第21話:続・エクストラステージ。神様の謝罪とお詫びの品

「ま、まずはこのふ、不手際のしゃしゃしゃ、謝罪、なんだな。ごめんなさい、なんだな」

「あ、いえいえ、今こうして無事ですし」


 まさか神様に頭を下げられる日が来るとは思わなかったからちょっと慌てた。

 ただ、神様でも頭下げたりするんだな。とか、この神様が特別なだけなのかもしれないけど、もし自分の上の立場の人がこういう人だったら素直に尊敬できるなぁとは漠然と思った。

 まあそれはそれとして。


「それに」


 チラ。


「ぴえぇ」


 この神様に頭を下げさせた原因の一部に目をやると、痺れた足を地面につけないようにするためか、寝転がって足を上げてる女神様の姿が。


 すげえ格好。


 信者もだけど、こっちの世界の人間が見たら泣くぞ。一部は喜びそうだけど。もちろん男共が。

 しかし、俺を転生させてくれた神様はすぐミスに気づいて頭を下げてくれたのにのにこの駄女神ときたら、と思うとついジト目で見てしまう。


「まあ、思うところがないって言えば嘘になりますが、ちゃんと謝ってもらったし、原因の一部はこうやって罰を受けてるので」


 さすがにただおにぎり食べる願いを叶えてもらうはずが、いきなり転生?転移?したあげくに命の危機に晒されて無問題。とは言いづらい。いろいろ説明不足なんだよなこの神様。けど、まあ。


 こうして今無事なのでヨシ!


 と思う俺である。

 何よりこうやってちゃんと謝ってもらえたからいいや。

 色々聞きたいことは残ってるけど。


「そ、そそそ、それなんだけど、じ、実は、もういっこ、あ、あ、謝らないと、い、いけないんだな」

「もう一個?」


 なんだろ?勝手にバニースーツ着せた事か?それとも女にされたこと?あ、そういえばこの世界に来るときになんの説明もなしにいきなり飛ばされたってのもあったな。

 あれ、こう考えてみると、実はこの神様も結構やらかしてる?


「ほ、翻訳スキルにつ、つつ、ついて、なんだな」

「翻訳スキル?」


 え?あれって何か問題ある?チート過ぎるから回収しますとか?そんなことになったら本気で泣くぞ?大の男が。あ、今は女か。じゃあ問題なし。


「あ、あれは本来、ぼ、ぼ、僕がきき君につ、つ、つけなきゃいけないスキルだ、だったんだな」

「あ、そうなんですか。え?そうなんですか?」


 とりあえず最悪の予想は外れたので一安心だけど、新たな事実が発覚。あれ本来なら貰えるものだったらしい。

 俺のあの心配と苦労はなんだったんだ。いや、結構色んな能力貰っておいてなんなんだけども。


「お、お詫びにぼ、僕のお気に入りのお茶をぷ、ぷ、プレゼントするんだな」

「え?本当ですか?それはありがとうございます」


 これは予想外に嬉しい。実は俺、結構お茶が好きだ。夏の麦茶や緑茶、ほうじ茶もいいものだよな。……いやまて。


「それで、どんなお茶なんですか?」


 ここでゲテモノ茶や、バラエティーの罰ゲームの定番に出てくるクソ苦茶だったらぬか喜びもいいところだ。


「りょ、緑茶なんだな。と、とてもお、お、おにぎりに、あうんだな」 

「おお、それはいいですね。ありがとうございます」


 俺は心の中で拍手喝采を送る。神様のお気に入りっていうのもあるから今からちょっと楽しみだ。


「よ、喜んでもらって、よ、よかったんだな。き、ききき、きっと、気に入って、も、貰えると、思うんだな、うん。あ、そそ、それと、じ、実はも、もう一個、ぷ、プレゼントが、あ、あるんだな」

「もう一個?」

「そ、そうなんだな。あ、新しい人生と、せ、世界を楽しんでほ、欲しいので、こ、これをあ、あげるんだな」


 そう言っうと神様の手にスケッチブックと筆箱が現れた。

 すげぇ、今何もないところから急に物が現れたぞ。さすが神様。

 あと何気にサラッと新しい人生って言ったけど、これ、やっぱりこのまま生きていいって事だよね?ここにきて梯子を外すとか無しだよマジで。


 でもなんでスケッチブックと筆箱?


 思わず神様を見て、やっぱりこの人裸の◯将じゃね?って一瞬疑った。


 いや、これは仕方ないって。俺は悪くないよな?


「み、見たもの、か、感じたものを、か、形にするのは、た、た、楽しいし、かか、完成した時の、ま、ま、満足感も、また、い、いいもの、なんだな。な、なにより、そ、そんなにむむ、難しいことじゃ、な、ないんだな」

「はぁ」


 生返事をしながら俺は神様からスケッチブックと筆箱を受け取る。

 いやだって、絵を描くとか学生以だ。困惑して当たり前だと思う。

 でも、だからかな。

 なんだかちょっと面白そう、と少しわくわくしてる自分もいた。


「ぜ、ぜひ、き、気軽にちゃ、チャレンジしてほしいんだな」

「はい」

「ちち、ちなみに筆箱の使い方は、ほ、欲しい筆記用具をか、考えながら、手をい、いれると、い、い、いいんだな」

「はい?」


 神様がちょっと何言ってるのかわからない。


 ので、筆箱を開けてみることにした。


 パカ


 コォォォォォォオオオオ……


 なんか中に真っ黒い空間があるんですけど。何かが超渦巻いてるんですけど?


 想像外にも程がある。


 なんじゃこれ?え?神様さっきここに手を入れるとか言ってなかった?マジか?

 思わず神様を見るといつものようにニコニコとこっちを見てる。マジらしい。

 今から断れ……ないよなぁ、これ。ええい、ままよ。


「とりゃー!」


 覚悟を決めた俺は、一気に手を入れる。うええ、何とも言えない感触ぅ。ぞわぞわするぅ。と、とにかく筆記用具を想像だ。

 すると急に手に何か感触が現れた。


「っあぁぁ!」


 それを知覚した瞬間、速攻で手を引き抜く。……き、気持ち悪かった。ぅわ、鳥肌立ってる。

 とにかく気持ちを落ち着けながら、握ったものを確認。


「ほんとに出た」


 手にはシャーペンが握られていた。っていうかこれ、俺が学生時代に愛用してたシリーズのやつじゃん。無意識とはいえこれを想像してたのか。

 感触は気持ち悪かったけど、物が出てきたことには素直に感心した。

  

「だだ、だせるものは、ひ、筆記用具限定で、だ、出せないものは、い、いくら想像してもだ、だだ、だめだから、そ、そこはちゅ、注意なんだな」

「あ、はーい」


 まあ当然の話というか、これですらすでにぶっ壊れ性能なチートアイテムなんだけど。気持ち悪さに目をつぶれば。そのうち慣れるのかなぁ。慣れたいような慣れたくないような。


 とにかく、なんだか追加でいろいろ貰っちゃいました。

 ……なんだかやばそうなのばっかだけどいいのかなこれ。

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