第2章 加速する恋

第26話  姉と妹と噂


 俺は何度も何度も、火憐とのキスを思いだし、赤面しながら家に着いた。

 玄関のドアを開けると。


「おそーい!! お兄ちゃんどこをほっつき歩いていたの? 」


 俺の目の前には、頬を膨らませて怒っている可愛い俺の妹――葉月がいた。


「ちょっと出かけてたんだよ」


「ふーん…そんな着飾っておいて、ちょっとなんだ。それに、こんな遅くまで1人で出かけるっておかしいもんね」


 これは絶対にバレてるな。言い訳する余地もないだろう。まぁ、もとより言い訳する気なんてないけどね。


「そうだよ…葉月の予想通りだよ。それに、ほらちゃんとお土産も買ってきたぞ」


「お土産程度で私の怒りは収まらないよ!! 」


「じゃあどうしたらいいんだよ」


「私ともちゃんとしたデートをしてね」


「はいはい、わかったよ」


 そうして、俺は葉月にお土産を渡す。葉月に買ってきたのは、ペンギンのシャーペンだ。可愛いし、葉月は中学生だから勉強にも役立つだろう。


「大切にするね!! 」


 目をキラキラと輝かせながらシャーペンを握る葉月の姿はまだ子供だ。体は立派に成長していても心は子供のままらしい。葉月も火憐も変わらないな。


 俺が火憐が可愛いと思ってしまうのは葉月と重ねてしまっているからかもしれない。まぁ、それをなしに考えても火憐が可愛いことには変わりない。


「響也私のは?」


 そう言いながらどこからともなく姉さんが現れる。え…怖っ。あの人音もなくやってきたんだけど…。忍者か何かなのか? しかも俺と葉月の会話を聞いていたみたいだし、怖すぎるよ。

 

「ちゃんと買ってきてるよ。ほら」


 そう言って俺は姉さんにダイオウグソクムシの人形をあげる。


「響也わかってるじゃーん。そうそう、このキモかわいいのがいいんだよね」


 うちの姉はキモかわいいものが大好きらしい。俺には到底その良さはわかりそうにもないが、姉さんが喜んでくれているのならそれでいい。お土産を選んできた甲斐があったというもんだ。


「私もさすがにもらってばかりじゃわるいからさ…何か響也にしてあげようか? 今なら何でもしてあげるよ。エロいことでもなんでもだよ? 」


「お姉ちゃんずるいよ!! 私もする!! 」


「いや別に何かして欲しくて買ってきたわけじゃないからそんな事する必要ないよ。」


「はぁ…響也も私たちに甘えていいんだからね」


「甘えねぇよ」




 ◇




 火憐とのデートがあってからの初めての学校だ。キスされたということもあってちょっと緊張している。平然としていられるか、それが全く持ってわからない。


 それに、あのあと葉月と姉さんは俺が眠ったあとにベッドに潜り込んでいた。朝目が覚めるまで気が付かなかった。


 まぁ…それはさておきだ。さっきから何故か皆が俺を見ている気がするのだが、きのせいだろうか? なんか変な格好とかしてないよね? 学校に来たときからずっとこの調子で見られている。


 怖い。怖すぎる。だって、心当たりが全くないんだもん。心当たりがあるならまだいいけど、ないというのはたちが悪い。


 高校生活で初めてだよ。こんなに人に見られるのは。ヤバい胃が痛くなってきた。友達もまともにいない俺にとってはこの視線はきつすぎる。早く帰りたい。


 そう思いながら教室に入ると、名前も知らないクラスメイトから話しかけられた。


「なぁ、お前宮野さんとはどういう関係なんだよ? 」


 それを聞いて俺は察した。これあれだ。俺と火憐のデートが見られてたやつだ。なるほど…。だからあんなに俺は皆に見られていたのか。


 そりゃね火憐ほどの可愛い子が男と一緒に出かけていたとなると気にもなりますよね。


「ただの友達だよ」


「なわけないだろ。宮野さんはな入学してから一度も男子と喋ってないんだぞ。そんな人がお前と一緒にいたとなるとただの友達なわけがないだろ! 」


 えっ…? そうなの? 初めて聞いたんだけどその話。あいつ入学してから男子と話してないの? 確かに、火憐の学校生活のことについては俺は何も知らなかったな。


「本当にただの友達だよ」


「なら俺が狙ったって構わねぇよな! 」


「そうだな。頑張れよ」


 俺がそう言うと名前も知らないクラスメイトは自分の席へと戻った行った。

 何なんだあいつ? それだけのためにわざわざ俺に話しかけに来たのか?


 火憐も大変だな。あんな変な奴らにモテるなんて…。それに、俺の方にも来たということは火憐の方はもっとやばいだろうな。昼休みはちゃんと労ってやろう。


 学校に来るときは緊張していたけれど、今の俺にはその緊張はなかった。俺にあるのは火憐と会って話がしたい――そんな気持ちだけだった。




 



 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 ついに5000PV突破しましたね。本当に感謝感激雨あられって感じです。 

 というか、また投稿遅れましたね。もう遅れるのがデフォルトになりつつあって怖いよ。

 まぁ、今回から2章が始まったんでね心機一転頑張りますよ。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。

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