第9話 できることをできるだけ

ふと、自分に何ができるのかを考えることがある。


イラストは書けないし、Webデザインもできないし、プログラミングもできない。デザインセンスの欠片もなく、音楽的センスは生まれるときに母親の胎内に落としてきた。無論、センスというのは知識と経験から来る部分があるから生まれ持ったものが全てではないとはいえ、ある程度にはなれてもその先にはいけないというのが、僕の人生には多かった。


大抵のことは、人並みにはできる。


努力すれば、人並みよりほんの少しうまい程度にはできる。


しかし、「これが超うまいぜ」ということが、一つもない。


いわゆる器用貧乏だ。


ただ、絵と音楽だけは本当に努力しても人並にすらなれなかった。芸術の分野は、どうにもならんことがある。歌は人並みよりほんの少しうまいけどね。


文章に関しては、人並みより少しうまい程度だと思っている。10年近く専業フリーWebライターをしているし、文章の書き方みたいな本を何冊か読んで基本を身に着けているから当然と言えば当然だ。


まあ、Webライターにも文章の基本のキすらできていない人が結構な人数いるから、基本を身に着けているだけでも中の上くらいかもしれないが。


創作に関しては、センスというのとは違う気がする。


僕の創作スタイルは、自分の性癖や物事の捉え方や感じ方、考えていることのアウトプット、というほうが正しいと思う。自分自身を創作という形で出力している。キャラクターや話の展開は僕をモチーフにしているわけではないが、自分自身の人生において身についたものはどうしても反映される。


文章に関しても、センスで書いているわけじゃない。


そして、僕は創作が趣味なのであって、「創作が得意」というつもりは毛頭ない。そもそも、どこから得意だと言えるのかが、曖昧な分野だと思う。めちゃくちゃ伸びてたら得意だと言えるかというと、そうとも言い切れないだろうしね。


なお、その基準だと僕は得意じゃないということになる。


じゃあ得意なことはと聞かれたら、何を答えるのだろうか。


「無い」は論外過ぎるから、僕はいつも「料理……ですかね」と答えている。料理は結構できる方だと自負しているし、人からも実際好評だから得意だと言える。


とはいえ、それも素人の中ではうまい方だよねという程度だ。


そりゃあ、プロとして修行した経験が無いのだから当たり前だけどね。そのうえ、最近は簡単なものばかり作っているから、正直衰えている可能性もある。


結局のところ、僕は興味が色々なところに飛び飛びになって、あれこれと手を付けていまうのだと思う。何かひとつにだけ打ち込むということをしてこなかったから、器用貧乏な人間が出来上がったんだろう。


今は仕事と趣味の両方で文章を書いているものの、これにだけ打ち込んでいるかと言えばそうとは言い切れない。ほかにもたくさん趣味があるから。


まあ、でも、なんだかんだと言って、僕はこういう自分が割と好きだ。


色々なことに興味を持つからライターの仕事が向いているんだと思うし、創作にも役立つ部分があると思うしね。


自分に何ができるのかを考えて落ち込むことはあるけれど、結局のところはできることをできるだけやるしかない。


出来ないと思っていることも、たまにやろう。


最初から出来ないと決めつけるのは、好きじゃないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る