第17話 勉強会本番②

 頑張ろうと意気込んだもののさっぱりわからん。2人とも真剣そうに勉強してるしこの状況で教えて貰うのはちょっとな…。

 それを見かねたのか碧ががこちらにやってくる。


「ねぇ、村雨くん。わからなかったら正直に言ってくれていいんだよ? 私だってそのために来ているのだから」


「そうだよ響也。私に聞いた方が絶対にいいよ。私、教えるの上手だし」


「わかったよ…そうする」


 まさか本当に教えてもらうことになるとは思わなかったな。迷惑をかける訳にはいかないと思っていたけれど、何も言わない方が迷惑になってしまっていたみたいだ。




 ◇




 それから2時間2人に教えて貰いながら何事もなく勉強は進んだ。

 やはり教え方が上手い。真に頭がいい人は教えるのも上手と言うけれど、この2人を見てそれは正しいことなんだとわかった。

 

 だからこそ余計に考えてしまう。俺は本当に2人に見合っているのかと。

 俺は何を言っているんだ…自分を卑下するな。さっきも誓ったはずだ。何としてでも2人のために俺は見合った男になるんだ。


 なんてことを考えていると、碧がこちらを覗きながら言う。


「ねぇ、村雨くんそろそろお昼にした方がいいと思うのだけれど。どう? 」


「あぁ…もうそんな時間だったか。勉強に集中しすぎて気づかなかったな。でも昼食か。土曜日は普段親が両方ともいないからカップ麺とかで済ませてるんだけど、2人にそれはわるいよな」


「そうね、村雨くんは料理できるかしら? 」


「全くと言っていいほどできないね」


「ふーん…なら私が作ってあげるわ。この日のために私だって練習してきているの」


「それはありがたいんだけど…」


 めっちゃ怖い顔で碧を睨んでいる火憐。俺が火憐を見るとにぱーと笑顔に変わって言った。


「じゃあ、私も作るよ。私だって9年間で成長したっていうことを見せてあげる」


「いいわ、受けて立とうじゃないその挑戦。どちらが村雨くんを満足させられる料理を作れるか勝負よ」


 そういえば今日は葉月もいるんだったな。葉月の分もお願いしないといけないな。


「なあ、2人とも妹の分もお願いできるか? 」


「ええ、もちろんよ。妹さんの胃袋もしっかりと掴んであげる」


「私も別に構わないよ」


 そうして、俺の家で突発的に2人による料理勝負が始まるのだった。




 ◇




「ねぇ、お兄ちゃんなんでこんなことになっているのかな? 」


 2人が料理を作っている間、俺は葉月と2人でリビングにいることになった。


「成り行きかな…? 」 


「はぁ…事情はわかったけどさ、私も言ったよね」


 何を言おうとしているのかはわかるけれどそれに触れてはダメだ。なんてったって俺と葉月は家族であり、兄妹なんだ。 

 間違っても付き合うなんてことがあっていいわけがない。 


「葉月は俺の妹なんだ。だから、俺が葉月を選ぶことはない」


「やっぱりそうだよね…あはは」


 と葉月はとてもつらそうに苦笑いをする。やっぱり心が痛いな。葉月と俺が兄妹でなかったら、葉月という選択肢もあったかもしれないけれど、今の俺と葉月はれっきとした兄妹だ。間違いなんて起こるはずはない。


 そんなことを考えていると、キッチンの方からいい匂いがしてくる。どうやら2人の料理が完成したらしい。


「2人ともできたわよ。今日私が作ったのはオムライスよ。自信作だから美味しくいただいてね」


「そして、私が作ったのはハンバーグだ。私のも自信作だよ」


 見た目的になんの問題もない美味そうな料理たちだ。葉月もさっきの悲しそうな表情から一変してウキウキしている様子だ。


「「「「いただきます」」」」


 まずは碧の作ったオムライスから食べてみる。

 これはやばい。美味すぎる。美人で勉強もできて料理も美味いこれは文句の付けようがない。碧みたいな子が嫁に来てくれなら多分一生困らない気がする。

 次に火憐の作ったハンバーグを食べる。当たり前だが美味しい。肉のジューシーさがよく伝わってくる。


 葉月も美味しそうに食べている。俺の妹ながら美味しそうに食べる姿はとても可愛い。


 俺と葉月はあまりの美味しさで、すぐに食べ終わってしまった。


「それで、村雨くんどっちの料理が美味しかったかしら? 」


「どっちもっていうのは無し? 」


「はぁ…響也それはないよ。私たちのことを思うならどっちが選ばないと」


 どっちも美味しいのに両方を選べないなんて酷なことではあるけれど、これは料理勝負だからね。仕方ないんだ。


「わかったよ…ちゃんと決めるよ」


 どっちするか悩みどころではあるけれど俺は決めた。


「今回の料理対決の勝者は碧です」


 俺がそう言うと、碧は嬉しそうにしていたが、火憐はとても悔しそうにしていた。


「火憐のだって美味しかったよ。これは俺の好みの問題なんだ。実は俺オムライスが好きなんだよね」


「オムライスが好きなら最初に言ってよ。私だってオムライス作ったのに! 」


 頬をプクっとふくらませて怒っている火憐は、失礼かもしれないが可愛い。


「ふふふ…負け犬は遠吠えでもしてるといいわ。私の料理は村雨くんに選ばれたのよ」


「ぐぬぬぬぬ」


 そんなこんなで昼食の時間は終わり、俺達は再び机に向かい、勉強を始める。




 ◇




 2人に教えて貰いながら勉強に夢中になっていたらもう時計の針は午後6時を指していた。


「ふぅ…もうそろそろいい時間ね。そろそろお暇させてもらうとしましょう」


「私は別に一生いてもいいんだけどね」


「はぁ、火憐さんそういうのはまだ早いですよ。そういうのは段階を踏んでからやってください。村雨くんもそろそろ疲れたでしょう? 今日はよく頑張りました」


 そして俺は碧に抱きしめられ頭を撫でられた。恥ずかしい気持ちはあるけれど頭を撫でられるのは気持ちいい。毎日でもやって欲しいくらいだ。


「ずるいよ! 夕凪さんだけそんなことするなんて、許されないよ! 」


「これは私が料理勝負に勝ったご褒美なのよ。負けた人にはあげませんよ」


 またしても火憐は顔をプクッとふくらませている。やっぱり可愛いね。


 けれど、そんな時間にも終わりはやってくる。俺は2人を見送るために玄関まで行くのだった。


「今日教えたところはしっかりと復習するのよ? わかった? それじゃあ、村雨くんまたね」


「響也! 今日は何も出来なかったから最後にハグだけしてよ」


 俺は言われるがままに火憐を抱きしめた。火憐はとても嬉しそうにしている。


「うん…これでおあいこだからね」


 そう言って火憐は碧の方を見る。


「じゃあ、響也またねー」


 俺は2人の背中を見ながら手を振っていた。

 今日も色々あったけれど、良かった。

 中間テストまであと1週間。気合を入れた通りにしっかりと頑張ろう。





 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 皆さんお久しぶりですね。なかなか投稿できずにすみません。忙しいのもそろそろ落ち着いてくる頃なので投稿頻度も戻るかもしれません。

 それと、本日はもう1話投稿できるように頑張ろうかなと思っております。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです





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