ゴリ・夢☆Chu♡の映画感想

ゴリ・夢☆CHU♡

きつねと猟犬(1983)

 女と生まれたからには、誰もが一生のうち一度は夢見るお姫様。

 女の子にそんな夢を見せたのは夢の国の盟主、ついでに現代アメリカのエンタメの盟主でもあるウォルト・ディズニー・スタジオであることは疑いようもないでしょう。

 1937年製作の『白雪姫』は、女の子たちを夢へと誘う第一弾の映画として、当時としてもその美麗なアニメーションは大きな衝撃をもって迎えられたそうです。

 それからディズニーは多くのプリンセスを生み出しました。『シンデレラ』、『眠れる森の美女』、『リトル・マーメイド』……。素晴らしい音楽と素敵な王子様とのロマンスは、世界中の女の子たちを虜にして離しませんでした。

 しかし、私は言わなければなりません。

 ディズニーは夢見がちな乙女だけのものではない、と。素晴らしい歌がなくとも、素敵な王子様がいなくても、そして美しいプリンセスがいなくたって、ディズニーは素晴らしい作品を作り出せるのだ、と。


 今回ご紹介するのは、1983年製作『きつねと猟犬』。

 ディズニーの長編アニメーションとしては20本目の作品です。ディズニーファンならご存知かもしれませんが、一般的な知名度はそこまで高くないでしょう。

 その理由を推測するのは簡単です。

 動物に焦点を当てた作品としては、制作時期の近い『わんわん物語』や『おしゃれキャット』も比較対象として挙げられますが、こちらの2作品の知名度は本作よりずっと高いでしょう。

『わんわん物語』にはレディとトランプがスパゲッティをすするシーン。『おしゃれキャット』には子猫のマリーや名曲『みんな猫になりたいのさ』。どちらもアイコニックなシーンやキャラクター、曲があります。

 しかし、本作にはそれがありません。ディズニーが得意とするような賑やかさはなく、言ってしまえば、豪華絢爛なディズニーワールドにおいて、『きつねと猟犬』は極めて地味な作品なのです。


 あらすじです。

 猟師に母を殺された狐のトッドは、森に住む鳥たちの計らいでトゥイード夫人という老婦人に育てられることになります。同じ頃、トゥイード夫人の隣人である猟師のスレイドは、子犬のコッパーを猟犬として育て始めます。

 トッドとコッパーは「きつねと猟犬」という立場を超えて仲良くなりますが、ある日トッドがコッパーの先輩にあたる老犬チーフにいたずらをしたことをきっかけに大騒動が起こり、スレイドはトッドを仕留めることを決心します。

 そして月日は流れ、トゥイード夫人のもとを離れ森で暮らすトッドと、猟犬として大きく成長したコッパーにとって運命の日が訪れ……というお話です。


 先述した通り、本作に名曲はありませんし、心ときめくようなロマンスもありません。曲もロマンスもあるにはあるのですが、せいぜいおまけ程度のものです。

 本作は一貫して、トッドとコッパーの立場を超えた友情にフォーカスを当てています。だからといって、「俺たちの友情はこんなことでは終わらないぜ!」なんて安易な着地点は見せません。身勝手な人間たちに振り回される動物たちの悲哀と運命をシビアに描き出します。


 本作は紛れもなく無名の作品です。ディズニーランドを訪れる人々の中でも、「ディズニーで一番好きな作品は?」と聞かれて本作が思い浮かぶ人は限りなく少ないでしょう。

 ですが、本作は紛れもなく名作です。日の目を見るべき作品です。隠れた名作は、いつまでも隠れているべきではないと、私は心からそう思うのです。それがただの夢で終わらないことを切に願います。

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