第24話 末っ子、大好きな友達 ※ベロ視点
さっきまでは普通だったココロが、急にふらふらとしだした。
僕は急いでココロに近づく。
魔力を使い過ぎると、命が危ないと僕達は本能的にわかっている。
ただ、ココロはそれを知らないのか、おててさんにお願いごとをしてそのまま倒れていく。
僕達は体でココロを支える。
『おい、大丈夫か!?』
『ココロ! 起きて!』
『私を置いていかないで!』
もたれているココロの体はとても軽かった。
ちゃんとご飯を食べていなかったのだろうか。
一方、お願いされたおててさんはシュバルツを必死に治療していた。
おててさんもココロが気になるのだろう。
チラチラこっちを見ているような気がした。
でも今はシュバルツを治すことを優先している。
だって、ココロのお願いごとだもん。
「ココロを宿屋に運ぶぞ!」
マービンはしばらくシュバルツの様子を見ていると、問題ないと思ったのだろう。
「おててさんシュバルツを頼む」
おててさんは親指を立てていた。
本当にあいつは頼りになる。
マービンはココロを抱えて宿屋に移動する。
『ココロオオオオオオオ!』
僕達はどうすれば良いのかわからず、その場であたふたとしていた。
宿屋には入れないし、僕達に何かできることがないのだろうか。
昨日見た夢が脳裏にチラつく。
それに兄さん達も同じ夢を見たのだろう。
今まで姉さんが置いていかないでって寂しそうに泣くところを見たことがなかった。
ココロがいなくなる。
それは僕達にとって、あの夢の中のご主人様がいなくなった時と同じだ。
だって、あの時見た夢は昔の僕達だったから……。
はっきりした記憶はないけど、僕達は心というご主人様と毎日遊んで楽しかったことだけは思い出した。
「おい、お前達も中に入ってこい!」
しばらくすると、マービンが僕達を呼びに来た。
『いいのか?』
『いいの?』
『うっ……』
姉さんなんかさっきからずっと泣いている。
鼻水が僕にかかるぐらいの勢いだ。
いつも淑女とか言っているけど、そんなかけらもない。
「ああ、宿屋に許可は取ったからな。とりあえず、お前達の怪我の処置もしないといけないからな」
そういえば、僕達も剣で斬られていたのを忘れていた。
それだけココロを守ることに必死になっていた。
『そういえばあいつらは!?』
「紅蓮の冒険団か? 気づいた時には逃げちまったよ」
どうやらマービンも彼らを逃してしまったようだ。
ただ、馬やテイマーの魔物に攻撃を加えたことが、冒険者として問題になると言っていた。
「シュバルツも大丈夫そうだな?」
グチャグチャとされていたシュバルツは、次第に息がゆっくりとして落ち着いてきた。
おててさんもちゃんとココロの願いを叶えたようだ。
最後にペッタンってすると、おててさんは地面の中に消えていった。
本当にココロの魔法は不思議だね。
「じゃあ、いくぞ!」
僕達はマービンに言われるがまま宿屋に入っていく。
宿屋の人達は僕達をジーッと見つめてくる。
いつなにかしてきても大丈夫なように警戒しているのだろう。
僕達は襲う気もないのにな。
「さっきの子どもがテイムしているミツクビウルフだ」
「やっぱりミツクビウルフなのか!?」
「ほぉー、初めて見たけど本当に顔が三つもあるんだな」
どうやら警戒していたというよりは、初めて見る僕達に興味があって見ていたようだ。
『ふふふ、人気者ね』
その視線に、さっきまで泣いていた姉さんは少し嬉しそうにしていた。
やっぱり体が一つになっても、姉さんのことはよくわからないや。
「とりあえず怪我の治療をしないといけないね」
恰幅が良い女性が僕達に近づいてきた。
『もう血は止まっているから大丈夫だぞ!』
『それよりもココロに会わせてよ』
『ココロ……』
あっ、僕がココロって言ったから、思い出してまた姉さんが泣き出した。
単にチヤホヤされてココロのことを少し忘れていたのね。
僕はココロのことをずっと忘れたことがないからね!
「魔獣が話してる……」
「ああ、ミツクビウルフって話すからね」
「うえええぇぇぇ!?」
どうやらここでも僕達が話せることを知って、驚かせてしまったようだ。
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