第2話 王子様

 ※碧視点


 私には好きな人がいる。彼は私のことなんてどうにも思ってないかもしれないけれど、私は彼のことが好き。好きで好きでたまらない。


 あれはそう中学2年生の時の話。私は学校の帰り、近くにあったコンビニの前を通り過ぎようとしていると。そこで私が嫌いなチャラチャラした人たちに話しかけられた。


「よぉ…嬢ちゃん。嬢ちゃん可愛いね」

「俺らとお茶しない? 」


 そんな感じだったと思う。

 ありきたりなナンパで私も迷惑していたので、


「あなたたちの相手をしている暇なんてありません! 」と答えた。


 すると彼らは、私の手をいきなり掴んできた。そして、


「こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって、ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ! このクソアマが」と顔を歪めながら言ってきた。


 私は怖くなった。自分が言ったこととはいえこんなことになるとは思わなかった。無理やりにでも手を引っ張ってくるあいつらが怖かった。


 ―――そんなだった。



 1人の男子が私たちの方に来て言った。


「その子が怖がっているだろう? その子の手を離せ! 」


 彼は、相手が驚いた一瞬の隙をついて私の手を引っ張り、あいつらから離してくれた。そして、一緒に逃げてくれた。


 私は嬉しかった。彼は紛れもない私の王子様だった。私は自分のことを助けてくれた彼のことを好きになってしまった。自分でも不思議なくらい。

 ただ、相手の善意で助けてもらっただけなのにこんなにも好きになってしまうなんて…。私は自分がこんなにもチョロいとは思わなかった。


 感謝の気持ちを伝えたかった。

 しかし私が気付いたときにはもう彼はいなくなっていた。


 私は後悔した。彼のいいえ…私の王子様の――を聞かなかったことを。




 ◇


 


 次の日、私の王子様のことを考えながら学校に行っていると、私は運命の再会を果たすことになった。教室に入ると、私の王子様はそこにいた。

 私は気付くことができなかった。


 ――私の王子様がクラスメイトだったということに。


 彼の名前は村雨響也むらさめきょうやというらしい。


 素敵な名前ね。彼は昨日助けたのが私だとは気付いていないみたい。それもそうよね…彼の気まぐれで助けてもらったに過ぎないのだから。


 私は今までクラスメイトに興味がなかった。けれど彼のことは知ろうと思った。助けて貰ったからというのもあるけれど彼はなんといっても、私の王子様なのだから。


 いつ感謝を伝えようか迷っていると中学校生活は終わろうとしていた。

 幸いなことに私と彼は名門校である霧宮学園に受かった。


 彼と仲良くなろうと思い、今までとは違うキャラでいってみようと思う私。


(彼は私のことを好きになってくれるかしら……? )


 そう思いながら私は気合を入れて入学式に臨むのだった。


 しかし、入学式の次の日から彼は休んでいた。風邪をひいたらしい。私は彼のことを心配に思っていたのだけれどクラスメイトたちはそんなこと気にも留めていないようだった。


 私は瞬く間にクラスで人気になった。私でもわかっている。――ちょっとやりすぎたかもしれないと。


 彼が休んでから3日経った。やはり誰も彼のことを心配していない様子。私は悲しかった。自分の王子様を誰も気にかけてはくれないのだから。


 次の日から彼は来た。けれど、彼の周りに人は来ない。彼は完全にしてしまっていた。せめて、私くらいは彼と仲良くしようと思っていたが、クラスメイトたちがそれを許さない。




 ◇




 そうして、入学式から1ヶ月が経った。彼は未だに友達がいないらしい。今日クラスメイトと話しているとたまたま彼と目が合った。やっぱり、私の王子様はかっこいい。


 そんなことを考えていると放課後になっていた。彼はいつもみんながいなくなるまで教室で待っているので、私も彼と同じく教室にいようと考えた。


 ふと彼を見ると、気持ちよさそうに寝ている。教室にはもう誰もいない。


 ちょっと大胆だけど、私は長いこと待っていたの……

 これくらいのことは許してくれるはずよね?


 そう思い私は、彼の前の席に座り、彼の寝顔を見る。彼の寝顔を見てると思わず声が漏れてしまった。


「ふふふ……こんなところで寝てるなんて、可愛いわね」


 そんなこと言っていると彼の顔が赤くなっているように感じた。私はそんなことを気にも留めず、またしても声が漏れた。


「好きよ……私の


 言ってしまった。彼が寝てるとはいえ私の気持ちを彼の前で言ってしまった。


 おかしい、さらに彼の顔が赤くなっているように感じる。私は変と感じつつも彼のことをじっと見つめようとしただった。


 彼は勢い良く頭を上げ起きた。私は彼とが合った。


 私は顔が火照って行くのを感じた。




 ―――あとがき―――

 どうもニンジンです。

 当初の予定では2週間以内に書き上げようと思っていたのですが思っていたよりも筆が進み早く仕上げることが出来ました。

 これも見てくださっている方々のおかげです。今後ともお願いします。

 もし面白いと感じたらフォローや☆、感想を書いてくれるとモチベに繋がります。

 至らぬ点がありましたら、その報告もしてくれるとありがたいです。

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