第23話 火憐との約束

 零の家から帰宅してから俺はあることに気づいた。火憐から連絡が来ているのだ。


『早速だけどさ、明日デートだからね。絶対だから逃げられないよ。あと、行く場所は響也が決めてね。ちゃんとエスコートよろしく!! 』


 え? 何故か明日、火憐とデートすることになっているんだが? しかも俺の意見は聞かないやつだ。


 どうして火憐はいきなりデートをしようなんて言ったのだろうか? 俺は思い返してみる。


 そして、俺は思い出した。零からお礼をしてもらうために教室で待っている時と出来事を。


 そういえば言われてたな。デートをしないと許さないって。それにしても早くないかな? もうちょっと余裕があってもいいと思うんだけど…。


 しかも、俺がデートプランを考えないといけないのかよ。デートなんてしたことないし、しかも1日前に考えるなんて無謀すぎないか?


 それでも、楽しみに待っていてくれてるならその気持ちに応えないわけにはいかないよな。俺は火憐との集合時間を決めたあと、寝る間も惜しんで、デートプランを考え続けた。




 ◇




 集合時間の2時間前にセットした目覚ましが鳴る。どうやらデートプランを考えているうちに寝てしまったらしい。

 というか、やばくね…? まだ何1つとして決まってないんだけど…。


 こうなったら苦肉の策だ。デートの定番中の定番である水族館に行こう。

 確かに俺のオリジナル性はない。けれど、どこに行くかだけで、デートは決まらないと思うんだ。決して、考えるのが面倒とかそういったわけでは無い。本当だよ…?


 そうなってくると大切になるのは服装なわけだが、今まであまり服とかファッションに興味がなかったので、デートに行くのに適した服なんて持っているわけが無い。


 今日のところは、俺が持っている服でマシなものを選ぶしかない。今後も、必要になってくる場合が多そうだからな…今度ちゃんとした服を買おう。


 そうこうしているうちに、集合時間が近づいてくる。俺は不安な気持ちを残しつつも、集合場所へと向かった。


 集合場所というのは、俺の家から自転車で30分ぐらいのところにある駅のことで、そこに集合して、デートをすることになっていた。


 ちょっとやばいな…。予定よりも服を選ぶのに手こずって、家を出るのが遅くなった。これでは集合時間に間に合いそうにない。

 こういう場合は、遅くても5分前には着いておくべきなのに。

 はぁ…今のところ何も上手くいってないな…。本当に俺はどうしようもない男だな。

 

 まただ…。また自分を卑下してしまっている。本当にだめだな俺は…。

 こんな気持ちでデートに臨んでもなんの意味もない。せめて、火憐と一緒にいるときは自分自身に自信を持とう。  


 そして、変わっていこう。俺の人生が楽しいものとなるように。俺と関わってくれたみんなが楽しくいられるように。


 集合時間から遅れること10分。俺は集合場所に着いた。10分も遅れてしまったんだ火憐に怒られても仕方がない。けれど、しっかりと受け入れよう。この遅刻は俺が悪いんだから。


 俺は自転車を止め、火憐を探すことにした。火憐は可愛いし、火憐という名前に負けないくらいの赤い髪をしているので、探しやすい。だから、俺はすぐに火憐を見つけることができたのだが、いかにもチャラそうな男達に絡まれている。


 これは、恋愛系の作品では定番といえば定番な展開なのだが、いざ自分が巻き込まれるとなるとちょっと逃げ出したくなる。


 でも、さっき決めたばかりだからな…。自分自身に自信を持とうって…。

 だったら、助けないという手はない。しかし、俺がそう思うよりも先に体は動いてしまっていたようだ。


 俺は火憐に絡んでいる男達の間に入る。


「なんだァ、てめェ。俺はそっちのカワイイ子に用があんだけど? てめェみたいな男になんぞ興味ねぇよ」


 そう言って、俺を睨んでくる。ふと、火憐のほうを見ると震えながら、俺の裾を握っている。


 それを見て、俺は決心した。――火憐は絶対に俺が守ると。


 相手は2人組。俺が挑んだところで勝てる見込みはない。だったらどうするかって? そんなの決まっている。走って逃げる。それ一択だ。


 俺は基本こういう面倒事に巻き込まれた場合は下手に立ち向かうのではなく、一緒に逃げるようにしている。零のときもそうだった。


 そして、俺は相手に殴りかかるフリをして火憐の手を握り、相手が追いかけてこなくなるぐらいまで逃げた。超逃げた。


 男として逃げるのはどうなんだ? と思う人もいるかもしれない。しかし、結果としてだが2人とも助かっているのだから逃げるのも悪くないだろう。それに、ハンガリーのことわざで「逃げるは恥だが役に立つ」というのがある。


 まさに今がその状況だろう。俺は逃げることを選び、火憐を助けられた。誰も傷つくことなくだ。

 それでいいじゃないか。男らしくしても守れなければ意味が無いからな。


「はぁ…はぁ…ありがとう」


 火憐は息を切らしながらも、お礼を言ってくれている。それだけでもう助けた甲斐があったというもんだ。


 俺達は息を整えつつ、再び駅へと向かうのだった。


「さっきはごめんね。変なことに巻き込んじゃって…」


「俺は気にしてないよ。それに、俺が遅刻してきたのが悪いんだしさ。火憐が気に病むことはないよ」


「うん…そう言ってくれてありがとう響也。」


 少しの大変な目にあったものの、無事にデートを遂行できそうでなによりだ。

 そんなことを思っていたので、俺は油断していたのだろう。耳元に火憐が近づいているのに気が付かなかった。

 そして、火憐は囁き声で言った。


「かっこよかったよ。私、響也に惚れ直しちゃった」


 俺は不意に耳元で囁かれたかことに驚きつつも、こちらを微笑んでいる火憐に見惚れていた。


 ――やっぱり、女の子は笑顔が一番だ。







 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 気がつけば投稿を始めてから一ヶ月が経っていたらしいですね。びっくりしました。

 そして、またまた投稿遅れてすみません。昨日投稿する予定だったんですけど、友達と遊んでいたらそんな時間ありませんでした。ストックを溜めれればいいんですけど、生憎そんな事出来ないんでね。今後も待たせてしまうことが多いと思いますがよろしくお願いいします。

 あと、火憐が赤い髪だというのを今まで描写していなかったので他の話でも書き直しました。スミマセン…。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。






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