第5羽 総隊長からの試験
閃と刀舞の間に大きな壁が隔たれる
閃「さぁ、今回の試験はこの壁の
性質を理解することだ、頑張りたまえ」
刀舞「わかりました……」
刀舞(と言ったはいいが……どうしたものか…
性質つったって…
何をすれば良いかわからない…とりあえず…)
刀舞の羽が広がり飛び立つ
刀舞「一番上がどうなってるか見たいな…」
閃「どこに行くんだい?」
壁がより高くなる
刀舞「うおっ!」
刀舞(あの人、壁を上げたな……
そんなに上を見られるのが嫌かなのか?
かといって飛び続けるわけにもいかないし…
降りるか…)
地上に戻ってくる
刀舞(仮に見られたくないとして
何で見られたくないんだ…?)
と考えているうちに壁から手が出てきて
殴りかかってくる
刀舞「うお!……っぶねぇ…」
閃「君が考えてる間にこちらから
好きなだけ攻撃させてもらうよ」
刀舞「んなこと言ったって、
どうすりゃいいんですか!」
閃「それは、君が考えることだ、
殴られたくないんだったら頑張りなさい」
もう一度殴られそうになり
反射で刀舞が腕を掴む
刀舞「よし、掴んだ!……いっ!」
腕を引っ張られ壁に激突する
刀舞(なんだこれ……見た目は液体そのものなのに
触れた瞬間、信じられない程固くなった…!)
閃「あまり長引かれても困る……
あと、2分ほどで良いかな?」
刀舞「え?」
閃「あと、2分で終わらなければ
試験失敗としてクビにさせてもらう」
刀舞「………」
翠花「な…総隊長!相手は今日入ってきた
ばかりの新人ですよ?!
無茶ですよ!」
閃「だからなんだね?
もし仮にこれで彼が失敗したとしても
我々に大きな影響はないだろう?
この位は、してもらわないと」
翠花「ですが!……」
閃「あと、1分!」
翠花「総隊長!」
刀舞(この壁…もしかして……)
翠花「新人に対して無茶を
言わないでください!」
閃「こんなこともできないようじゃ
戦力にもならないと踏んだだけだよ」
翠花「普段はもっと簡単な
内容じゃないですか!」
閃「そんなことを言ってる間にあと30秒だよ!」
翠花「ですから!…」
刀舞「これは、ダイラタンシーですね」
翠花「え?!」
閃「ほう?」
刀舞「確か…水と片栗粉を1:1くらいで合せて作る
衝撃を与えると固まるやつっすよね」
刀舞がゆっくり壁を触り通り抜ける
刀舞「これが俺の答えなんすけど、
どうです?」
閃「………………………」
閃がうつむく
閃「………素晴らしい!」
刀舞「……あざす」
閃「正直、こんな短時間で見破られるとは
思わなかったよ」
刀舞「いえ、総隊長のおかげですよ」
閃「と言うと?」
刀舞「さっき、殴りかかってきたタイミングで
引き抜いてくれたおかげで
通り抜けられるけど壁として
成立するものに絞れたんですよ」
閃「私だけが通れる可能性は
見なかったのかい?」
刀舞「その可能性も十分ありましたけど
総隊長が壁の一番上を見せたがらないことを
思い出しまして」
閃「なるほど、私だけが通れるだけならば
一番上を見せない理由にはならないと」
刀舞「はい、半液体であるダイラタンシー
だからこそ流れ出ているところを
見られるわけにはいかないだろうと」
閃「ふむ、そこまで考えていたか、
素晴らしい!もちろん、今回の
試験は合格だ!エクセレント!
では、私は本当にこれから予定があるから
これで失礼するよ」
閃が少し嬉しそうに事務所の方に戻る
翠花「刀舞くん、
まだ可能性はあったでしょう?」
刀舞「例えばなんです?」
翠花「総隊長が見せてる幻覚とか、
なんだったら、あんただけが通れない
結界とかの可能性もあったじゃない」
刀舞「確かに、その可能性も考えました、
ですけど、正解ってのは疑問に
ぶつけて結論を出さないことには
正解にはなり得ないんですよ」
翠花「良い度胸ね…」
刀舞「それ、喧嘩以外で言ってる人
初めて見ました」
翠花「……とにかく合格ね!
よかったじゃない!」
刀舞「まぁ、試験があるなんて
聞いてなかったすけどね……」
翠花「まぁ、良いじゃないの!
合格祝いでもしましょうか!」
刀舞「なにするんですか?」
翠花「さぁ?」
刀舞「さぁ?ってなんすか、
言い出したのは、翠花さんじゃないっすか」
翠花「どうせ、あのバカが考えてくれるわよ」
刀舞「じゃああの人に任せますか…
…っあ~疲れた…」
~つづく~
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