十九話 四つ子の傭兵と対決
「兵士達が空腹状態になっている間に城内に入ろう!」
颯は周りにそう言って颯達九人は城の門を通って中に入っていった。颯達は城に入って来てすぐ大広間に出た。
「パッと見、中に兵士ちゃん達はいないな……」
「それでは作戦通りここからバケダラちゃんは一人で行動して下さい。敵に見つからないようにムベンガちゃんの救出を頼みます」
サヨリはそう言うとバケダラは無言で頷いてその場から姿を消した。
「てっきり兵士が何人か待ち構えているかと思ったが誰も待ち構えていなかったな」
「ん……!? まさか……!!」
潮の言葉を聞いて何かピンと来た顔になった爽は上の方を見た。
「毒の矢だ!!」
爽は颯達が飛んでくる毒の魔法で出来た一本の毒の矢を見てジャンプし、その毒の矢を右手でキャッチした。
「ケガニか!」
爽はそう言って大広間にある大きな階段の先を見ると、毒の魔法で作った弓を持つケガニが颯達を見下ろしていた。
「やるね! サソリさんは城で一番高い階層の四階にいるよ! ただしサソリさんの弟と颯だけ通ってね!」
ケガニは颯達八人に向かってそう言った。
「へぇ……まさかあんた一人で俺達を止める気じゃねぇだろうな……!」
「全員……僕が倒しちゃおうかな〜」
ケガニはそう言うと、ケガニの背後の壁から一斉に無数の毒の矢を放ち始めた。
「僕一人で終わらしちゃうよーー!」
ケガニはそう言って下を見ると、八人全員、毒の矢が刺さりまくっていても平然としていた。
「残念だったな! 俺達は超高級の毒耐性装備を着ているんだよ!」
「……普通に階段上っても大丈夫そうだ!」
颯はそう言うと、八人はゆっくりと階段を上り始めた。
「え? まじ? みんな平然? 超高級の毒耐性装備!? なにそれ!? 聞いてない!!」
「残念だったな! お前は負けだ!」
爽はケガニに向かってそう言うと、駆け足で階段を上り始めた。それを見た海も駆け足で階段を上り始めた。
「く……来るな……!」
慌てた表情になったケガニの目の前まで海と爽が来た。海は右手で握る様に石の剣を作り、爽は右拳に毒の魔法を込めた。
「おりぁ!」
海と爽は自身の武器による一撃をケガニの頭に当ててケガニを吹っ飛ばし、ケガニはうつ伏せに倒れた。
「お前一人ごときに俺達がやられるか!」
海と爽以外の六人が階段を上り終えた。
「予定と違うぞ二人共……! ケガニは我と颯が戦う予定だったはずだ!」
潮は怒りの表情で海と爽にそう言った。
「だってこいつ……一人で俺達倒すとか舐めまくってたからなぁ」
「全く……海も参戦するとは……」
「ケガニさんが倒れたぞ!!」
そう言う兵士の方が階段の下から響いた。
「やべぇ! ケガニがやられたから兵士ちゃん達来た……!」
「みんな……先に行って下さい」
「え!? サヨリちゃん……! 大丈夫なんですか!?」
「元々私は兵士の足止め役だから……! 早く!」
「でも……」
「よし……我もここに残ろう」
「潮君も行って良いんですよ」
「いや……さすがにサヨリちゃん一人は駄目だ。潮も残った方が良いな!」
「なるほど……じゃあ颯君も……」
「いや、颯は行け」
「潮……! 私もケガニと戦う者だ! 何故……」
「ふっ……ここは我と秘書の二人だけで十分だと思うだけだ。ケガニは倒されて見張るだけで良いしな」
「……とにかくもう兵士がそこまで来てます!」
サヨリは階段を上って行く大勢の兵士を見てそう言った。
「……私も先に行って良いのか?」
「お願いします! 心配はいりません!」
「すみません……!! ここは頼みます……!!」
「サヨリ、潮君……ここは任せます」
ウオノエは潮とサヨリに向かってそう言うと、海・爽・颯・凪・ライノ・ウオノエの六人は先に進み始めた。
*
颯達六人が城の二階から三階に繋がる階段を探しに歩き始めてから数分後――
「ここは一階から二階に繋がる階段と、二階から三階に繋がる階段の位置は遠いのはなんでだ……!」
手書きの地図を持っている爽はそう言った。
「まぁ……一気に攻められないようにする為だろうね……」
数分後、颯達六人は三階に繋がる階段が見える場所に来た。
「……敵がいるぞ」
海は一人の階段の前で仁王立ちしているタラバガニがいるのを見てそう言った。
