第11話 幼馴染

 俺、村雨響也には幼馴染がいた。その子の名前は宮野火憐。俺たちは同じ幼稚園で家も近かったことからよく遊んでいた。その時はまだ仲がいいだけだった。


 俺と彼女との関係が変わったのはあのことがあってからだ。彼女は幼稚園生の頃からとても可愛く。男女ともに人気だった。


 しかし、その人気が仇となった。男子というものは好きな女子についちょっかいを出してしまうものだ。でも、そのちょっかいが多すぎたのだ。


 俺は彼女を様々なちょっかいから守るために幼稚園生ながら頑張った。そのおかげか、時が経つに連れて彼女に対してのちょっかいは減ってきていた。


 けれど、彼女を守り始めてから彼女はさらに近くなった気がした。今までは仲良く遊んでいるくらいだったのだが、彼女は俺の傍からなかなか離れなくなってしまった。


 俺自身も彼女と遊んでいて楽しかったし、離れてくれないことを鬱陶しいと思うこともなかった。俺たちは一生一緒にいる――そう思っていた。


 けれど、それは許されなかった。神様のいたずらか彼女は小学生へ上がる前に引っ越しをすることになってしまったのだ。


 引越し当日。俺と彼女は最後のその瞬間まで一緒だった。最後に彼女の言っていた。それがなにか覚えていないけれど俺は笑顔で「はい」と答えた。それだけは確かだった。





 ――――――――



 

 そして今、俺の幼馴染は目の前にいる。――昔と同じ笑顔の彼女が。


 彼女と出会ってから感じていた懐かしい感覚。それの正体がわかって俺はホッとしていた。モヤモヤしたままでは彼女ともっと気まずくなっていただろうからな。あの夢には感謝しないといけないな。


「私ね今とっても嬉しいの。響也に再会できたこともそうだし、私のことを思い出してくれたこともそう」


「そうだね…」


「んも〜せっかく再開したんだからしんみりしたのは無しだよ! 」


 俺が幼馴染だとわかったからだろうか彼女の喋り方は出会った時とは違う砕けたような話し方になっていた。


「それにちゃんと約束も果たしに来たの。9年間会えなかったけどこれからはずっと一緒なんだからね」


 約束か…。失礼かもしれないが俺は約束を覚えていない。彼女が幼馴染であるということと最後に何かしら約束していたのは思い出せたが、その約束がなにかまでは思い出せていない。


「その顔は覚えてないね…」


 彼女は俺の表情を見て悟ったのだろうかムスッとした表情で言った。


「いや…」


 誤魔化そうとするけれど、彼女の鋭い目に睨まれて、それは叶わなかった。


「すまん…覚えてない」


「うん! 素直でよろしい」


 そう言った彼女の目はさっきの鋭かった目とは違い、優しさに満ち溢れた目をしている。とても綺麗な目。思わず見惚れてしまいそうになる。


 けれど、俺には気になることがある。彼女としたという約束。その内容が気になるのだ。彼女は約束のことを覚えている。だったらすることは1つしかないだろう。そうして俺はその約束の内容を彼女に聞いてみることにした。


「なぁ…俺達がしたって言う約束のことを教えてくれないか? さっき言った通り、俺は何も覚えていないんだ」


「うーん…そうだね。別に隠すことでもないし教えてあげる。私と響也がした約束っていうのはね「もし、再会することができたら絶対に結婚しよう」っていう約束だよ」


 なるほど…。うん? 今、結婚って言ったのか? 聞き間違いでなければ彼女はそう言っていた。そして彼女は約束を果たしに俺に会いに来たってことだろ? え…? 俺結婚すんの? 


 俺が困惑した表情をしているのを見て、彼女は言った。


「私だって今すぐに結婚しようだなんて思ってないよ。それに結婚できるようになるのは18歳からだからね」


「じゃあ…どうするんだ? 」


「うーん…? 」


 彼女もそこまでは考えていなかったのだろう。彼女の言葉は途中で止まってしまった。俺達は幼馴染といえど9年間会っていない。それに、俺はさっきまで彼女のことを忘れていたのだ。だったら俺にできることは1つ。


「良かったらさ…もう一度友達からやり直さないか? 」


 俺は彼女にそう問いかけてみる。


「わかった。そうするよ。それに、響也は私のことを忘れていたみたいだし、次は一生忘れない思い出を作ってあげるから覚悟しててね! そして18歳になるまでに響也に告白してもらう。だからもう一度私と友達から始めましょう」


 そうして、2人で一緒に昼食を食べていると、昼休みの終わり5分前を告げるチャイムが鳴った。そこで俺たちは解散することになったのだが、その前に連絡先を交換することになった。互いに連絡先を交換し終えた後、俺たちははそのまま教室へと向かうのだった。


 俺に高校生活2人目の友達ができた。友達からということだが、結婚するというぐらいだ。彼女も俺のことを好いているのだろう。しかし、贅沢な悩みかもしれないが俺は夕凪碧、宮野火憐の2人から好意を持たれてしまっている。1人だけならまだしも2人だ。


 いずれどちらかを選ぶときが来てしまうだろう。でもまだ、その時ではない。その時が来るまで彼女たちの友達としてしっかり楽しんでいこう。そう心に決めた俺は午後の授業もしっかりこなしていくのだった。






 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 とりあえず600PV感謝です。思っていたよりも多くの方々に読んでいただけて嬉しい限りです。忙しくてなかなか返事をかけていませんが、応援コメントの方もしっかりと読んでいます。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

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