第4話
「ほら。陸の着替えだよ」
俺は少女用の夏ワンピースを摘んで陸の前でふわっと広げて見せた。白いロングタイプのワンピースが風に乗って部屋を飛んで戻ってきた。その時──陸の黒く大きな瞳にこれまで見たことのない明るく瞬く星が流れたのを俺は見逃さなかった。陸は生まれて初めて海へ辿り着いた少年のように。生まれて初めて宇宙へと飛んだ青年のように。目をキラキラと光らせた。
「りく。着てみよっか」
俺が白いワンピースをパタつかせると陸がいちいち目で追いかけるのが面白くてしばらくワンピと陸で遊んでいたが陸が星の流れる宇宙から大気圏に突入して地球に急降下したので話は先に進む事になる。
「ハァ? はっ、はっ…………ハァ!? ば〜〜っかじゃねぇの!? 誰が着るかよ、そんなヒラヒラっ!」
陸は両手でTシャツの裾をぎゅっと掴んで下に引っ張りながら俺に向かって叫んだ。何も大声出す事ないのに……。俺は突然興奮し始めた陸を落ち着かせようと「りく」「りく」と柔らかく呼びかけ続けたが当の陸の耳には届いていないようだった。陸は両手をぶんぶんと振り回して自分の心に芽生えた何かの衝動を否定しようと躍起になっていた。陸は尋常じゃないほど顔を紅潮させていてその表情は怒りというより羞恥に染まっているように見えた。
「おじさんが! いやらしい女に囲まれた、こんな変態な部屋で暮らしてるから! だからオレも! 釣られておかしくなっちゃうんだ!」
陸の視線を追いかけて俺も自分の作り上げたこのオタク部屋を見回してみる。確かに陸の言う通りここはコンプラ糞食らえな独身オッサンのみっともないエロゲ部屋だ。それは否定しない。だがこれはこれで俺が辛く残酷な世界を生きて行くのに必要だったものだったし何なら彼女たち架空の半裸の女にも俺は同胞意識のような感情を抱いている。陸にはまだ早いかもしれないが。
詰まる所。陸はここ1年間このエロゲ部屋に週末通って普段の地獄とかけ離れた安全な空間に居心地の良さを覚えると共に彼女たち半裸の女に憧れのような気持ちを抱いてしまったのだろう。そりゃそうだ。俺だってなれるものならヒロインになりたい。可愛いし綺麗だしおっぱい大きいし優しいし健気でえっちで温かい。存在自体が尊いんだ彼女達は。そんな価値観の俺を陸は間近でずっと見ていた。見て学んじゃったんだな。身近な大人が守ってくれない子供は最も頼れると信じる大人の価値観を真似て同一化を図る。陸にとっての頼れる大人が不運にも俺だったって訳だ。今更矯正は効かないかもしれないが……でも陸。俺は陸のこと本当に大切に想っているんだぜ。おまえの人生のお手本がこんな歪んだオジサンで本当に済まないと思っている。
「陸はこういう服、嫌いか?」
「ハッ! 当ぜ……」
「りく。叔父さんの前では、無理して嘘つかなくてもいいんだよ」
俺はワンピースを床に起き右手で陸の髪を撫でた。優しく。何度も何度も。しばらく撫で続けているとさっきまで興奮していた陸もすっかり大人しくなってきて俺と陸は床にぺたんと座って陸は俺にもたれかかったまま俺はそれを軽く抱いてずっと頭を撫でていた。「りく」「りく」陸の頭上からそっと囁き続ける。陸は大人しく撫でられていたがやがて鼻を啜り始めた。……泣いてんのか?
「……おじさん。……ぐすっ。……体臭……くっせぇわ…………ぐすっ」
「ごめんな、叔父さん臭くて」
「……いい」
何がいいのかよく分からないんだが。ともかく陸は俺のTシャツを着て寝るのだけは死んでも嫌だと強情に言い張るのでここはやはり俺が用意した白いワンピースを陸には着て貰う事にした。
陸は自分じゃ着られないなどと日本男児にあるまじき女々しさを口から漏らしたので仕方ない叔父さんに委ねなさいと胸を叩きここは年上らしく小学5年生の陸に着せてやる事にした。まずは陸を床から立たせて万歳のポーズを取らせ臭がっていた俺のTシャツを脱がせます。はいバンザーイ。それから目に飛び込んで来たのは陸の小学5年生の乳首。前に見たのとは大分様相を異にしていて陸をお風呂に入れてやっていた5才の頃のぼやっとした乳首と現在のポッチリとした乳首らしい乳首ではやはり格が違う。なんの格かは定かでないが弾力がありそうなのは見て取れる。色もしっかり定着してきていてサーモンピンク色っていうのかこういうの?
「……お、おじさん……。どこ見てんだよ。恥ずいだろっ……」
陸に嫌がられたので次に行こう。現在ほとんど裸に剥かれて白いこどもブリーフ1丁の陸。俺の視線が乳首に注がれすぎて警戒されて乳首を手で隠されてしまった。でも今の時代は男女隔てなくビキニゾーン厳守と言うしコンプラ的にはこれで正解なのかもしれないな。陸の均整の取れた身体はやはり級友とサッカーで汗を流している賜物だろう。下から上へ淀みない肉の流れを感じビキニゾーン以外の肌は気持ちの良いくらい日焼けして健康的だ。男子とも女子ともどちらに言い張っても通用するくらいこの年齢において美しい肉体をしている。陸のしっかり空いたへそを眺めながら俺は
「りく。綺麗だよ」
心に思ったままを言った。陸は恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。
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