第25話 末っ子、友達に会いにいく ※ベロ視点
「おいおい、お前らどこに行くんだ?」
「怪我の治療が先よ!」
僕達は色々聞かれる前に、逃げるようにココロが寝ている部屋に向かった。
そんなに怪我は酷くないもん!
今はココロと一緒にいる方が大事だ。
マービンが宿屋の店主に頼んで、今日はココロと一緒に寝かせてくれることになった。
だからココロの匂いを辿って探していく。
『ここにいるぞ!』
『僕が先に見つけたんだ!』
『体が一つなんだから、みんな同じじゃないの……』
さっきまで泣いていた姉もどこか元気になっていた。
ココロの匂いが近くにあるってだけで安心なんだろう。
ただ、一つ問題があった。
『おい、これはどうやって開けるんだ? 壊していいのか?』
『さすがにそんなことをしたら追い出されるよ』
『ならどうやって開けるのよ!』
すぐ近くにココロがいるのに、変な板みたいなやつに邪魔されている。
いつもならすぐに壊すけど、追い出されたらココロと一緒に寝ることもできない。
『どうするんだよ!』
『ココロオオオオオオオ!』
『邪魔なのよ!』
僕達がジタバタしながら叫んでいると、呆れた顔でマービンがやってきた。
「取っ手を持って押さないと開かないぞ」
『はぁ!?』
『わぁ!?』
『知っているわよ』
僕達は脚に力を入れて立ち上がる。
取っ手を掴もうとするが中々難しい。
『なっ……ツルツルするぞ!』
『誰が引いているの? 姉さん?』
『私じゃないわ!』
『兄さんが押そうとしないと開かないよ?』
『えーっと、押すってどっちだ?』
『なら、動かそうとしないでよね!』
僕と姉さんが扉を押そうとしても、兄さんが引いていた。
結果、どっちにも動くことなく、取っ手を持ってもツルツルして扉が開かない。
「ミツクビウルフって立てるんだな……」
扉の前でカリカリとしている僕達を見て、マービンが開けてくれた。
『サンキュー!』
『ありがとう』
『もう少し気が使えたら紳士ね』
お礼を伝えてすぐに部屋の中に入る。
ベッドの中央にはココロが眠っていた。
『ワオオオオオン!』
『ココロオオオオオオオ!』
僕と兄さんはついつい嬉しくて遠吠えをしちゃった。
『うるさいわね!』
すぐに姉さんに怒られて口を閉じる。
さっきまで泣いていたのに、安心したのかいつもの姉さんに戻っていた。
迷惑をかけたらまた馬小屋に追い出されるからね。
僕達はベッドの上に飛び乗ろうとしたが、途中で体が止まった。
『私達が乗ったら壊れるかもしれないわ』
『ああ、そうか……』
『ココロ……』
僕達はお預け状態となってしまった。
部屋の中をウロウロして必死に考える。
だが、僕達は分かれることも小さくなることもできない。
『あっ、これなら大丈夫かな!』
僕は兄さんと姉さんに小さな声で伝える。
『おっ、それならいけるな!』
『さすが弟ね!』
僕達はベッドに近づいた。
「あいつら何をする気だ?」
ベッドのシーツを咥える。
『せーの!』
僕の掛け声とともに一気に引っ張る。
すると、シーツとともにココロがベッドから落ちてきた。
『へへへ、これなら一緒に寝られるね』
僕達の体の上にココロが寝ている。
昨日みたいに僕のふわふわな体の上なら、ベッドの上よりは寝やすいもんね。
さっきできた傷に少し当たって体が痛いけど、そんなのは気にしない。
むしろ問題なのは……。
『おい、弟よ! ココロに顔が近くないか? それに邪魔だ!』
『真ん中だから仕方ないよ? それよりも近いのは姉さんだよ?』
『これはこれで大変なのよ。頭を下げたらココロを潰しちゃうのよ?』
ココロは前脚の付け根を枕にしているからね。
どうしても姉さんが頭を上げたままじゃないと寝られない。
それでも一緒にいられるだけで、僕達は幸せで温かい気持ちになった。
ココロ、早く元気になってまた遊ぼうね!
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