第22話:続々・エクストラステージ。質問タイム


「ところで」

「ん?な、ななな、なにかな?」

「質問の続きなんですけど、俺の願いって、もう一度おにぎりが食べたいってだけでしたよね。それがなんで転生?転移?して、しかも女になってるんですか?」


 神様の話も一段落したようなので、俺は今一番疑問に思っていることをストレートにぶつけてみた。


「え?だ、だから、お、おにぎりをたた、食べられるように、て、転生、させてあげたんだな?」

「え?」

「ん?」


 俺と神様はお互いが「何言ってんだコイツ?」って顔してお互いが首をひねる。


「だ、だから、お、おにぎりをたた、食べるために、あ、新しい身体を、よ、用意して、お、お、おにぎりを食べられるの、能力を、つ、つつ、つけて、あげたんだな、うん」

「えっ?本当に、そのため、だけのために?」

「ほ、ほほほ、他にり、りり、理由なんて、な、な、な、ないんだな」


 え?マジで?

 まさかそんなことないだろーって思ってたのが、よもやよもやの大当たり?


 や、やり方がアバウトすぎる。


 顔文字で表現するなら、今の俺、多分顔文字でよくありそうな変な顔してると思う。

 いや、そのおかげで新しい人生とチート貰った俺がそう思うのもなんなんだけどもさ。

 これが神様スケールという奴なのだろうか。多分、俺には二度目の人生があってもきっと理解できないだろうな。

 ん?いや待て待て?


「それなら別に異世界に生まれ変わらせなくてもよかったと思うし、女にする必要はなかったのでは?」

「い、いい、異世界なのは、お、同じせ、世界にま、間を置かずにてて、転生や、てて、転移は、そ、その世界のほ、法則に、ふふ、触れるから、ぼ、ぼぼ、ボクのここ、後輩の世界に、お、お願いしたから、な、なんだな」

「ああ、なるほど」

 

 だから異世界に転生しないといけなかったのか。納得した。

 んーてことは、女にされたのにも何かしら理由がある?


「で、お、女の子になった、り、り、理由は」

「理由は?」

「お、おにぎりって、おいしいよね。し、しかも、び、びび、美少女がに、握ったやつなら、も、もう最強じゃん?とお、お、思ったからなんだな」

「まさかのそんな理由!?」

「ちょ、超重要な、なんだな!」


 グッと握り拳を作って力説する神様。


 なんだそれ。なんだよそれぇ!!


 いや、神様の言ってる事がわからないでもないよ。俺も元男だったんだから。

 でもまさかそんなことのためだけに女体化して美少女にするか?こっちはたまったものじゃない。神様の趣味趣向に俺を巻き込むなぁ!


「今からでも男に戻せぇ!」


 俺は怒りに任せて神様に掴み掛かり、ガックンガックン揺さぶる。


「ぜ、絶対に、い、嫌なんだな!て、ていうか、も、もう無理、なんだな」

「なんで!?」

「たた、魂と、の、能力が、か、か、身体に、定着し、したからなんだな」

「なんてこったー!」


 俺は頭を抱えて海老反った。


「な、ナイスアングル。す、すす、素晴らしい眺め、なんだな。う、うん、そ、そのバニー姿、よ、よく似合ってるんだな。ぼぼ、ボクの目に、く、狂いはな、な、なかったんだな。よ、よかったらあ、あ、あげるんだな」


 カッチーン


 そういえばこの格好(バニーガール姿)も神様(へんたい)の趣味だったな。


 フ・ザ・ケ・ン・ナ!


「こんなのいるっ」


 って待った俺!ストップストーップ!

 いらない。こんなの絶対いらないから脱いで叩きつけてやろうかと思ったけど、一瞬冷静になった自分がギリギリでストップをかけて踏み止まる。

 もし、もしもだ。

 これをいらないって言ったら、このバニースーツってどうなる?

 いや、仮にも神様だよ?だから大丈夫、だとは思うんだけど。


 俺の脱いだバニースーツに顔を埋めて匂い嗅いだりとか、しない、よね?


「のでありがたく頂きます!」


 あんな事を力説して俺を女にするくらいだから、可能性がゼロとは言えない。ていうかめちゃ不安なので、とりあえず貰っておくことにした。

 あの一瞬でこの答えに辿り着いた俺、超ファインプレーだ。よくやった!