「ここは当初の予定通り、タラバガニ担当の僕と凪で行こう」
「僕僕コンビ行け!」
爽はそう指示すると凪とライノはタラバガニの前に出た。
「おおっ!! お前ら二人は……!! 誰だったかな!?」
「前に会ってるけど……忘れられてるし……」
「とにかく! 君達颯とウオノエ以外は行かせるなと言われているんだ! ここは通さん!!」
タラバガニはそう言うとライノは鼻先に付けるように魔法でツノを生やした。
「んん!?」
「これが僕の不自然魔法ね」
「鼻からツノを生やす魔法か……ずいぶん弱そうだな!」
タラバガニはライノにそう言うと、ライノはタラバガニに向かってツノを向けて突進してきた。
「タラバガニ……あなたの腕はだんだん重くなる……」
「んお!!?」
凪がそう言った瞬間、タラバガニの腹にライノのツノが激突してタラバガニが吹っ飛んで壁に激突した。
「今だ!」
颯はそう叫ぶと、海・爽・颯・ウオノエの四人は三階に繋がる階段を上り始めた。
「……四人行かれたな……!! だが後はズワイガニとハナサキガニに任せよう!!」
「僕のツノが刺さってなかった……腹に硬い毒の魔法を込めてたんだ……」
ライノは鼻に付けたツノの先が溶けているのを見てそう言った。
「それよりさっき俺は腕が重くなった気がしたが不自然魔法か……!?」
「僕の不自然魔法は強制的に催眠状態にさせるなんで……」
「催眠術……!?」
「やっぱりタラバガニは引っ掛かり易そうだったね」
ライノはそう言うと、タラバガニは怒りの表情になった。
「おいーー……!! それって俺がバカって言いたいのかーー」
「バカと言うより声がでかい……」
そう凪は思った。
「もう一回行くよ!」
ライノはそう言うと再びタラバガニに向かってツノを突き立てて突進した。
「あなたの腕はどんどん重くなる……」
「ふん!」
タラバガニは全身に毒の魔力を込めて、迫り来るライノのツノを両手で受け止めた。
「一方的になれると思ったか?」
「重く感じる筈なのに……」
「ふっ……もっと重くしても良いぞ」
*
一方、颯達四人はアワビ城の三階へと繋がる階段を上っていた。
「颯君……もし私がサソリに負けたら颯君が代わりにサソリを倒してくれ」
「私がですか……」
「大丈夫だ。颯君に任せる時はサソリの体力がほとんど無い筈だ」
「颯……学長が戦っている時に加勢しようと思うなよ。お前なんてすぐやられるだろうからな」
「分かった……!!」
話しながら駆け足で階段を上っていた颯達四人は城の三階に着いた。
「これでまた城の反対側へ行けば良いってわけか」
爽がそう言って数十秒後、前から大勢のメイドの格好をした女の人が颯達四人に向かって走って来た。
「メイドちゃんだーー!!」
爽はそう言っていると、颯達四人はメイドの格好をした女性達にぎゅぎゅう詰めに密着状態にされた。
「……どいてくれ!」
ウオノエはメイドの格好をしている女性達にそう言うもメイドの格好をした女性達はどんどんギュウギュウと集まっていった。
「海! 爽! ムベンガのお父さん!」
海・爽・颯・ウオノエの四人はメイドの格好した者達によって散り散りにされた。
*
数十分後、メイドの格好の者達の密着状態から押されて前に進まされた海・颯・ウオノエの三人はメイド達の密着状態外に押し出された。
「な……なんだったんだ……」
「城の使用人が一気に押し寄せて来たのか……爽君は!?」
ウオノエは爽がいないことに気が付いた時、海・颯・ウオノエの前にハナサキガニが歩いて現れた。
「君は……ハナサキガニか」
「なんだ……使用人の女達には颯とサソリの兄だけを上手く通せって言ったんだがなぁ……あんた良く通れたな」
ハナサキガニは海を指差してそう言った。
「あとでお仕置きしなきゃなぁ〜。全員に」
ハナサキガニはそう言った瞬間、近くにいるメイドの格好をした者達は驚きの表情になって怯えた顔立ちになり体が震え始めた。
「……後ろ見ろ」
「あぁ?」
ハナサキガニは海にそう言われて後ろを確認した瞬間、右拳に毒の魔力を込めている爽に顔面を殴られた。
「ゔっ……!!」
「あっ……爽!!」
「お前さぁ〜……メイドちゃん達を戦場でこき使ってんじゃねぇよ……」
「二人共先に行こう。ここは爽君に任せる」
