから、大丈夫だというのはわかっているのですが……見ていて気分の良い行動ではありませんね……」


シオンの行動を目撃した国王達がこのように話して心境を語るなか、飛び出していったシオンは自由落下をしながら順番に魔法を唱える。


「箒、取り出し! からの高速飛行! 行っけー!!」


落下しながら魔法を使い、なにもない場所に空間の裂け目を作り出し、そこから箒を取り出すとその箒に乗ると高速で空を飛び、あっという間に王城から離れていった。

そうして一時間ほど空を飛んだシオンの耳に、どこからか悲鳴と叫び声が聞こえてきた。


「結構離れたなぁ……最初はどの国から行こうかなぁ……って、あれ? 今なんかどこかから声が聞こえたような……?」


このように呟いたシオンは、飛行速度を落として地上の音に対して意識を集中していく。


「……こっちじゃないな……ということはあっちか……? ……うん、間違いなさそう」


あちこちを見回して悲鳴と叫び声の出どころをある程度特定したシオンは、その方向に向けて飛び始める。

そうして悲鳴と叫び声の出どころに到着したシオンは、ここでなにが行われているかを目撃することになった。


「あれは……商隊? ということは商人かな? それにその後方に……あれは盗賊? それも複数人いるな。そうなるとこれは盗賊団が商隊を襲撃している現場か」


「ひ、ひいぃ!! 誰か、誰か助けてー!!」


「助けなんてくるわけねぇだろ! さっさと商品全部と有り金全部俺達によこしな!! まだ死にたくねぇだろ!?」


盗賊団の団長らしき人物が商人達にそう叫んでいった。

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