 超絶いらないけど(ココ重要)


「う、うん。く、くく、食い気味になるほど、きき、気に入ってもらえて、う、嬉しいんだな」

「ハハハソウデスネー」


 クソが!とは思ってるけど、できるだけ顔に出ないように心がける。さっきは頭が沸騰してついガックンガックンやっちゃったけど、なんせ相手は神様。怒らせるの超怖い。しかも普段がこうニコニコして温厚そうな分、キレた時の反動が恐ろしすぎる。


 大丈夫大丈夫。男に戻れないのも、神様の趣味全開で改造されたのも、社畜時代や病魔に侵された時に比べれば軽い軽い。(ハイライトの死んだ目)


「ま、まだ、な、なな、何か、きき、聞きたい事は、あ、あるかな?」

「え?う、うーん」


 こんなヘビーなカミングアウトの後に頭を使うって、正直結構しんどい。けどこの神様には下手すればもう会えないんだよな。がんばって頭を切り替えろ俺。それで聞き忘れなんてあったらさすがに悔やんでも悔やみきれん。


「チュン」


 その時、神様の肩に居た雀が鳴いたのを見て思い出した。


「ああ、そういえばこの子の件があったっけ」

「ん?」

「いえ、その雀について、なんですけど」


 ってまあここにいる時点で普通の雀ってことはないよな。めちゃくちゃ強いし、名前も呼ばれてるし、神様の関係者なんだろう。


「あ、あれ?い、言ってなかったっけ?こ、この子はら、雷切。き、君のボ、ボディガードな、なんだな」


「言ってませんね。でもボディガードなんていたんですね。おかげで命拾いしました」


 なるほど、雀改め雷切は、神様が俺につけてくれたボディガードだったのか。道理で強いわけだ。


「チュン?」


 俺がじーっと見てるのに気づいた雷切が首を傾げる。


「はーかわいい」


 見た目に反しすぎて、見た目詐欺がすごいな。

 いや、この見た目で強いとか想像できないじゃん?でもかわいいのはグッジョブ。かわいいは正義。異論は認めない。


 それにしても、伝達ミスも含めてちょい抜けてる所や神様らしいわがままなところもあるけど、割と気遣いもできるし、結構優秀なんだよな、この神様。

 これでさっきの一件がなければ、本当にいい神様なんだけどなぁ。


「あ、そ、そそ、それは、わわ、悪かったんだな。あ、あ、あの世界は、き、危険がお、多いから、つっ、遣わしておいたんだな」

「危険性は身をもって知りましたので感謝してます」


 ほら、こういうところ。


 ほんとにね、アレさえ無ければ……


「ら、雷切。ひ、引き続き、彼女のこと、た、頼んだんだな」

「チュン!」


 雀はひと鳴きだけすると、こっちに飛んできて目の前でホバリングする。

 で、なんとなく俺が手を差し出せば、その上にとまって、


「チュン」


 もう一回ひと鳴きした。

 まるで「よろしく」って言ってるみたいだ。

 あーもーかわいいなぁ。癒されるなぁ。


「エ、エルメも、たっ、たっ、頼んだんだな」

「は、はい!任せください!」


 あ、エルメさんがいつの間にか復活してる。足の痺れは治ったようだ。


「さ、さて、も、もうし、質問は、い、いいかな?」

「あ、ちょっと待ってください」


 しっかり数分かけて思い出すを実行するけど、特には何も出なかった。

 こういうのって後から思い出したりするからちょっと不安なところもあるけど、いつまでもこのままってわけにもいかない。区切りをつけよう。


「大丈夫、だと思います」

「う、うん。そそ、それじゃあぼ、ボクもかか、帰るね」

「わざわざありがとうございました」


 一応、様子を見てくれてフォローまでしに来てくれた神様に感謝を。

 ……一部、知りたくない事実もあったけど。


「そ、それじゃあ、げ、元気でね」

「はい」


 返事をすれば、神様が薄く、いや、この世界が薄くなって消えていく。俺の意識も薄くなっていく。

 目覚めの時だ。とかちょっと浸りながらかっこいいこと思っちゃってんなーなんて薄い意識の中で考えてると。


「あ、そそ、そういえば……」


 最後の最後に神様が何か言い残したような感じのまま消えていきやがった。

 そんな俺の意識が途切れる前に最後に思った事は、


 去り際に気になるワード残すのやめろよなぁ。


 だった。


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