作家と、執筆と、投稿

dede

第1話


以下、引用 -----男の華園(著:桑田乃梨子 白泉社)


状況説明:本を出すぐらい良い小説を書く大学生の汐里先輩とその友人の円先輩の会話


円先輩

「オレのことはいんだよ‼どうでも」

「おまえは寂しがりやのあまえっこだから言ってるんだ‼」

汐里先輩

「あー うん オレ」

「だからなんか書くんだよな」

円先輩

「?」

汐里先輩

「…だから」

「自分の考えてること知ってんのが自分だけじゃ寂しいから」

「人に見せることでちょっと紛らわせてる」

「それで根本的な寂しさが紛れるわけじゃなくても」

「『オレはこんな風に思うしこういうものが好きなんだ』ってことを肯定してくれる人がちょっとでもいるとホッとして」

「それって友達とかと直接話すのとは微妙に違っててさ」

「拒絶されたり否定されることももちろんあるけど」

円先輩

「……なんかよくわかんねーけど」

「ひとりでメシ食うのがヤなときはいつでもウチ来いよ」

汐里先輩

「ああ」


以上、引用終わり。


 そういうものなのでしょうか?作家の皆々様方?




投稿サイトに文書なんて公開し続けていますと、いつの間にかすっかり忘れがちですが。

大して読まれてもいないのに何となく待たせている気がして、投稿しなくちゃと焦りがちですが。

何となくセットに捉えがちなんですが。

別にお話を書いても投稿しなくて良いんですよね。本にする必要もない。


執筆をするという事と、世に公開するというのは、本来別の行為です。そのはずです。

しかし如何せん、作家さんという生き物は書いたモノを人に読ませたがります。


良い文章を書ければ作家かというとそうではない。

仮にあなたがとても素敵なラブレター……は、昨今お見掛けしそうにないので

例えばLINEのやり取りがとても上手な方だったとします。

その文章は表現豊かで示唆に富み、相手の感情に強く訴えかけることができます。


しかしではあなたは作家でしょうか。

いえ、違います。あくまで文章が上手な人です。

あなたがあなたの文章を個人で利用しているうちは、あなたは作家ではない。


でもあなたが、その素敵なLINEのやり取りをネット上に公開する事にしたのなら、おめでとう、あなたはきっと素敵な作家でしょう。

作家は、その文章を世に公開して初めて作家になれるのです。

(どうでもいいけど、LINEの例えは失敗しました。ラブレターの方が数段分り易い)


つまり、作家の資質というのは、執筆よりも、世に公開するという行為に依存するらしいのです。

読まれなくても作家(悲しいですが)、でも、読めるところには置いてないと作家ではないのです。


しかし、書いたお話を世に公開する動機とは一体どのようなものでしょう?


私はですね、実名で私生活の写真を公開するよりも、匿名で自分の考えたお話を公開する方が断然恥ずかしいです。


どうしてでしょうね?生活が受動的で、考えたお話は能動的だからでしょうか?もしくは外的で内的な?

外面よりも内面を見られる方が恥ずかしいって事ですかね?


それでも考えた小説を世に公開する人がいるという……それが私は不思議でした。ありがたいでしたが。在り難く思えました。

金銭目的だったり有名になりたいという方もおいででしょうが、如何せん効率が悪過ぎます。

それなのに、一定数いつの時代にもその稀有な方々はいらっしゃるのです。それが私の謎でした。


で、冒頭で引用したマンガです。

このマンガを初めて読んだ時、私は思いました。


「そういうものか」


その当時、小説を書いたらどう感じるか、私は知らなかったし、それを人に読まれたらどう感じるか、それも知らなかったのです。

けれども、そのセリフのやり取りはずっと心の片隅に残っていました。

そういうものかと。

私がお話を書くようになった動機のきっと一因です(もっと直接的なトリガーは他にあるのですが)。


ネット上にお話を公開するようになって1年以上経ちました。

そんな私が久しぶりにマンガを読み直して思ったのです。


「そういうものか」


ええ、未だによく分からずじまいなのです。

けれども昔とは違い、お話を書いたらどんな気分か、人に読まれたらどんな気持ちになるか、今は分かります。


それは存外悪くないのです。


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