人生で初めてCDを買った。
人生で初めてCDを買った。
僕が中学生のころには音楽はサブスクで聴くのが当たり前になっていて、CDを買うというのは珍しいことだった。音楽にハマっていたわけでもないし、聴きたい音楽は基本的にサブスクですべて聴けてしまうから、CDが欲しいという気もあまり起きなかった。まさに、現代的な音楽への接し方だと思う。そんな僕が、二十歳になって、初めて、CDを買った。大好きな音楽を見つけ、僕はその音楽に実体が欲しくなった。電子書籍と同じような違和感があったのだ。データという空虚なものではなく、手に触れられるような、実体が欲しくなった。そして僕は、一番好きなアルバム、zazen boysが最初に出したアルバム「zazen boys」を買おうと、book offなどを巡った。通販なら簡単に買えるけれど、僕は人生で最初に買うCDだから、店に行って、手に取って、レジに持っていき、買いたかったのだ。しかし、僕が欲しいアルバムは中々見つからない。そんなに有名でないのは分かっていたけど、本当にどこにもなくて驚いた。池袋のbook offならさすがにあるかな、と思ったがそんなことはなかった。欲しいアルバムどころか、zazen boysのCDが何もないのが当たり前なのだ。中々見つからなかったのだが、昨日、やっとある中古CDショップで、zazen boysのCDを見つけた。僕はまず、欲しいアルバムであるかどうかという前に、店にzazen boysのCDがあることに感動した。一枚だけだった。その一枚を手に取ってみると、なんと、その一枚が、僕がずっと欲しかったアルバム、「zazen boys」だったのだ。運命だと思った。僕はついに見つけたその一枚を、しばらく眺めていた。ついに、僕はすきなアルバムの、実体を得たのだ。「Fender Telecaster」に始まり、「開戦前夜」を間に挟み、「自問自答」で終わるこのアルバムは、音楽に対する真剣なまなざしと、あふれ出る焦燥感があって、構成がきれいで、ほんとうに好きなアルバムだ。しかも、このアルバムが出たのは、僕の生まれ年と同じ2004年だ。zazen boysの最高傑作とは思わないけれど、やっぱり、このアルバムが一番好きだ。僕はついでに、number girlのCDも探してみた。Number girlも数はそんなに多くない。ライブCDなどを除くと、あるのは一枚のアルバムと、一枚のシングルのみだった。そして、それは僕がnumber girlで一番好きなアルバム「num heavymetallic」と、「透明少女」のシングルだった。ほんとうに、ちょうどほしい二枚だったから、その日は、何か運命の力を感じざるを得なかった。そうして、僕はその三枚を買った。
これが、僕が人生で初めてCD買った話です。
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