第12話 出会う2人

 幼馴染だった宮野火憐と改めて友達になることができた俺――村雨響也は今、窮地に立たされていた。


 放課後、いつも通り皆がいなくなるまで教室で待とうとしたとこまでは良かった。問題はその後。皆がいなくなるのを待っている間に俺のスマホに2件のメールが来た。夕凪さんと火憐両方から来たメールには『一緒に帰りましょう』と書いてある。


 しかも、夕凪碧はこちらを見てニコニコしている。どちらか一方を断ることなんて俺には出来ない。かといって、2人と一緒に帰るのはまずい気がする。


 こういう時こそ神様になんとかして欲しかったが、そんなこと到底起こるはずがないのだ。


 迷っていても埒が明かない。そう思った俺は覚悟を決めた。この際だ2人にも仲良くなってもらおう。そうして俺は結局2人と一緒に帰ることにしたのだった。


 さてと、一緒に帰ることにしたもののどうするべきなんだろうか? とりあえず2人ともに連絡してみることにした。


『もう1人友達増えるけどいいか? 』


 そう送り終えた瞬間に既読がついた。いくらなんでも早すぎだろ。それに返事もすぐに帰ってきた。しかも、一言一句同じ言葉で


『大丈夫だよ』

 

 俺は一言一句同じ言葉で帰ってきたことに驚きつつも、許可をもらえたことに安堵した。そういえば、女友達って言ってなかったけど大丈夫だよな…? そんなことを思っているとすでに教室には俺と夕凪さん以外いなくなっていたので、俺は夕凪さんを誘って火憐の待っている靴箱へ向かうことにした。


「それで、もう一人の友達って誰なの? 村雨くんに私以外に友達ができたなんて聞いてないんだけど」


 俺の予想していた通りの反応が返って来た。なんと答えようか? こういう時はしっかりと答えた方がいいのだろうか? 俺には分らない。しかし、俺としては修羅場になるのだけは避けたい。


 だったらもう伝えるしかない。正直に言えば夕凪さんも許してくれる。そう信じたい。


「その友達っていうのは1組の宮野火憐っていう子なんだけど知ってる? 」


「知ってるも何もその子は入学当初から可愛いって噂されていた子よ? 嫌でも耳に入ってきたわ」


 やはりというかなんというか機嫌が悪くなっているのがわかる。2人と一緒に帰るのは悪手だったのかもしれない。しかし、もう遅い。 


 というか噂になっていたのか。全く知らなかった。仕方ないと言えばそうなのかもしれないがその噂が俺には回ってきてないのが悲しい。悲しんでいても友達が増えるわけでもないので、宮野火憐について話すことにした。


「俺も昼休みに思い出したんだけど、火憐は俺の幼馴染だったらしいんだよね」


「ふーん…。火憐ね」


 めっちゃ鋭い目でこっちを見てくるのでさすがの俺でも気づいた。そんじょそこらの鈍感系ラノベ主人公じゃないんだ。彼女が何を言いたいのかは分かっている。


 それに俺だって名前を呼ぶのはやぶさかではない。しかし、恥ずかしいのだ。火憐は俺の幼馴染だということもあって昔のように呼べばいいのだが、夕凪さんは違う。


 だが、誰か1人を優遇するなんてことはありえない。誰でも平等それが友達というものではないのか? 平等だから仕方ないよね。そうして俺はと呼ぶことに決めた。


 そうこうしていると火憐の待つ靴箱へ着いた。放課後になってからしばらく経っているので周りに人は見当たらない。


 靴箱に火憐はいなかったので、俺達は一旦外に出ることにした。


 外に出た瞬間目に入ったのは火憐のデカい胸ではなく嬉しそうにこちらを見ている火憐だったのだが、その表情はすぐに変わった。


 碧にはさっき伝えたけれど、火憐には何も伝えていなかった。火憐は碧を見た険しい表情へと変えたのだった。


「これはどういうことかな?


 そう言って火憐は俺と碧を睨んだ。


「言っただろ? 「もう1人友達を呼んでもいいか? 」って」


「いや普通さ…男子の友達っていったら、男子でしょ? 」


「すまんな…火憐。自慢じゃないが俺に男友達はいない」


 はぁ…。とため息をつく火憐。とりあえず碧を火憐に紹介しなければと思い、碧を見てみたのだがムスッとしている。


 今から一緒に帰るというのに先が思いやられる。やっぱり会わせない方が良かったのだろうか? でも、もう後戻りは出来ない。


 今は2人が仲良くなれるように頑張ろう。そう心に決めた俺は火憐に碧を紹介するのだった。





 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 昨日600PVに感謝したばかりなんですけど、気がつけば800PV達成していました。1000PVまでもう少しですね。

 最近多くの方々に見ていただけてモチベーションはあるのですが、体調が優れないこともあり、なかなか筆が進まないんですよね。それでもほぼ毎日更新できてるのは皆様のおかげです。随時改稿も進めています。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る