第18話:ちょっぴり恥ずかしいオタクの話
最近、なんとなくシュタインズ・ゲートのアニメと関連アニメ作品を全て見返して、思い出した話がある。人によっては、共感性羞恥になる話かもしれない。
高校生の頃、シュタインズ・ゲートにハマッていた。今でも大好きなゲームとアニメだが、当時のハマり具合は半端ではなかった。オタク街に行けば、当時はオタクショップにドクペが売っていたから当然買って飲んだ。ドクペは僕の舌にはとても合っていて、今でも結構飲んでいる。
そんなドハマリしていた当時、僕は白衣を買った。
劇場版『STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』を見に行こうという話に自分自身のなかでなったとき、近隣の劇場では放映しなかったため、電車に乗って少し遠出をすることになった。そのとき、鴻上に電流が走る。
せや、白衣着て見たろ!
この映画は、本編を見た、またはプレイした人へのボーナストラック的な映画である。その空気感は最初から感じ取っていたし、公式のプロモーションなどでもわかったことだ。見たら本当にボーナストラックそのもので、大歓喜した覚えがある。
最初は、「蛇足になる可能性も……」と思ったが、これをもってシュタゲの物語が完結したのだと言えるような最高の蛇足だった。
見に来るのは、シュタゲが好きな人ばかりだ。
白衣を着て見に行く人も、何人かおるやろ。
そう思って、一人で着て楽しんでいた白衣をカバンに丁寧にしまい込み、「映画行ってくる」と夜の上映に出かけた。当時2013年4月のことである。高校3年になったばかり。今年は受験。姉さんの死から全く立ち直っていなかったとはいえ、それなりに好きなことを楽しめるようにはなっていたことと、高2からしていた受験勉強の息抜きとでワクテカしながら見に行った。
映画館のある商業施設を適当に見てまわり、彼女にお土産でも買うかと思いきや、所持金が足りず断念。家電量販店のゲームコーナーで、シュタインズ・ゲート関連作品が結構たくさん並んでいて嬉しくなるなどした後、晩ごはんを食べてから劇場に向かう。何を食べたかは、覚えてない。多分マクド。
劇場のトイレで白衣を羽織り、いざ映画へ!
結果的に、白衣を着た人間は僕だけだった。
いや、ね?
地方の劇場で、休日とはいえ夜の部なんだよ。冷静に考えたら、そんな濃いオタクが大勢いるわけないんだ。そういう濃いオタクは、上映開始当日に行くだろうよ。梅田や難波あたりの劇場なら、まだ可能性あったけどさ。
西宮だよ? いるわけないやん。
ちょっとだけ、恥ずかしかった。
周囲の席が少しざわついていたし、劇場から出てきて物販を眺めて言うと、本作品のパンフレットを持った男女とガッツリ目が合った。とはいえ、当時僕はまだ17歳である。来月18歳になるのを控えた人間で、その頃の僕は童顔で痩せ型ということもあり実年齢より若く見られることが多かった。
ギリギリ! まだギリギリ! 微笑ましいくらい!
そう思いたい。
という言い訳をしてみたが、後悔は全くしていない。白衣を着て劇場で見るのは、とても楽しい経験だった。好きなものを全力で、自分らしく楽しむというのは、とても楽しいことだ。
こういう楽しみ方は、姉さんが得意だった。昔の僕は恥ずかしがっていたけど、いざやってみると面白い。帰る前に白衣を脱ぎながら、なるほどなあ、と思ったのを覚えている。
姉さんは『STEINS;GATE』をゲームでプレイしていた。発売日に買ったそうだ。僕は一緒にプレイした。2回目のプレイからは、姉さんはいつの間に買ったのか、白衣を着てプレイしていた。
そこからハマり、アニメでさらにハマり、劇場版を見るに至った。姉さんが生きていたら、一緒に行っていただろう。二人で白衣を着ていたかもしれない。そんな感慨に浸りながら、眠気眼をこすり、帰路についた。
ただ、今振り返ると、しまったなと思った。失敗した失敗した失敗した失敗した。
節約のために飲み物持ち込むならさあ……。
ドクペ買っておけよ! そこまで徹底しとけよ! 地元にも売ってる店あるんだから! 買ってから行けよ! ぬるくなるけど!
いや、本当は持ち込まずに劇場で買うほうがいいんだけどね……。
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