コールドムーン

 昨夜は、今年最後の満月だった。その丸々とした満月は、寒い夜空の中でぴかぴかと輝いていて、冴えていて、眩しかった。この、今年最後の美しい満月を見ることができてほんとうによかった。僕は、公園のベンチに座って、その満月を眺めていた。葉がわずかに残った木の、右側にある太い幹と、その幹から伸びた、右側に緩やかに曲がった左側にある太い枝に囲まれて、満月は輝いていた。満月が動くにつれて、細い枝と重なり、満月に線が書かれたような光景になった。公園には、子供が一人いた。僕の目の前になるブランコで、僕に背中を見せる形で、ただ、ブランコを漕いでいた。夜、一人でブランコを漕ぐなんて、なにか、嫌なことでもあったのだろうかと、勝手に想像したりした。ブランコを漕ぎ終わった子供は、ベンチに座り、頭を抱えていた。とても寒い夜なのに、その子供は薄着なように思えた。頭を抱えている姿を見て、やはり、この子供は、嫌なことがあったのだろうと思った。うつむいていたあの子供は、美しい満月をみることができただろうか。子供のころは、小さな出来事が、人生を揺るがす大きな出来事のように感じられて、あらゆる物事に感情が大きく揺さぶられていたのを思い出す。今の僕は、良くも悪くも落ち着いてしまったのだと感じた。あの子供が、一人で悩みを抱えることなく、誰かに相談できると良いのだがと、勝手な心配を抱いてしまった。

 午後十一時ごろに、僕はいつのまにか寝てしまって、午前三時ごろに僕は目を覚ました。すぐに寝ようと思ったが、中々眠れなくて、僕は、今日の満月をカメラで撮ろうと思った。カメラをしばらく使っていなかったせいで、バッテリーが切れていて、バッテリーを充電し、カメラに挿した。窓を開けると、凍てついた空気が僕の肌を刺した。冷たい夜空には、眩しい満月と、きらめく星があった。星がとてもきれいだった。昨日の夜は、気温が零度にまで下っていたらしい。そんな冷たい空気の中で、僕は美しい満月を写真に収めた。十二月の満月は、コールドムーンというらしい。

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フィルム 文学少女 @asao22

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