第22話 お礼とメイド服

 俺が零の大豪邸に入ってわかったことは零は完全に俺とは別次元の人間であるということだ。

 しかも、この大豪邸には誰がどう見てもメイドであると言える人達が沢山いる。しかもそのメイドさん達は俺を見てとても驚いているようだ。


 俺が何かしたのだろうか? そりゃそうかこんな大豪邸に住むお嬢様がいきなり男を家に連れてきたらメイドさん達もそんな反応になってしまうのも当たり前だ。


 というか、気になったことがあるのだが、メイドも執事も女性しかいない。普通執事といったら男のそれも老いた執事を思い浮かべたりするのだが、この大豪邸では違うらしい。


 そんなことを考えながらも、俺は零について行くのだが、なかなか到着しない。迷子になったのではないか? と不安に思っている俺とは裏腹に零は表情からは伺えないが、どこか楽しそうにしている。


 そこから歩くこと10分ほど、ついに目的の場所に着いたようだ。


「着いたよ…先に入ってて…私は…後で来るから…」


 そう言うと零は俺を部屋に入れて、去っていった。

 これからお礼の準備をするのだろうか? 全く分からない。それにこの部屋やけにいい匂いがする。整理整頓もしっかりされていて、人が住むにはいい部屋だ。

 

 ん? そこで俺はある違和感に気づく。勉強机だと思われる物の上に見覚えのある教科書が置いてあるのだ。それに、私物と思わしき物も置いてある。


 いや…まさかな。そんなことあるはずがない。そう、きっとここは勉強部屋なだけだ。


 俺がそうやって緊張をしていると、部屋の外からこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。多分、零だと思うのだが、どうだろうか?


 そして、俺のいる部屋のドアが開けられたのだが、俺は唖然としてしまった。だって、目の前にいる零が――メイド服着ていたのだから。


 銀色の肩までの長さの髪。銀河のような瞳。色白な肌。身長は小学生と見間違えるほど小さく、それに比例して胸も小さい。


 そんな零にメイド服が似合わないわけがない。俺は見惚れてしまっていた。


「私の…メイド服…どう…?」


 俺はその声で我を取り戻した。我を忘れてしまうほどの零の可愛さ。碧や火憐とは違う小さいからこそ生み出される可愛さ。

 俺はロリコンではないけれど、これはいいと思ってしまった。


「ああ…とても似合ってるよ」


「ありがとう…嬉しい…」


 そう言う零の表情はやはり変わらない。まぁ、顔は赤くなってるけどね。笑った方が絶対可愛いと思うのだが、別に無理に表情を作れとは言わない。無表情でも十分可愛いからね。


「それで、お礼ってのはなにをするんだ? 」


「私が…響也の…メイドに…なる…」


 まぁ、メイド服を着ているんだし、予想は出来ていたのだけれど、メイドって何するの? 俺はそこら辺詳しくないからな。


「メイドっていっても何をするつもりなんだ? 」


「私が…ご奉仕を…する…。何か…してほしいこと…ある…?」


 ご奉仕だと…? まさか俺に何でもしてくれるのか? エッチなことでもいいのか? って違うだろ。俺は何を考えているんだ。俺と零はまだ出会ってから数日しか経ってないんだぞ。


 それに、付き合ってもいない男女がそんな事するなんてことはあってはいけないんだ。


 俺は危なかった。零の可愛いメイド服姿に理性を失うところだった。平常心を保たないとな。


 けれど、零はさらなる爆弾発言を言った。


「ないなら…エッチな…ことでも…いいよ…? 」


 零は表情も変えず淡々と言っているものの、顔はすごく赤くなっている。恥ずかしいなら無理しなくてもいいのに。それに、女の子がそういうことを言うのはよくないよな。


「俺はそんなことしないよ。あと女の子がそんなこと言うのは良くないぞ。俺は成り行きでお礼をして貰うことになったけど、零の可愛いメイド服姿が見れただけで十分だよ」


 俺がそう言うと、零はさっきまで赤かった顔をさらに赤くしている。まぁ、それは俺も一緒なんだけどな。

 こう、面と向かって相手に可愛いと言うのはとても恥ずかしい。穴があったら入りたいくらいだ。


「ありがとう…とても…嬉しい…」


 俺はそう言った零の表情に釘付けになってしまった。なぜなら、いつも無表情だったはずの彼女の表情が笑っていたからだ。


 やっぱり、俺の思った通りだった。零は無表情な顔もいいけれど、笑った顔はとても可愛いかった。

 俺は改めて知った。――女の子の笑顔は最強だと。  




 ◇




 その後は、メイド服姿の零とたくさん話した。俺は零のことを何一つ知らなかったので、新しい情報を知れてよかった。


 けれど、そんな楽しい時間にも終わりはやってくる。

 親に連絡はしていたけど、これ以上遅くなるといけないので、俺は帰ることにした。


「もう…帰っちゃうの…? 」


「もう遅い時間だし。零に迷惑をかけるわけにもいかないからね。今日のところは帰らせてもらうよ」


「わかった…。けど…最後に…1つだけ…いい…? 」


「うん、俺は別に構わないよ」


「ありがとう…。なら…私と…連絡先を…交換してほしい…」


「そのくらいのことならいつでもしてやるよ」


 そうして、零との連絡先を交換し終えた俺は、大豪邸をあとにするのだった。


 少しの間だったけど、零との会話は楽しかった。それに、あの笑顔はよかった。守ってあげたいほどにいい笑顔だった。


 これで3人目か…。やっとの思いで、出来た友達は3人。まだ少ないけれど、今はこれでいい…。そう、これでいいのだ。






 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 4000PVありがとうございます。読んでくださった方々、応援してくださった方々皆さんのおかげでここまで来れました。本当に感謝しかありません。

 それと、また投稿遅れてごめんなさい。某ホヨバースさんの新作をやっていたら遅れました。許してヒヤシンス。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。








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