第3話 朱雀、初仕事?
「とにかく、美波くん。さっそくアイドルとしての仕事を与えるわね」
――それは急な話だった。
前回軽い挨拶の後、名刺なりなんなり受け取り、その日は終わったのだが……
翌日、さっそくそんな連絡が来たのだ。
まだデビューもしてないのにいきなり仕事?神邏は意味がわからなかった。
どうやら社長が元々もらってた仕事に無理やり神邏をぶっ込んだらしい。
タレントやアイドルの指定がなかったからできた芸当。
ただ、無名どころか昨日雇ったばかりの新人を使うのは、相手に失礼ではないかと神邏は思った。
そもそも少しの間やるってだけで、雇われたつもりも当人にはないのだが。
……とはいえ仕事の内容によるのだろうが。
神邏は聞く。
「……仕事とは?」
「雑誌のアイドル特集ページ」
(……それ無名の仕事か?というか特集なのに、指定がなかったとはどういう事だ?)
理解の範疇を越えていた。
「コネとか使って作った仕事なんだからしっかりやってね。ちゃんとミズチに言われた報酬出すし」
苦労して手に入れた仕事ならなぜ、自分に回すんだと思う神邏。
「なんか疑問に思ってそうね?」
図星。
「直感よ。あんたはうちの会社の救世主になる。そんな気がしたから、優先的に大きい仕事を回すことにしたの」
(救世主……?荷が重いんだが)
救世主という言葉から察するに、この会社、経営が少し傾いてきているのだ。
それなりのアイドルやタレントは抱えてはいるものの、大ブレイクしてるような若手などは皆無。
ゆえに新しい風を欲していたタイミングで現れた、神邏に期待してるらしい。
「とりあえず、行って見ましょうよ神邏くん」
ちゃっかりマネージャー行する気なルミアがそこにはいた。
とはいえ右も左もわからない二人だけでは不安と、慣れてる女性スタッフを連れ、さっそくその雑誌の編集部へ向かう事に。
♢
「待ってたよ~ツ・バ・サの方々だね~」
編集長らしき陽気な方が神邏達に言った。
神邏は会釈すると同時に思う。
(ツ・バ・サって言うのか会社の名前……)
そもそも所属事務所名を今知るというグダグタッぷり。
こんななにもわからない自分がやってけるわけないと思う神邏。
……なぜか周囲がざわざわしてる。疑問に感じる神邏。
明らかにその周囲の視線は自分に向いてるからだ。
(わけのわからない小僧を連れて来るなって、皆さん怒ってるのかな?……申し訳ない)
神邏はそう感じてるが、おそらく違う。
周囲の編集部の女性陣は明らかに好意的な目線を送っていたからだ。
見とれてる方も多いし。
「ふむう……社長さんが売り出したい子を使いたいと言ってたけど、想定以上だね~これは……よし、特集組もう!表紙にしてもいいよ!」
「ありがとうございます!うちの美波も喜んでます!」
ついてきたスタッフの方が代わりにお礼を言ってくれた。
……特集?……表紙?
「……え?」
つづく。
――神邏ファンの日常のコーナー。
「え?特集組むんですか!?じゃあそのページ切り抜きしなきゃ!雑誌も最低三冊買わなきゃ!」
よく言う読む用、保存用、布教用ですか?
「出来しだいですけど、部屋に貼る用、眺める用、保存用です」
あ、布教はしないのね。
「別に人気者になってほしいわけではないですし。泥棒メス猫が現れると嫌ですし、神邏くんは私だけのアイドルでいてほしいので~」
じゃあアイドルなんてやらせるなよ……
「だってグッズほしいんですもん!」
ちなみに貼るってのは……
「私の部屋、神邏くんの写真だらけなんです」
やっぱストーカーになりそう……
コーナー終わります。
次回、朱雀、写真撮影する。
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