小説は文章、映画は構図とカメラワーク

 小説は、まず第一に文章、それが最も私が重視する点であり、それ以外の点はあまり気にしていないと言っても、過言ではないかもしれない。どんなに内容が良かったとしても、文章がよくない、または、あまり好きではない作品は読む気になれない。私が好きな作家、ナボコフ、カポーティ、梶井基次郎、谷崎潤一郎という名を上げれば、私がどういう本の読み方をしているかが、わかってもらえると思う。小説というものは、文章のみによって表現される世界だから、その文章がすべてだと、私は思う。私は、ただ、密度の高い美しい文章で私を満たしてくれるような、そんな小説が読めれば幸せなのである。最近、私は精選女性随筆集を読むのが好きなのだが、そこではいくつもの美しい文章に出会うことが出来る。話の構成はあまり気にしていない。というより、むしろ綺麗な起承転結がない小説の方が私は好きで、私は、話を読みたいのではなく、作者の感性と、その感性を綺麗な言葉に変換したものを読みたいのだと思う。そういう意味で、私が求めているものに驚くほどぴったりと寄り添っているのが梶井基次郎で、今後、梶井基次郎以上に好きな作家が現れることはないだろうと、私は思う。梶井基次郎の、題材、感性、文章、どれもが好きで、初めて「檸檬」を読んだときの衝撃は忘れられないし、それが文学に興味をハマるきっかけでもあったので、私は文学というものに「檸檬」のようなものを求め続けているように思う。

 そして、最近、映画を見ている中で、小説で文章を最も重視しているように、映画では構図とカメラワークを最も重視しているということに気がついた。構図がいい映画は、見ていて飽きない。私は「暗殺の森」や「8 1/2」が好きで、どちらも、ずっとかっこいい構図で撮られていて、見ていて飽きることが無い。どちらの映画も話としてはわかりにくく、すんなりと理解できるものではない。それでもこの二つの映画が好きなのは、小説と同じような好みを、映画でもしているのだと思う。

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