第4話 朱雀、写真撮影する
「はーい、笑顔笑顔!」
神邏はぎこちなく笑顔を作る。
スーツを着て、単独写真を撮影中。
小さなレモンを持って軽くポーズをとっている。
(なんか、めちゃくちゃ恥ずいんだが……)
周りには人がいっぱいいる。カメラマンに社長、スタイリスト、などなどから視線を向けられている。
目立つのが嫌いなこの男にとってはかなりの苦痛。
(というか、こんなわけのわからない新人の写真撮影に人いすぎじゃないのか?これが普通なのだろうか……?)
普通ではない。
この男のあまりにも優れた容姿に人が集まっているのだ。
会社の女社員の方々は一目見ようとこぞってやってきているのだ。
無名とはいえ、誰もが振り向く国宝級の美男子、女性ならそりゃあ見に来るというものだ。
キャーキャー騒がしく、すでにファンの出待ちみたいな光景。
そんな事とは当人はつゆ知らずなのだが。
「これだけの素材……一枚そこらじゃもったいないかも」
と、編集長がもらす。
「ちょっと!モデルの服装ありったけもってきて!あとメイクも!」
(メイク!?)
トントン拍子に事が進む。
おかしい……元はただの雑誌の1ページの仕事のはずだ……
なぜこんな大がかりに?と、神邏は思わずにいられなかった。
髪型のセットくらいなものだったのに、そこから先は……
メイク、着替え、メイク、着替え、着替え、着替え、着替え。
着替えの合間には撮影ももちろんおこなっている。
気分はお人形さんだった。
着せ替えさせられるマネキンとも言える。
モデル業なら当然だろうが、おしゃれすらろくにしない神邏にとっては、そんな気分になるのもおかしくはないのだ。
服装もしゃれた洋服から、着物、コート、ジャージ、そしてどこから持ってきたとツッコミたくなるような、洋風な王子様が着てるような服装まで。
写真も何枚とったのだろうか、皆目検討もつかない。
「はい!最後にウインク!」
(は?)
理解不能だった。
(ルミアみたく、かわいい女の子ならいざ知らず、男、それも俺のウインク?どこに需要あるんだ)
「早く!ハリーアップ!」
急かされるも、したこともないから困惑。
そんな神邏に、マネージャーとしてこの場にいるルミアが、落書き帳のようなものに文字を書き、カンペを作って見せてきた。
『神邏くん頑張って』
ルミアはニコニコしてる。
はあっ……とため息が漏れるも、あんな笑顔で応援されたら無下にもできない。
神邏の甘さが出る。
そしてカメラ……ではなくルミアに向けて……片目閉じ、もといウインクをした。
「「ズキュウーーーーン!!」」
擬音をなぜか声に出し、その場にいた女性人は胸を撃たれたかのようにドサドサ倒れ込んだ。
神邏のウインクにやられたのだ……
「……え、何事?」
無論当人は無自覚。
絶世の美男子のウインクはギャグにはならなかった。
――一方、ルミアはギリ失神を免れたが、鼻血を垂らしてた。
――つづく。
――神邏ファンの日常のコーナー。
マネージャーとして潜りこんで何をしたの?
「とりあえず、使わない写真を拝借しようかと……」
あ、そうか。全ての写真を雑誌にのせるわけじゃないもんね。
「はい。……ただ、」
ただ?
「この一件でファンになったメス猫が大量に溢れまして……その、取り合い騒動になりました」
マジ?で、神条さんの結果は?
「数は誰よりも手に入れたはずです……でも……くっ、全て手にいれたかったから悔しいです!」
机バンバン叩かないで~机壊れる。というか本当に悔しそうだね。
「当然ですよ!血涙でますよ!」
いやいや……こりゃ本格デビューしたらどうなることやら。
コーナー終了。
次回、朱雀、女装させられる。
え?
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