「爽……一人で大勢相手に大丈夫だろうか……」
「早く行くぞ」
海はそう呼びかけると海・颯・ウオノエの三人は先に進んで行った。
「……お前さぁ。何をそんなに怒ってんだ?」
「だから! メイドちゃん達をここに立たせるなって!」
「お前このメイド全員知り合いってわけでもねーだろ」
「お前は戦いたくもないメイドちゃん達を危険な目に合わせようとしてんだ!! それが俺は気に喰わないって言ってんだよ!!」
爽はそう言って右拳に毒の魔力を込めると、ハナサキガニに向かって右拳を振るった。
「……要するにお前、俺と真逆の女好きか」
ハナサキガニは、爽のパンチをかわして毒の魔法で巨大なカニのハサミの様なものを作った。
「ハサミ……!! あれがバケダラちゃんの言ってたハナサキガニの武器か!」
爽は左拳に毒の魔法を込め、ハナサキガニに向かって左拳を振るった。
「まぁまぁそんな怒るな」
ハナサキガニは爽の左拳を自身の右手の掌で受け止めて、手にしている武器のハサミ部分で爽の腰を挟んだ。
「止められた……! 速い……!!」
爽は挟みから逃れるために両手で押してハナサキガニの武器から逃れた。その瞬間、ハナサキガニは左手にも毒の魔法で新たに巨大なカニのハサミを作り、爽の腰を挟んだ。
「くそっ……!」
「俺の毒を喰らっても平気そうだが……お前も毒属性か? 一対一ならいい勝負出来たかもな」
ハナサキガニはそう言うと、近くにいるメイドの服の首元を掴んで盾にするかの様に一人のメイドを爽がいる方向に向けた。
「だが今は、1対100だ」
「お前……メイドちゃんを盾に……!?」
「俺は女と遊ぶのが好きなんだ。さぁ……掛かってこい」
爽は右手で左拳を掴んでいるハサミを砕き、両手で腰を挟むハサミを砕いた。
「俺の武器を砕いたか……そこそこやるな」
「くそ……! メイドちゃん……!! 必ずあいつを倒して救ってやるから……!!」
*
海・颯・ウオノエの三人はズワイガニがいるアワビ城の四階へと繋がる階段が見える場所へと辿り着いた。ズワイガニは右手で毒の魔法で作られている剣を右手で握っていた。
「来たのは三人か……」
「その先にサソリがいる筈だ。通してもらってもいいか」
「良いぜ颯とウオノエはな……ただしお前は俺の毒を喰らってからだがな」
ズワイガニはそう言うと、颯に向かって素速く移動し、毒の剣を振るった。それを見た海は右手で握るように石の剣を作り、ズワイガニの毒の剣を石の剣で受け止めた。
「お前も剣か……いいねぇ」
海が持つ剣は溶け始めた。
「魔力が弱いな。こいつは溶かして斬っての繰り返しで楽そうだな」
海の石の剣が溶かされていったが、海は素材が新たに石の魔法で剣を二本作り、ズワイガニが持つ毒の剣を折ってズワイガニの体に当てた。
「なに……」
ズワイガニは少し後退りをして新たに両手で握るように二本の毒の剣を作った。
「……颯に毒を当てるのは止めとくか」
*
颯とウオノエがアワビ城の四階へ繋がる階段を上っていた頃――
「万が一の時……私は不自然魔法をちゃんと発動出来るだろうか……」
不安そうな表情の颯はそう思った。
「大丈夫だ」
ウオノエは颯に向けてそう言った時、二人は城の四階にたどり着いた。
「今までもそうだったが……ここに来るとサソリの魔力を強く感じる……」
「颯君、魔力でサソリに見つからない様に己の魔力をできるだけ弱くするんだ。魔力を弱くする方法は分かるな?」
「はい……! 自分の属性と逆の感情になればいいんですよね……!」
颯はそう言って頭の中で自身が思う難しいことを考え始めた。
「良いぞ颯君。そのまますぐそこの部屋に移動して身を潜めてくれ。私は奥の部屋にいるサソリと戦いに行く……!」
「はい……! 絶対にサソリに勝って下さい……!」
「……颯君、もし私の魔力を感じなくなったら頼む」
「分かりました……!!」
ウオノエは颯と別れてから数分後、サソリがいると思われる部屋の扉を開けて中に入った。その部屋は何も置かれている物は無かったが、ウオノエから見て奥の壁にムベンガが縄で両手両足を縛られて立たされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます