第3話
「わたし、生まれてからこのかた
一度も歌を歌ったことはありません」
スイカが血眼になって数の子に
力説した。
「そんなはずはありません。ハイ、これ」
数の子がスマホをスイカに手渡した。
「こっ、これは」
スイカが絶句した。
スマホにはたしかにスイカの歌唱動画が
映し出されていた。
「どうです?」
「これ、フェイクじゃないかしら?」
「フェ、フェイク?」
「AIによる生成画像。だと思うけど」
スイカが何度もうなずいた。
「そうですか」
「わかったら、おひきとりください」
スイカがそういうと、数の子がスイカの
両手を力強く握り締めた。
「いえ、その態度が実にすばらしい。惚れ直しました」
「ったく」
スイカが舌打ちした。
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