第9話 妹絶対時間②

 理性の神様こと母さんの助けもあって俺はなんとか姉さんの葉月と離れることができた。俺は安心していたのだがその安心は長くは続かなかった。


 ――なぜなら、みんなで夕食を食べようと席に着いた時、あろうことか葉月は俺の上に座ってきたからである。


 さすがの母さんもびっくりしてるし、父さんにいたっては飲んでいたお茶を吹き出したくらいだ。姉さんは羨ましそうにこちらを見ている。しかし、当の本人はというとケロッとした顔で


「お兄ちゃん今日は私が食べさせてあげるね」


 と言ってきたのだ。さすがの俺でも手に負えない。母さんに助けを求めようと目で訴えかけてみたが、特に何の成果も得ることは出来なかった。


「あーん」


 と葉月は言った通り俺に食べさせようとしてくる。俺としては可愛い妹の願いなんだから聞いてあげない訳にはいかないのだが、特に父さんがやばい。我、心此処に非ずって感じで夕食をまともに食えていない。


 俺は早くこの地獄が終わらないかなと思いながら、葉月に任せて食べさせてもらっていた。


 夕食という地獄から抜け出すことができた俺は今まさに新たな地獄に直面しようとしていた。


 俺たちの家では夕食のあとに風呂に入るのだが決まって俺が一番風呂をもらう。今日もいつも通り風呂場へ向かうところまでは良かった。問題はその後だ。脱衣所で服を脱いで風呂の中に入ったその


 葉月だけならともかく、あろうことか姉さんまでも俺の入っている風呂へとやってきたのだ。今言えることは、もってくれよ俺の理性それだけだ。


「お兄ちゃん…あんまりジロジロ見ちゃだめだからね…」


「そうだぞ響也。私たちがいくらか魅力的だからって女性の体をジロジロ見るのは良くないんだぞ! 」


 俺はその言葉に少しホッとした。――まだこいつらには恥じらいが残っていことに。


 今2人は楽しそうに互いに体を洗っている。傍から見れば、微笑ましい姉妹の光景なのだが、今の俺は違う。2人を直視するわけにもいかないので目をそらしながら今か今かと風呂から出る機会を待っている。


 2人は互いに洗い終えたのだろう。湯船につかろうとこちらへ向かってくる。逃げるなら今しかないそう思った俺は急いであがろうとした。しかし、それが仇となることになった。


 急いであがろうとしたため足を滑らせたのだ。足を滑らせるだけならまだ良かった。あろうことは俺は葉月の胸に向かって倒れたのだ。


 包みこまれるような温かい感触。今まで感じたことのない気持ちよさに俺の理性は我慢の限界だったのだろう。俺の意識はそこで途絶えた。




 ―――――――


 目の前いる女の子が悲しそうな表情で何か言っている。それに彼女は見覚えがある。


「…ったいだからね、つぎ…ったら…けっ…んしてね…」


「うん! 」


 と俺は笑顔で答えた。俺がそう答えた時の彼女の笑顔はどことなく宮野火憐に似ている気がした。




 ―――――――


 俺はそこで目が覚めた。なんだか懐かしい夢をみた気がする。なんだか約束をしているようだった。どんな約束をしているのかまでは分からなかったけれどあの女の子の笑顔は鮮明に覚えている。


 まだ頭がボーッとしている。それになんだか温かい。安心する温かさだ。気を抜けばまた眠ってしまいそうだ。


「お兄ちゃん起きた? 」


 その声で俺は完全に目を覚ました。そして、今の俺の状況を理解する。俺は今、葉月に膝枕をしてもらっているらしい。


「お兄ちゃん魘されてたみたいだけど大丈夫? 」


「あぁ…大丈夫だ。なんだか懐かしい夢をみていたんだ」


「ふーん…。大丈夫ならよかった」


 目が覚めたので起き上がろうとしたのだが、それは葉月によって阻止された。


「なぁ…葉月そろそろ離してくれてもいいんじゃないか? 」


「約束したでしょ。今日は私の言う事何でもするって。だから離してあげません」


 葉月は俺のことを離す気はないらしい。


「お兄ちゃん…今日は迷惑かけてごめんね」


 いきなり謝ってきたのにはびっくりしたが、お兄ちゃんとしてしっかりと答える。


「大丈夫だよ葉月。俺は迷惑だなんて思ってないよ。ただ…少しやり過ぎな気はするけどな」


「うん…。私ね怖かったの。お兄ちゃんが女の子と話してたって聞いて。お兄ちゃんはもう私にかまってくれなくなるんじゃないかって」


 そうだったのか…。俺も少し悪いことをしてしまったな。


「心配しなくていいよ。いつも通りちゃんとかまってあげるからさ。そんなに気負う必要はないよ」


 葉月の目から涙がこぼれる。男ってのはいつだって女の涙には弱い。例えそれが妹であってもだ。俺は起き上がり、優しく葉月に抱きついた。葉月も最初は驚いていが、俺の腰に手を回してくる。手を回してくるのを確認した俺は葉月の頭を優しく撫で始めた。


 葉月が泣き止んだのを見て俺は離れようとするが、葉月にガシッとホールドされ離れることができなかった。


「お兄ちゃんありがとう。私の今日最後の願いきいてくれる? 」


 抱きついたまま葉月が言う。


「何だ? 言ってみろ」


「このまま一緒に寝てほしい…ダメ? 」


 上目遣いで訴えてくる葉月を裏切るなんて真似俺には絶対できない。最後までしっかり付き合おう。


 ――「喜んで」


 そうして俺たち2人は抱き合ったままベッドの上で横になった。意識しないようにしていたが、葉月の温もりを感じる。たまにはこういうのも良いのかもしれない。今日は気持ちよく寝れそうだ。


「葉月、おやすみ」


「うん…。お兄ちゃんもおやすみ」


 ――そうして2人は互いに抱き合ったまま深い眠りにつくのだった。


 って眠れるわけねぇだろ! いやいやおかしいよ! 流れに身を任せてたけどさなんで一緒に寝ることになってんのさ! 100歩譲って一緒に寝るのはまだいいよ。なんで抱き合ってるんだよォ。目の前にいるのが妹じゃなかったら襲っていてもおかしくは無いぞ。


「はぁ…」


 俺に懐いてくれているのは嬉しけれどもうちょっと葉月にはわきまえて欲しいものだ。俺じゃなかったら今頃どうなっていたやら。


 少しはお兄ちゃんちゃんの気持ちを考えて欲しいものだ。そう思った俺は寝ている葉月の頬を引っ張ってみる。


「なんで…こんな可愛い寝顔してんだよ」


 つい本音が漏れてしまった。聞かれているのではないかと思い自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。もう寝よう。これ以上は目に毒だ。早く寝て気を紛らわせよう。そうして俺は改めて言うのだった。


 ――おやすみ、葉月。











 ―――あとがき―――

 どうもにんじんさんです。

 とりあえず、自分の書きたかったことの1つを書き終えられたので良かったです。妹って素晴らしいね。 

 話は変わるんですが、明日の更新はもしかしたらできないかもしれません。ここまでの話を少し改稿する作業に入ろうかなと思っているからです。改稿したらまたご報告します。

 今後も頑張りますのでもし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点などがありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。


































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