第10話 思い出した?
なんだか体の両方が温かい。その感触で俺は目を覚ました。目を覚ました先には妹の葉月がいる。しかも、俺と葉月は抱き合っている状況だ。一瞬何が起きているか分からなかったが、昨日のことを思い出す。
そういえばそうだった。葉月から一緒に寝て欲しいと言われ、抱き合ったまま寝たんだった。やっぱり、おかしくね? 一緒に寝るのは百歩譲っていいんだけどさ。なんで抱き合ってんの? 葉月はめっちゃ気持ちよさそうだし。
――そんなことを思っていた時だった。
俺はあることに気づいた。俺の正面が温かいのは葉月と抱き合っているからってのは分かる。でも背後が温かいのはおかしくないか? てか、そんなことするやつなんて1人しか居ないだろ。絶対に姉さんだ。
うん…普通にやばいね。葉月だけならともかく姉さんもいる。早くこの場から離れたいのだが、両方からガッチリとホールドされている。どうにかしようと試みていると、葉月が目を覚ました。
「お兄ちゃん…おは…よ…う」
なんだか、葉月の顔がどんどん赤くなっていく。そっか、さすがに恥ずかしいよね。だって実の兄と抱き合って寝てるんだぜ。わかるよその気持ち。ならきっと離してくれるはずだよね。
そんな思いとは裏腹に、葉月の抱きしめる力は強くなっていく。めっちゃ痛いんだが。というか柔らかい感触があたってやばいんだが。早く止めてもらわないと俺の理性と体がやばい。
「なぁ…葉月そろそろ離してくれないか? 」
自分の状況に気づいたのかさらに葉月の顔は赤くなっていった。それでもまだ離してくれないみたいだ。
「わかるよぉ…葉月…響也に抱きついてると気持ちいいもんねぇ。離したくなくなるよねぇ」
と俺の背後から声がする。姉さんは今起きたばかりなのだろう。あまり呂律が回っていない。
姉さんはどうして恥ずかしいことをこうも淡々と言えるのだろうか俺は不思議に思った。姉さんの声を聞いてさらに赤くなる葉月。そろそろ爆発しそうだよ。
――でもそうはならなかった。
部屋に向かってくる足音がする。そうして俺の部屋のドアは勢いよく開けられた。姉さんと葉月に抱きつかれている俺を見て
「あんたら朝からイチャついてないで早く降りてきなさい! 」
と、母さんが怒鳴った。やはり理性の神様はいるんだな。ありがとう理性の神様。それに、母さんも。
いつも通りの日常が始まる。朝は少し過激だったけど、たまには悪くない。そう思いながら俺は朝食を食べるため1階へ向かうのだった。
朝食の時間は普通だった。昨日のことがあったのに何も変わらない普段通りの朝食。何か変わるより普段通りの方が俺は良いので助かった。
その後は昨日のように遅刻しそうになることもなく、俺は無事に学校に着くことが出来た。
教室に入ってやはり目を引くのは
やはり俺はおかしくなってしまっているだろうか? 夕凪碧のことを変に意識してしまう。ていうかあんなことを言われて意識しないわけがないだろう。
でも、やはり気になるのはアレだ――俺が昨日気絶しているときに見た夢。
あの夢に出て来た女の子は何者だったのだろうか? やはりなにか引っかかる。俺はあの女の子を知っているはずなのに、なにも思い出せない。
そんなことを考えていると四限目の授業が終わり、昼休みを迎えた。
俺は騒がしい教室を後にし、
屋上へ向かうと既に宮野火憐はいた。美味しそうに弁当を食べている。約束した通り、俺は宮野火憐の隣に座るのだった。
俺は隣に座ったのはいいものの話すことがない。気まずさのせいなのか俺は彼女を凝視してしまっていた。それにしても相変わらず可愛いな。しかも、昨日よりも笑顔が増えた気がする。
俺はその笑顔を見てふと気づいた。夢の中のあの女の子の笑顔に似ている気がするのだ。夢の中とはいえ鮮明に覚えている。――あの女の子の笑顔を。
そうして俺に電流が走る。似ているだけじゃない。夢の中の女の子の笑顔そのものなのだ。確証はないけれど、俺の勘が言っている。
宮野火憐どこかで聞いたことのある名前だとは思っていたが、そういうことだったのか。
なぜ俺は忘れていたのだろう。でも、俺は気づいてしまったのだ。彼女は俺の――幼馴染だということに。
彼女は俺が幼馴染であることを察したのを分かっているのか不敵な笑みを浮かべて言った。
――「やっと思い出してくれたんだね」
―――あとがき―――
どうもニンジンさんです。
投稿遅れてしまってすみません。ちょっと用事があって書くのが遅くなってしまいました。
まぁ、遅くなった理由はもうひとつありまして、何かと言うと新作のほうを書いてました。まだ投稿はしないんですけど、現在準備中なので気になった方は公開したら是非見てください。
今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。
至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。
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