幽霊部員、顧問から課題を与えられる

 中学生ちゅうがくせいになり、最初さいしょ定期ていきテストでぼく間違まちがった場所ばしょてしまったとおもったね。じゅくかよっていたあいだ、必死ひっし勉強べんきょうなんかしなくても点数てんすうれていた。でも市内しないじゅうの小学校しょうがっこうから成績せいせきトップの生徒せいとたちがあつまる進学校しんがくこうでは通用つうようしなかった。真面目まじめ勉強べんきょうする習慣しゅうかんまったぼく成績せいせき悲惨ひさんだった。一年生いちねんせいのあいだずっと、したからかぞえたほうが断然だんぜんはや順位じゅんいとおしたさ。

 すっかりやるくしたぼくは、当然とうぜん授業じゅぎょうにもはいらなくなる。やることといったらまどそとをぼんやりながめながら、いまいまかと終鈴しゅうれいるのをつことだけだ。


 勉強べんきょうだけじゃない。部活動ぶかつどうでもぼくはダメダメだった。ぼくはいった学校がっこうではかならなにかの部活動ぶかつどう参加さんかしなければいけないまりだったから、なんとなくカッコいいというだけでふかかんがえなしにバスケットボール入部にゅうぶした。でもそれって自分じぶん球技きゅうぎ致命的ちめいてき下手へたという事実じじつ無視むしした選択せんたくだったね。何事なにごと努力どりょくしなければ上達じょうたつしないというのは真実しんじつだとおもう。だけどぎゃく真実しんじつとはえない。どんなに努力どりょくしても上達じょうたつしないことはあるさ。最初さいしょのうちこそ真面目まじめ練習れんしゅうてたけど、同期どうきとのひろがるにつれてやるくなり、二年にねんがるころには立派りっぱ幽霊部員ゆうれいぶいんさ。


 いま退屈たいくつ授業じゅぎょうえ、終業後しゅうぎょうごはバスケ先輩せんぱいつからないように素早すばや学校がっこう脱出だっしゅつする毎日まいにちだ。だからといってまちあそびにくでもない。学校がっこう最寄もよえきから自宅じたく最寄もよえきまで電車でんしゃってみちせずにかえってる。本屋ほんやるくらいはするけど、あそあるいたりはしない。ただいえ学校がっこう往復おうふくするだけ。


 たまに地元じもと公立中学こうりつちゅうがくった友達ともだちう。小学生しょうがくせいのときはおんなになんかまったく興味きょうみのなかった連中れんちゅうが、クラスの誰々だれだれ可愛かわいいとか、今度こんど女子じょしたちとあそびにくんだとかいうはなしうれしそうにする。男子校だんしこうかよぼくにはえんのないはなしだ。六年生ろくねんせいのときにおなじクラスだった男子だんし女子じょしうでんであるいているのに遭遇そうぐうしたときは、進学先しんがくさきあやまったと心底しんそこくややんだね。(共学きょうがくったからってモテるとはかぎらないだろうって? それはそうだけど……可能性かのうせい問題もんだいだよ)


 そんなわけで今日きょうぼく授業じゅぎょうわるといそあしでロッカールームに直行ちょっこうした。上履うわばきを革靴かわぐつえ、校舎こうしゃようとしたところでうしろから襟首えりくびをつかまれた。

牧野まきの! 今日きょう部活ぶかつサボるだな」

 バスケ部顧問ぶこもん間宮まみや……先生せんせいだ。

「あの……体調たいちょうがよくなくて……」

明日あしたはお祖母ばあさんの葬式そうしきか?」

「えーと……」

「ウチの学校がっこう部活動ぶかつどう内申ないしん影響えいきょうするのってるよな。いくら中高一貫校ちゅうこういっかんこうだからって、おまえみたいにまった部活ぶかつてこないようなやつ高校こうこうにエスカレーションさせるわけにはいかないぞ」

「あの……」

 わけしようとしたぼく間宮先生まみやせんせいさえぎった。

おれおにじゃない。部活ぶかつわりにおれ指定していする課外活動かがいかつどうをこなすなら幽霊ゆうれいにはをつぶってやる」

本当ほんとうですか?」

本当ほんとうだとも。今度こんど日曜日にちようび、ここにいてある場所ばしょって小浪こなみというジイさんをたずねろ」

 そうって間宮先生まみやせんせいりにしたコピー用紙ようしぼくにぎらせた。先生せんせい肩越かたごしにをヒラヒラさせて体育館たいいくかんあるったあとぼくはコピー用紙ようしひらいてみた。そこには「五月一九日ごがつじゅうくにち 佐之島さのしまマリーナ 小浪伝任こなみつてひと」という文字もじと、最寄もよえきから佐之島さのしまマリーナまでの簡単かんたん地図にずかれていた。

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